経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

FENNEL代表が語る国内のeスポーツ市場と環境 —仏(FENNEL代表)

2020年、eスポーツの世界市場は1,165億円に到達し、タイeスポーツ企業の「CLOUD9」は時価総額4億ドルを超えた。日本国内はというと、世界市場のわずか5%ほどの規模で遅れを取る形となった。

今回、eスポーツの分野で起業したFENNEL代表である仏氏にeスポーツ市場の現状と今後の成長に必要なたった1つの突破口を語ってもらった。

仏・FENNEL代表プロフィール

(堀田マキシムアレクサンダー、ゲームプレイヤー名『仏』)1998年生まれ、1998年生まれ、都立高校卒業後、立教大学に入学。
本名堀田マキシムアレクサンダー、ゲームプレイヤー名『仏』にて活動。ゲームプレイヤー名『仏』の由来は、幕末志士新撰組の土方歳三の呼び名『鬼の副長』をモチーフに『仏の副長』が定着したところから来ている。スマホゲーム『荒野行動』の競技シーンにて、多くの大会で活躍後、在学中にFENNLEを創業し中退。
2021年3月現在、YouTubeチャンネル20万人、Twitterフォロワー21万人。

仏氏がプロ選手から経営者になるまでの経緯

ゲームとの出会いは留学から

— スマホゲーム『荒野行動』のプロ選手として活躍されていましたが、小さい頃からゲームをプレイしていたのですか。

仏氏 家庭の事情でいわゆる家庭用ゲーム、プレイステーションやWiiなどはやらせてもらえな
かったですね。

留学時に色々なゲーム配信を見ていて、当時の私はPCがなく自分ではプレイできませんでした。その後、「DAYZ」や「H1Z1」などの憧れていたPCゲームがモバイルゲームとしてリリースし、とても没頭しました。

— 子供の頃、ゲームができなかった反動ということもありますか。

仏氏 間違いなくあります。ゲームに没頭する前は、映画三昧で年間300本など見ていましたが、映画への熱意がゲームに変わったということです。

— 没頭した時からゲームで1番になりたかったのですか。

仏氏 1番になりたかったわけではなく、昨日よりも上手くなればいいという考えでした。

気が付いた時には、周囲のプレイヤーより上手くなっていて、自分より上手いと思える選手がいなくなっていました。

eスポーツの熱狂を国内でも広めたい

— 選手として活躍された後、どのような経緯で創業したのでしょうか。

仏氏 創業前は『荒野行動』というスマホゲームに没頭し続け、チームリーダー的な存在でした。しかし、ある時からゲームで強いだけでも面白くないと感じるようになりました。

選手の頃からゲーム実況の配信をYouTubeで行っていて、ある日、配信中にeスポーツをビジネスとしてやりたい旨を配信したところ、今の共同経営者から誘いをもらいました。

共同経営者はゲームとは縁遠い、不動産事業を行っている人物でした。誘いがあった後は、何度も打ち合わせを重ね、共に創業しました。

— 仏氏はなぜビジネスとして広めたいと考えられたのですか?

仏氏 eスポーツの「熱狂」というものを広めたいと思っており、そのためにビジネスにしなくてはと考えていたからです。

スポーツでいうと例えば海外サッカーは試合での応援で熱狂しますよね。
eスポーツでも同じような熱狂を広めたいと思い法人化しました。

eスポーツ業界って本当に儲からないです。
仮に事業がうまくいったとしても3~5年先の将来だと思います。マネタイズにうまくいかず耐えられなくなり、撤退やスモールビジネス的な活動に留まるチームが多い現状です。

— FENNELでは現在、どのように収益を上げているのでしょうか。

仏氏 実はeスポーツ事業でマネタイズを始めようと思ったのは今年からです。

スモールビジネス的な考えではなく5年後、10年後を見据えてどれだけ大きなリターンを出すかを考えて動いており、まずはFENNELから文化・コミュニティの創出をすることを第一に考えています。

— FENNELから文化とコミュニティを創出するために、今後どのような事業展開を見据えていますか。

仏氏 まずはeスポーツの発展を促す為に、大会を主催し事業展開を図ります。
大会の中でも『荒野行動』は既に成熟したコミュニティで、1日に100個ほどの賞金付きの大会が開催されています。

一般的にゲームの大会に出場することは多くのプレイヤーにとってハードルが高いものになります。しかし荒野行動の多くのプレイヤーにとって大会は身近なものであり、荒野行動コミュニティの競技シーンに対する熱狂度は他のゲームコミュニティでも類を見ません。

今後はこれを例に、日本のコミュニティで大会を増やしてeスポーツを盛り上げていく。日本がeスポーツに盛んな北米や中国などに勝つ唯一の勝ち筋は身近なeスポーツ大会カルチャーと考えています。

国内eスポーツの市場と環境

— 日本と世界のeスポーツ市場を比較し、感じていることはありますか。

仏氏 日本はeスポーツに限らず、スポーツビジネスの後進国だと思います。
海外のスポーツチームやリーグ体制を調べると、日本のスポーツビジネスがかなり遅れを取っていると感じます。

色々な企業を見てみても、国内でスポーツビジネスを熱心に勉強している人は全く見たことがない。恐らく、北米やアメリカに留学するなどして学ばないとスポーツビジネスに対する知見を伸ばすのは難しいと思います。

1社でも成功事例が出てくると、真似をする企業が出てきて市場が拡大すると予想はしています。

— eスポーツだけでなく、スポーツという括りで見ても小さいのでしょうか。

仏氏 一時期、日本の野球はアメリカより大きかったですが、今では差が開く一方です。アメリカ
はスポーツビジネスの大きな可能性に気が付いています。
海外サッカーのリバプールは低迷した後、アメリカからスポーツビジネスに詳しい人間が参画したことで、プレミアリーグで優勝するまでに飛躍しました。

