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農家の課題をAIで解決するレーザー自律型除草機開発の「Carbon Robotics」

記事作成=hackjpn

食糧需要増加と農家が抱える課題

世界の人口増加と中間層の拡大により農産物の需要が1.5倍に拡大し、2025年には食料と水不足に直面することが予測されている。既に現在でも、世界規模での温暖化や異常気象などが特に発展途上国の農業に悪影響を与え、小規模農家を危機的状況に陥るケースが増加している。

世界中で食糧需要増加に対応するための農業技術の進歩が大いに期待されている。そうした背景から、社会課題解決を視野に入れた、ESG投資、インパクト投資の対象としてもアグリテックベンチャーに注目が集まっている。

そんな中で注目されているのが、農家が直面する最大の課題の1つ「除草」のみならず、収穫量の改善、安全な労働条件の提供や全体的なコスト削減、有機農産物への持続可能性を農家に提供するアメリカのスタートアップだ。

農家の負担をAI技術で軽減する

Carbon Roboticsは、除草剤耐性のある雑草の増加や、有機栽培への関心の高まりを受けて、農業用ロボットを開発している。多くの農家は、地下水を汚染し、動植物など自然界に悪影響を及ぼし、癌のリスクの増加につながる可能性のある農薬の使用を減らすよう政府から圧力をかけられている。同時に、彼らは除草剤耐性の雑草の増加と戦っており、除草ためのの新しい技術を求めている。

そこで同社は、レーザーを使って雑草を刈る自律型除草機を開発し、農家が使用する除草剤の量を大幅に削減できるようにした。

自律型除草ロボット「The Autonomous Weeder」は、AIによって雑草をピンポイントで識別し、炭酸ガスレーザーを照射することで土や農作物のダメージを与えずに除草作業を行う。車体の前方・後方・直下にはカメラが搭載されており、地面をスキャンしながら雑草を識別する。

遠隔から状況を確認することも可能だが、人の力を必要としないので、昼でも夜でも作業が可能となる。このロボットは1時間あたり10万本以上もの’雑草を除去でき、1日に作業できる範囲は約6万1000~8万1000平方メートルほど。ちなみに人間が1日に除草できる面積は4000平方メートル程度である。

ロボットの価格は非公開ではあるが、リースでの利用が可能で、2021年と2022年の在庫はすでに完売しているとのこと。雑草を自動的にスキャンしながら除草するため、土壌環境をより良く健康に保ち、農民にも余裕がうまれ、コスト削減にもつながる。

雑草を識別するためのスーパーコンピューターと高解像度カメラ、そして化学薬品不使用のレーザーを駆使しながら速いスピードで除草を行う。レーザーを使う理由としては、周囲の土地を無傷のまま、微生物も保護ができ、有機農家や土壌の長期的な健康を確保するための再生農家にとって、収穫量を減らすことなく安全にしようすることが可能だからである。

Carbon Robotic
Carbon Robotic
自律型除草ロボット「The Autonomous Weeder」と、レーザーを使用している時の様子(出典:https://carbonrobotics.com/

労働力不足や環境汚染の課題を解決

同社の農業用ロボットは、農薬への懸念だけでなく、労働力不足という課題も解決する。新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックで労働力の不足が続く中、多くの農業用ロボットが人々の関心を高め続けている。これからも「高コストで、危険」である可能性が残る農場労働において、有害な化学物質を使用せずに動作し、人手を減らすことができるCarbon Roboticsのロボットシステムは魅力的に映る。

創業者兼CEOのPaul Mikesell(ポール・マイクスル)氏は、Uberの元エンジニアであり、ドローン開発等の経験を培ってきた。Carbon Roboticsを創業した理由は、人間にとって不可欠な活動である農業での課題解決を行うことで、世界中の農家を支援し、人々に栄養を与え続けることを目指したからだという。

Carbon Robotics創業者兼CEOのPaul Mikesell氏
創業者兼CEOのPaul Mikesell氏(出典:https://www.crunchbase.com/person/paul-mikesell) 

ポール氏いわく、除草ロボットの大規模な採用にはまだ大きな課題があるとのこと。 その1つが、ロボットにはバッテリー充電が必要であるため、充電場所を設けられる大農場での作業に限られる点だ。さらに、一部のロボットは有害な排出物や汚染を引き起こすディーゼルを電力として使用している。

ただ、他のすべてのトラクター作業と比較して、同社の自律方草刈り機に使用されるディーゼル量はわずかだ。そのため、「除草剤の使用量を減らすことは、ディーゼルを使用する犠牲を払ってでも価値ががある」として、当分の間は目をつぶる方針だ。

もう1つの課題はコストだ。こちらはリース方式を導入するなどして普及拡大を急ぐことで市場価格を下げ、農家の先行投資負担を減らすことも検討中だ。

農業×ITの「アグリテック」が人類の未来を変える

数年前までは、農場ロボットを専門とする会社はほとんどなかったが、現在は「急成長している分野」だ。播種、収穫、環境モニタリングなどのタスクを実行するように設計することもでき、農業用ロボットの世界市場は、2020年の54億ドルから、2026年までに200億ドル以上に増加すると予測されている。

Carbon Roboticsのロボットは、日本で活用するには未だ大きさなどの課題が’あるかもしれない。しかし、アグリテックは国内でも盛んに行われている。

例えば、OPTiM社はロボット技術により、虫食い部分のみの農薬散布や広大な農地のスキャンを行うことで、第4次産業革命を目指している。また、GIS(地理空間情報システム)を使用することで自治体における農地の現地調査工数を70%削減させるIROHA社のドローンや、画像認識技術を使用して米粒の等級を解析するアプリを展開しているSkymatix社など、さまざまなプレーヤーが登場している。

小規模な農場の中にも、新しいアプローチを試すことでより柔軟に対応する技術を展開する企業が増えてきていることは間違いないだろう。

人口増加を上回るようなペースで、食糧の増産ができるかどうかが世界の食糧問題解決の鍵となってくるかもしれない。Carbon Roboticsのように、AI技術を使って農家の課題解決を行う企業が増えることが、地球環境と人類への貢献につながるだろう。