「大正生まれ、大阪育ち」。採用パンフレットを飾るキャッチコピーが地元愛と誇りを感じさせる藤井組。本社がある大阪市大正区を訪れると、道すがら、至るところにこの惹句が刻まれた看板が掲示されていることに気付く。インフラなどの基礎工事に関連した藤井組の仕事は表立つものではないが、確かにこの街にも、別の街にも想いは刻まれている。
美しい仕事ぶりと積極的堅実経営への想い
1963年に「大正で生まれた」藤井組は、土木工事における鋼製杭の施工を中心に手掛ける高度専門工事会社である。89年には、狭い場所や高架下など高さ制限が設けられた空間でも鋼製杭の施工可能な「アルファーシステム工法」で特許を取得。現在は近畿圏のみならず全国から依頼が集まっている。
そんな同社の社是の一つに、「プロフェッショナルとして美しい仕事をする」という一文がある。その真意について森社長はこう話す。
「美しいとは、見た目ではありません。当社にとって商品や成果物に当たるものは、建物の基礎であったり、仮設の杭であったり、いずれにせよ表立つものではありません。まして仮設の杭などは工事が完成すれば引き抜かれ、なんの形も残らないのです。となると、われわれの商品とは形あるものではなく、成果に至るプロセス。営業・計画・提案・施工・安全の全ての分野においてそのプロセスにこだわり、美しい仕事を行いたいという思いを込めているのです」
プロフェッショナルである以上、施工や工事ができるのは当たり前。あらゆるプロセスをいかに美しく行うかに付加価値を与えた。さらに永続的に「美しい仕事」を追求するに当たり、森社長が掲げるスローガンの一つが「積極的堅実経営」だ。
「例えばオリンピックのような、一過性の大きな仕事に頼らないこと。それで一時的に収入を得られたとしても続かないからです。大阪・関西万博関連の仕事も請けてはいるものの、継続的に受注できる案件に重きを置く体制に変わりありません。また、特定の取引先に依存することも避け、継続的に発注いたただける取引先を軸に複数の取引先から受注することで、リスクヘッジを行っています」
リスクはいつ何時降り掛かるか分からないことをコロナで学んだ。昨年より小康状態であるとはいえ、まだまだコロナ禍の及ぼす影響は大きい。藤井組が軸足を置く業界も例外ではないが、「こんな時だからこそできること、気付いたこと」があると森社長は語る。
「今だからこそ、会社のあり方、業界での仕事のあり方、業務内容一つに至るまで見直しを図っています。まだまだ必要なことができていないため無理無駄を省いているところ。企業の本質を見直す良い機会になったと捉えています」
リモートでの取り組みが増えたことでつくづく対面の大切さも痛感した。
「リモートで伝わらないもどかしさ。改めて言葉の意義や重要性を感じました。そこであえて新人ではなく中堅社員を中心にマナー研修を行いました。自戒の意味も込めて、言葉遣いを見直しています。この機会に現場作業員の地位向上も図っていきたい。成果物にとらわれがちな業界ゆえ、鋼製杭の施工業者の地位を見直していく。その一環として、資格取得を奨励し、キャリアアップの道筋も明示していきたい。技能の研鑽につながるような資格の新設にも取り組んでいます」
「大きな会社」ではなく「良い会社」であり続ける
藤井組は2023年、創業60周年を迎える。「祝い事として、いくつか取り組むことはありますが、一通過点として粛々と受け止めます」と森社長。
周年記念行事として、制服や名刺デザインの刷新、社員向け感謝イベントなどを行う予定だ。プロバスケットボールチーム「大阪エヴェッサ」のオフィシャルプラチナパートナーのほか、大阪市との津波災害時または水害時における指定緊急避難場所としての使用に関する協定書の締結など、社会貢献を通じて企業価値を上げる取り組みも継続していく。
「社屋の大改装もそうですし、公共施設の命名権もそう。企業価値を高める一連の活動は、対外的なイメージ戦略ではなく、従業員のモチベーションアップにつながっていると感じます。そして、そんな従業員の充実した仕事ぶりを見るのが私のやりがいにもなっています。仕事は人生の大半の時間を占めるものですから、皆が誇りとやりがいを持って働きながら、社会責任を果たして地域貢献も行う。『良い企業』を目指していきます」
会社概要 設 立●1963年7月 資本金●9,300万円 売上高●23億116万円 本 社●大阪市大正区 従業員数●70人 事業内容●鋼製杭・鋼矢板の施工、土木工事、水上工事 https://www.o-fujiigumi.co.jp/ |
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