2020年8月に創業者の孫である西川智也氏が社長に就任した。創業当時は硯・和紙・筆を取り扱う卸商店だったが、現在は主にファイル・アルバム・事務用品が主力商品。西川社長の父も会長でありながら開発者として手腕を振るっている。
モノ売りからコト売りへ顧客との接点を開発に生かす
1932年の創業以来、今年で90年の歴史を有するセキセイ。創業者である西川社長の祖父は当初は硯、和紙、筆を取り扱っていたが、戦後、ロッカー、デスク、保管庫といったスチール製品も取り扱うようになり、事業領域を広げた。しかし、2代目(現会長)になって、89年より自社工場で生産する新考案のカケルアルバムや透明PP素材のファイルへと主力商品を切り替えていった。
「これからは、モノ売りからコト売りへ、発想を転換する必要があると感じています。ただ商品(モノ)を売るだけではなく、イベントなどと組み合わせて体験(コト)していただくことで、モノの魅力も愛着も増すのではないでしょうか」と西川社長。
例えば、セキセイではアルバム販売に加えて、アルバム作り教室も開いている。スマホで撮影した画像をコンビニ等に設置された専用端末にデータ送信すればその場で写真が出来上がる時代に、お気に入りのアルバムに写真を手作業で入れていくアナログなモノづくりの楽しさを味わう内容だ。
「ただアルバムを作るだけではありません。コーヒーや紅茶を飲みながら、スタッフとの会話も楽しめる場を提供しています」
モノ売りでは知ることのできない、ユーザーの反応が直接見られるのはメーカーにとってもこの上ない良い機会。お客さまとのちょっとした会話のやり取りや触れ合い、交流の中から新商品アイデアの着想を得ることもある。ヒット中の商品『ラポルタ@スマタテペン』が好事例だ。
「ある展示会にブース出展した際、ふらりと立ち寄ってくださったお客さまとの何気ない会話の中にヒントがあった。商談ではなかったので名刺も頂きませんでしたが、『こういう商品があったらいいね』というそのお客さまのお話が心に残っていて。後日、社員が『スマタテペン』を提案したとき、商品化する価値があると予感し、デザイナーでもある父に相談したのがきっかけでした」
スマタテペンとは読んで字のごとく、スマホスタンド機能が搭載されたペンのこと。ボールペンとしてはもちろんのこと、タッチペンとしても使える。カラーバリエーションは豊富で、クリップ部分に企業名やロゴなどを入れられる幅があり、ノベルティとしての活用も期待される。第30回日本文具大賞優秀賞を受賞したことも受けてTVで紹介され、話題となった。
同じく、ボールペンカテゴリーで話題を呼んだ商品に、輪島塗に蒔絵を施した高級ボールペンなどもある。
「入社して17年。人と話すのが得意ではなかった私が、これまで営業職を続けることができたのは、人との出会いに助けられたおかげだと感じています。『一期一会』を座右の銘とし、人との出会いや対話を大切にしてきたことが自身の成長にもつながったと自負するとともに、感謝しています」
人の縁を大切にしている今感謝を忘れずにまい進する
創業90年を迎え、「100年企業」の金字塔も視野に入っている。
「私たち中小企業は、1年ごとを大切に積み重ねていくしかありません。とはいえ、悠長に構えすぎては、時代の移り変わりとともに淘汰されてしまうでしょう。今やネット通販が当たり前ですが10年前はこんな時代が来ることは予測もしていませんでしたから。セキセイとしてもECの売り上げは伸びており、力を入れていくのは当然のことながら、足元を怠っては本末転倒です」
この「足元」とは、卸ルートの販売や対面営業を指す。
「この従来の営業スタイルも変えたくはありません。人を大切に、ご縁を大事に。時代に即して変えるべきところは変えますが、守るべきところは守り抜く。まだ45歳の社長が語るには古臭い主張かもしれませんが、その先に、無事に100年を迎えることができれば幸いです」
具体的なところでは、ファイルやアルバムなどの収納用品・事務用品を主軸としながら、伸びしろのあるギフト用品のカテゴリーを増やしていく考えを明かした。
「異業種の方々との交流は、新商品であったり、いろんな発想や着想を得るヒントになりますから」と、数年に一度出展しているギフトの展示会や毎年開催する自社企画のオリジナル展示会である「SEDIAセレクション」の出会いを大切にしている。
会社概要 創 業●1932年5月 資本金●1億円 売上高●40億円 本 社●大阪市阿倍野区 従業員数●98人 事業内容●ステーショナリーおよび事務用品の販売 https://www.sedia.co.jp/ |
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