このように私は、日本のスポーツビジネスに対して批判はしてますけど、私もまだまだ未熟で危機感を感じています。まず、スポーツビジネスを学ぼうと思い立っても、関連する書籍が少ない状況です。

— 学ぶ環境が少ない中、国内eスポーツ市場はどのように拡大していくと予想していますか。

仏氏 スポーツ市場と同様、スポンサーの収益が1番大きくなり、その次にグッズです。グッズは各企業によって出し方は違いますが、グッズは視聴者とチームの一体感を与えます。

FENNLEとしては今後グッズから飛躍した、アパレルにかなり力を入れる予定です。多くのスポーツチームのグッズはファングッズらしいデザインのため、自己表現のファッションとして着用できるものが少ない。そこでFENNLEでは、ファッションとしても着用できるデザインにしつつ、チームとしての一体感をファンに感じてもらえるよう、洋服をカスタマイズできる仕様やデザインを意識して展開する予定です。

グッズ展開に成功しているのは、ニューヨークヤンキースです。ヤンキースの帽子やアウターなどは、世界中に浸透していて、eスポーツ市場でヤンキース同様のポジションを狙いに行きたい。
サッカーでは2017年にユベントスがチームロゴを変更しているので似たようなことを考えていると思います。

— 日本企業はブランド展開が苦手な印象です。

仏氏 よく言われますね。日本の経営陣の大半が50代以降なのでブランド形成への理解の低さも影響しているのかもしれません。よく言われているのはバブルでのブランディング成功体験を引っ張っており、ブランディングをアップデートできていないことです。

国内の環境はロールモデルが不在

— eスポーツチームのマネジメントについて、仏さんが意識していることを伺えますか。

仏氏 まず、コミュニケーションは基本的にオンラインで完結しています。しかし、実際にやってみて感じたことはオフラインの非言語が与える情報量は思っているより多く、伝わり切れず認識齟齬に発展するケースがあるということです。

あと、オンラインのみの課題としては生活習慣が属人的になってしまうことです。

FENNEL内で絶好調なAPEX部門を例に挙げると、彼らは海外のプロ選手と比較するとプロ意
識、体調管理などが疎かになりがち。睡眠習慣など不規則なため、体調不良などのイレギュラーな要素で練習が中止になることもあります。半年間、言っても直らなかったのでオフラインで生活を共にして環境を強制するしかないという結論に至りました。オンラインだけのマネジメントでは限界ですね。

— プロ意識が低いということは、ゲームで生計を立てられて嬉しいというところにチームの意識が留まっているからでしょうか。

仏氏 勿論、彼らは世界一になるためにプレイしていますが、世界と比べると日本のeスポーツ選手のプロ意識は低いと思います。1日のプレイ時間が5時間前後のプロ選手も多く見られます。

国内では身近にロールモデルとなる人物がいないので、プロ意識レベルが低くなる傾向があるのかもしれません。日本でも梅原大吾さんやストリートファイター2のプロ選手がいますが、彼らがどのような生活をしているのかはほとんどのプロ選手に伝わってません。eスポーツ先進国ではそのようなロールモデルとなりうる選手が多く活躍しており、そのため多くの選手が彼らに影響されてプロ意識を向上させてます。

— 日本ではプロとしての環境を整えているチームがないのでしょうか。

仏氏 はい、日本国内ではそのようなチームはまだ出てきてないですね。
私は環境市場主義者のため選手やチームの環境を整えることが最優先事項だと思っています。

それは実体験から来ており、留学先のオーストラリアの教育環境に触れ思考的な部分が大きく伸びたことで、勉強量が減っても学年でトップクラスの成績を残せました。

FENNELに掛ける想い

— 海外のeスポーツ企業はVCから調達するなどファイナンスにも力を入れていますが、今後はそのようなことも考えていますか。

仏氏 直近では必要ないと考えています。ただし、より事業のスケールアップへの解像度が高まってきたら必要になると考えています。
シリコンバレーでは、一歩遅れたら死を意味しますが、日本は比較的そこまで競争が激しくありません。そのため自分の中で仮想の競合相手を作っては焦るようなマインドセットを意図的に作ってます。もちろんVCからの調達になりますと、最終的な出口としてIPOも考えています。

— 最後にFENNELに掛ける想いを伺わせてください。

仏氏 FENNELでは熱狂を生み出すため、いかに大会文化を根付かせるかを目標にしていま
す。今後はアパレルなども活用してFENNELのコミュニティにいかに熱狂してもらうかが勝負です。

eスポーツではオンラインのコミュニティは数多くありますが、オフラインと比較するとファンとの繋がりが弱い。野球ファンなどの人は、オフラインのイベントにてほかのファンと実際に会うことで、そのチームを応援しなくなっても何年も関係が続いていたりしています。野球ファンは滅茶苦茶楽しそうに応援していますし、試合外でも熱狂していますよね。実は何かに熱狂することで人生の幸福度を非常に上げていて、逆に孤独で熱狂することがないと幸福度を下げている。

今後はファン同士がオフラインで対面して、関係を構築していくことが重要になってくると思います。そのためFENNELではオフィス1Fをパブリックビューイングが可能な場として開放し、ファンの方々を招いてオフラインで対面できるような環境機会を作る予定です。

FENNELに関わっている人々をいかに熱狂させ、みんなが人生幸せになってくれたら嬉しいです。薄そうに聞こえますが、私はいつもそれを真剣に考えています。