経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

創立70周年迎えた北海道銀行 新たな時代を見据え地域と共に変化に挑む

北海道銀行頭取・兼間祐二氏

北海道銀行は創立70周年を迎え、今年6月の株主総会で兼間祐二氏が第8代頭取に就任した。コロナ禍において、「北海道の企業経営者を役職員一丸で支援する」と語る新頭取に抱負を伺った。

北海道銀行頭取・兼間祐二氏プロフィール

北海道銀行頭取・兼間祐二氏
(かねま・ゆうじ)──1964年北海道生まれ。慶應義塾大学卒業。87年北海道銀行入行。経営企画部長などを経て2016年6月取締役就任。21年6月よりほくほくフィナンシャルグループ副社長兼北海道銀行頭取。

地域経済の回復に向けほくほく連携を推進

── コロナ禍の北海道経済の動向や企業支援の現況は。

兼間 緊急事態宣言の影響もあり、店舗の休業や不要不急の外出自粛などの人流抑制で、個人消費、観光関連で厳しい状況が続いています。

 一方で公共投資は高水準の予算を背景に堅調に推移し、持ち家着工件数や企業の設備投資案件も増加しています。北海道経済における公共工事の貢献度は約8%あり、景気の下支えになっています。輸出についても魚介類などの価格持ち直し、自動車部品等の需要増による持ち直しが見られます。

 ただし、主力産業の観光業は低迷が続いています。赤字企業の割合も増加しており、資金面の支援継続が不可欠です。個別企業に応じた資金繰り支援に取り組むとともに、政府系金融機関とも連携し、資本制劣後ローンも活用しています。また北海道の「伴走支援型保証制度」の利用促進も図りつつ、規模の大きな支援先については政府系ファンドと連携し、再生支援に取り組んでいます。

 さらに企業の経営力強化に向け、事業計画策定、販売促進支援、経費管理、人材確保・育成、事業承継・M&Aなど多様なツールを用意しています。脱炭素やSDGsを鑑み、持続可能な地域社会の実現も踏まえたコンサルティングも展開しています。

── 北陸銀行との広域連携の進捗は。また道内金融機関との連携は。

兼間 2004年にほくほくフィナンシャルグループ(FG)を設立しました。現在は体制を経営企画部、営業戦略部、リスク統括部、監査部に再編し、両行営業組織の連携や共同システム導入などの強化を加速しています。

 北陸銀行は北陸3県、東京、大阪、名古屋などに国内拠点がありますので、北海道銀行の取引先に本州への販路拡大や経営ツール導入の情報提供が可能です。昨年4月から共通のビジネスマッチングシステムの運用を開始し、両行取引先のニーズを共有しています。これにより、北海道の強みである農水産品の道外販路拡大を含め、両行の取引先の商談実現や課題の解決実績が増えています。

 道内の地域金融機関との連携については19年以降、5つの信用金庫(釧路、遠軽、渡島、北空知、北見)、2つの信用組合(北央、空知商工)とATM連携しており、オール北海道で効率化を進めていきます。

新体制で80周年を見据え地域の企業を支える

── 22年3月までの中期経営計画の進捗はいかがですか。

兼間 貸出ボリュームは住宅ローンが増加していますが、事業性貸出はコロナ関連融資による積み上がりが落ち着き、減速感が見られます。収益面では低金利環境の継続による資金利益の減少に加えて、コロナ禍の活動制限を受け、預かり資産や法人フィーといった役務利益も積み上がりが遅れています。一方で経費の抑制効果もあり、当期純利益はほぼ中計通りの見込みです。今後は地域企業の経営改善・事業再生に向けた本業支援を強化していきます。ビジネスマッチングやM&A、コンサルティングフィーといった役務利益の増強を図るとともに、信用コストの抑制につなげていきます。

 現在はデジタル化が急速に進んでいます。アプリやネットバンキングの契約件数が増加傾向にあり、非対面サービスの機能強化による顧客利便性の向上に努めています。オンライン顧客面談や各種事務手続きの電子化による生産性向上・業務効率化を通じ、行員がお客さまと向き合う時間を捻出しています。

 脱炭素、カーボンニュートラルへの対応も重要です。ほくほくFGは今年2月に「ほくほくFG環境方針」を制定しました。使用電力の抑制などCO2排出量の削減を図るとともに、環境問題に取り組むお客さまへのサポートを積極化しています。

── 創立70周年の節目に頭取に就任されました。抱負は。

兼間 経営のかじ取りを任された重責に身が引き締まる思いです。80周年に向け、当行を強固な経営体質にするとともに、ほくほくFGの価値を向上させることが使命です。DXなど新技術を活用しながら、徹底した合理化・効率化を進める一方で、お客さまの付加価値を向上する取り組みに経営資源を集中していきます。

 6月からは札幌市内の店舗運営体制を見直しています。法人営業に特化した法人営業部、個人営業に特化したプライベートバンキングセンター、住宅ローンに特化した住宅ローンプラザ、窓口営業に特化したCS店と役割を明確にする体制に変更していきます。これにより、事業承継やM&Aといった企業の経営課題や個人の資産運用により積極的に対応できる体制を構築していきます。

 若手や女性の登用も強化していきます。お客さまに必要とされる銀行であるためには職員一人一人のレベルアップが必須です。若手に経験を積ませるとともに、女性の管理職・経営職を育てています。この人材マネジメントは最重要テーマです。

 役職員が一丸となって、地域を支える活動を行い、80周年、90周年に向けてさらに発展できるよう全力を尽くしてまいります。