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「キャンピングカー文化」浸透へ先頭に立つ日本一のメーカー―ナッツ

あまりの人気に、購入に際して注文から実際に納車されるまで「1年以上待ち」が続く日本のキャンピングカー業界。業界最大手のキャンピングカーメーカーのナッツは、需要に応える増産体制を敷くとともに、自社、業界の双方から魅力を訴求し、日本にキャンピングカー文化を根付かせていく。

ナッツ代表取締役CEO荒木賢治
ナッツ代表取締役CEO 荒木賢治(あらき・けんじ)

コロナ禍で車両が再評価され「1年以上待ち」の人気に

 キャンピングカーの人気が止まらない。業界団体の日本RV協会(JRVA)によると、2012年以降、国内販売額は右肩上がりで、20年は過去最高の582億円となった。

 その中で「生産が追い付かない」とうれしい悲鳴を上げるのは、国内全体の年間生産台数約7千台のうち、約1千台を製造販売するマーケットシェア日本一のキャンピングカーメーカー・ナッツの荒木賢治代表取締役CEOだ。

 同社では、数年前まで平均すると半年待ちだった納車が、今は1年を超えるまでになっているという。平均単価も6年ほど前に約600万円だったものが、21年は約930万円まで上がった。1千万円を超える車種も多く売れている。

 同社の売上高は20年12月期が約74億円。21年度も好調で、10月は過去最高の月間売り上げを記録。通年では、前期比2割増の90億円超を見込む。

 購入者層は50代から60代まで幅広く、最近は40代も目立っており、短期間で買い替える「リピーター」が急増している。

 「これまで静かなブームはずっと続いていた。自分たちでテントを張って、たき火もしてというアウトドアをひと通り楽しみ終えた人が、観光やペットとのお出かけなどに絡めた新たな遊びの手段として購入する。同じ車内空間で過ごすことで、『夫婦や家族間のコミュニケーションが増えた』との声も多い」と荒木氏は語る。

 こうした追い風の中で、コロナ禍が人気に拍車をかけた。「密を避けて、家族単位で旅や移動ができる点が改めて評価されている」とする。

 個人向けに限らず、同社では法人向け販売も進めている。福利厚生アイテムとして社員に貸し出したり、ワーケーションで利用したり、小規模研修などにも役立てられるからだ。企業イメージの良さもこれを後押しする。

 実際に、同社でも社員専用レンタルキャンピングカー30台を所有しており、社員に貸し出している。「楽しかった」「もっと興味が湧いてきた」と、利用した社員からの反応は上々で、荒木氏は「自社製品への愛着と理解が深まっている」と笑みを見せる。

 一方、東日本大震災以降は、キャンピングカーの災害時の活用にも注目が集まっている。防災シェルターや災害復旧に携わる人々の指揮所として効果を発揮するためで、同社もこれまでに各地の被災地に車両を寄贈したり貸し出したりしている。21年4月には九州経済産業局と災害時のキャンピングカー提供について連携協定を結んでいる。

24年に生産体制を倍増へ販売網はFCも構想

 今後は生産と販売の体制も強化していく。北九州、中国・大連、フィリピン・セブに置く3工場で自社生産しているが、21年12月にセブで2番目となる新工場を稼働させた。これにより、24年に2千台、翌年に3600台、30年には1万台へ生産量を拡大する計画だ。

 販売網は既に北海道、埼玉、神奈川、愛知、京都、福岡に直営店計8店舗を展開。22年には兵庫県に1カ所を新設し、その後は全国でのFC展開も構想する。

自社・業界の顔の立場から車両の魅力を訴求

 荒木氏はこれまで20年以上にわたって欧米・オセアニアなどのキャンピングカー大国を毎年訪問し、工場研修や製品開発を研究してきた。その荒木氏の目には、「日本のキャンピングカー業界は欧米と比べて文化としても産業としてもまだ成熟していない」と映る。長期のバカンスやアウトドアが当たり前の環境下で、キャンピングカーが欧米並みにはメジャーな存在として生活に浸透していないからだという。

 そこで荒木氏は「日本にもキャンピングカー文化を根付かせたい」と意気込む。

 その一環として、同社では自社オーナーを対象に、「感謝祭」というキャンプ大会イベントをコロナ前まで毎年開催してきた。キャンピングカーは、オーナー同士が仲良くなれるきっかけになるため、『新しい遊びの提案と出会いの場の提供』に力を注いできた。

 また、これら訴求活動は自社内に留まらない。荒木氏は日本RV協会の代表理事・会長も務める。会長就任前から協会のイベント開催に尽力しており、年間20回以上を開催し、年間来場者が30万人を超える年もあった。これが現在のブームにもつながっている。

 協会では今、荒木氏らが中心となって「くるま旅と車中泊の文化を創出する!」を打ち出している。さらに、新たな顧客層に魅力を伝える「キャンピングカー専用TV番組」も計画中だ。

 最大手と業界の顔の立場から、キャンピングカー文化を浸透させるべく、荒木氏率いるナッツはこれからも走り続ける。

会社概要
創業 1990年
資本金 1,000万円 売上高 74億円
所在地 福岡県遠賀郡遠賀町
従業員数 190人(海外除く)
事業内容 キャンピングカー製造販売、特殊車両製造ほか
https://nutsrv.co.jp/

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