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抗がん剤治療に革命を起こし個別化医療に挑戦する京大発ベンチャー―京ダイアグノスティクス

京都大学で研究開発された独自技術を用いて、大腸がんの抗がん剤治療に画期的な進化をもたらそうとしている大学発ベンチャーの京ダイアグノスティクス。個々の患者に有効な抗がん剤を選定する診断サービスで、「がん個別化医療」の実現を目指す。

京ダイアグノスティクス社長・小西一豪
京ダイアグノスティクス社長・小西一豪 (こにし・かずひで)

 京ダイアグノスティクスが開発するのは、患者ごとに適した抗がん剤を選定する診断支援サービス。現在、抗がん剤の選定は一定のガイドラインに基づいて行われているが、医薬産業政策研究所の調査によると、その有効率は25%程度と低い。効果が現れるまで抗がん剤の種類を変えて投薬を繰り返すため、患者には治療費や心身の負担が大きい。

 しかし、同社の診断技術を用いると、有効率は約90%にもなるという。診断には、京大医学部で開発されたがん幹細胞の培養技術を用いる。従来の培養技術とは異なり、純粋ながん細胞だけをスピーディーに培養できるため、薬の効果の診断をより速く正確に行えることが特徴だ。

 患者一人一人に適切な抗がん剤を選定できれば、患者の負担を軽減できるだけでなく、年間何百万円とも言われる投薬を減らし医療費を抑制する効果もある。このようながん個別化医療に取り組む民間企業は世界的にも珍しく、実現すれば抗がん剤治療に画期的な進化が期待できる。

京ダイアグノスティクス

 「以前から個別化医療の必要性は感じていました。新しい技術を用いて治療が難しい病気に有効な薬を届けたい」と小西一豪社長。製薬会社の創薬研究開発職を経て、2019年から同社に参画。VC経験もありビジネス感覚にも優れている。

 「大学の医学部は医療に貢献するという使命の下、その技術をベースに民間企業とタッグを組めば、商業化して技術をお金に換えられるので、サービスをもっと広めることができます」

 昨年は認知度を高めるためにクラウドファンディングに挑戦し、約2500万円の資金調達に成功。昨年11月より、京都大学と民間企業3社と産学共同講座をスタートし、がん個別化医療の早期実現を加速する。「目標は1~2年以内に自由診療としてサービスを提供すること。ゆくゆくは各都道府県に提携病院やラボを持ち、誰もが保険でサービスを受けられるようにしたいですね」

 今後研究が進めば、副作用の少ない抗がん剤の選択や、胃がんや乳がんでの診断も可能になる。さらには、抗がん剤の開発にも技術を応用できるという。同社の研究が革命を起こす日も近い。   

会社概要
京ダイアグノスティクス
設  立●2016年11月
資 本 金●2,800万円
本  社●京都市左京区
従 業 員●4人
事業内容●がん診断関連製品・サービスの開発・販売
https://kyo-diagnostics.jp/

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