幼稚園・保育園から高等学校、短期大学までを擁する明泉学園。2021年8月に3代目理事長に就任した百瀬義貴氏は、これまでの改革を止めることなく新しい時代にふさわしい学園の発展を目指す。その一環としてフェリシアこども短期大学も今年、共学化に踏み切る決断をした。
反対だった「共学化」に踏み切った理由
フェリシアこども短期大学は近年、次々と改革を行ってきた。国際化の進展に合わせて学科名を「国際こども教育学科」に変更、専攻科などを新たに設置、グローバル人財輩出に向けて舵を切った。
またハード面でも2019年秋に隈研吾氏の設計による木材を多用した新校舎を建設、翌20年には学校名を「鶴川女子短期大学」から「フェリシアこども短期大学」へ変更した。21年には共学化もスタート。この一連の改革を常務理事としてリードしてきた百瀬義貴氏は今年8月に理事長に就任した。
「伝統を重んじつつ、新しい時代にふさわしい学校運営を行いたい」と意気込む百瀬理事長だが、実は「共学」については教職員との間で長年、結論を出せないでいた。
「女性の手に職を付けさせてあげたい」と60年前に鶴川高等学校が、続いて鶴川女子短期大学が女子校として創設された。女性教育へのこだわりは、建学の精神や教育理念とも通ずる部分だ。しかし学園内では「共学化」へ賛成する教職員のほうが多かったという。
「私は最後まで共学化に反対していました。というのも『学校経営の苦しい時代だから安易に共学化し
た』と解釈されてしまう懸念があったからです。また、『男性保育士による不祥事』がニュースで取り上げられたこともあり、どうしても共学化へ踏み切れなかったのです」
ただ、男性にも保育士になりたい人はおり、男性保育士のニーズが世の中で高まっていることも事実だ。
「私が共学化に反対することで、教職員と衝突が起きました。どうすれば私自身が納得できるか、自問自答を7年も繰り返してきました。その末に導き出した答えが『自分の納得のいく教育で、男性保育士を育成すればいい』ということでした」
百瀬理事長には2歳未満の子どもがいる。
「自分の子どもを安心して預けられる男性保育士を自分たちで育てればいいと思いました。これは教育理念とも合致します。学園創立者で祖父の故・百瀬泰男の言葉に『人生に何ものかの光を点じようとする愛の教育』というものがあります。そこに立ち返ることができたとき、雲の上にスッと抜けたように迷いが消え、心が晴れやかになりました」
入学希望男性の面談に必ず百瀬理事長が同席することを条件に、21年度からの共学化を決断すると、そのニュースを聞いた問い合わせがあり、22年度には数人の男子学生が誕生する見通しだ。
国際化の時代にふさわしい教育環境のアップデートを
改革のもう一つの柱が「国際理解を深める教育」だ。今後の日本では、外国人の子どもたちが今以上に増えることが予想される。それに合わせて教育者側もアップデートが必要になる。同・短大では、英語で保育ができる乳幼児教育者を育てるために、カナダへ短期留学し外国の保育を学べる専攻科がある。
乳幼児教育の教育課程で海外留学制度がある短大はかなり珍しい。実際、国際的な視点を学べることに共感して入学した学生も多いのだという。国際こども教育コースでは、すでにカナダへの留学を経験した学生がおり、その学生がロールモデルとなって「あの人みたいになりたい」と応募してくる受験希望者の高校生が増えたそうだ。
「すごくうれしいことですね。好循環が生まれています。また鶴川高校は学ぶ楽しさ、達成する喜び、そして夢を見つけて叶えられるきっかけづくりを応援するためにコース制を取り入れ、カリキュラムを見直したいと考えています。またフェリシア幼稚園は短大の附属という環境もあって、頻繁に園外保育という形で短大を訪れています。将来がとても楽しみですね」
今後は名実ともに学園の経営トップとして運営を主導する。
「私は経営者として顧客視点を大事にしています。『愛』という当学園の理念に共感して期待して入学・入園してくださった方々は皆さん、私にとって大切なお客さまです。そのお客さまに教職員たちが知恵と知識を出し惜しみすことなく提供する。それが私たち明泉学園の使命だと言えます。コロナ禍で学校に通えなくなった生徒をどうやって卒業させようかと教職員全員が懸命に奔走していました。そこまで頑張れるのは、皆さんの人生を預かっている意識と責任感ゆえだと思います」
会社概要 設立 1960年7月 所在地 東京都町田市 事業内容 フェリシアこども短期大学、鶴川高等学校、フェリシア幼稚園、鶴川フェリシア保育園、成瀬フェリシア保育園などを運営 https://www.meisen.ac.jp/ |
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