経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

祖業の金型工場をIoT・DX化EP100を実現する切り札にーシムックスイニシアティブ

シムックスイニシアティブ 代表取締役 CEO 中島高英(なかじま・たかひで)

「事業のエネルギー生産性を2倍にする」などを目標とする企業が参加する国際的イニシアティブ「EP100」。今後は大企業だけでなく、中小企業にも無視できない状況となる。そうした中、シムックスイニシアティブの新サービスが注目を集めている。キーワードは「見える化のDX」だ。

シムックスイニシアティブ 代表取締役 CEO 中島高英(なかじま・たかひで)
シムックスイニシアティブ 代表取締役 CEO 中島高英(なかじま・たかひで)

注目の新クラウドサービス「Jupiter X」

シムックスイニシアティブ(以下、シムックス)は、工場向けのDX・IoTサービスを展開する、「スマートファクトリー」を実現する企業だ。

スマートファクトリーとは、データを最大限に活用・分析することで製造プロセスを改善し、稼働の効率化を目指す工場のこと。スマートファクトリー化には、IoTとDX、AI技術が不可欠である。シムックスのIoT・DXクラウドサービス「Jupiter X(ジュピター・テン)」はまさに、スマートファクトリーを実現する切り札となり得る。重要な鍵を握るのは、工場内のあらゆる工程の「見える化」だ。

「工場の生産性をデジタルデータで見える化して初めてムダを発見でき、生産性を向上させる改善策を打ち出せるのです」と中島高英代表は語る。

Jupiter Xは、「使用電力」から「生産数」「ABC原価」「工具摩耗」「儲け」などの見える化まで、社内外合わせて10の商品・サービスとの連携が可能(図参照)。

スマートファクトリの4階層モデル
スマートファクトリの4階層モデル

シムックスでは工場の経営管理を大きく4階層に分ける考え方を提唱している。中島代表が30年にわたる工場経営から導いたメソッドだ。

これを元に10のIoTサービスが用意されている。土台部分の加工管理から順に、プロセス管理、工場管理、経営管理と階層化し、階層ごとに体系的にサービスを用意している。例えば、加工管理では「稼動の見える化」「工具摩耗の見える化」、工場管理では「ABC原価の見える化」「電力の見える化」、経営管理では「儲けの見える化」「AI分析」などがサービスメニューとして並ぶ。

計測には、工場向けIoTデバイス「マリンバM3」など自社開発の製品や他社製品のハード機器を用いる。それらを組み合わせて、生産の現場でモニタリング・計測を行う。

「生産性を上げる第1歩はデジタルデータによる見える化です。まずは生産工場のあらゆるデータを記録して、生産性を測る指標にすること。これが先決です」

Jupiter Xは、シムックスの各サービスをつなぎ、データを集めてクラウドで「見える化をDXする」中央司令部だ。まさに、カーボンニュートラルとDXを同時に実現させるワンストップソリューションである。

自動車部品や電気部品、金型などの工場で既に導入されているJupiter X。導入先の大口顧客は大手電子部品メーカーや大手自動車メーカーなど名立たる企業のほか、中小の金型工場にも導入実績がある。

工場をDX・IoT化し20年前からEP100を実現

シムックスは金型工場から始まり、「少年時代から工作機械や旋盤を見てきた」という中島代表が2代目として跡を継いだ。中島代表は1990年代から工場のIT化、IoT化、DXを先導してきたパイオニア的存在だ。既に20年前、自社工場で生産性の倍増を実現していたというから驚きだ。

自社開発の生産管理システムや稼動・電力モニタリングシステムなどから得たデータを元にムダを発見し、改善を重ねた。この結果、ムダな電力を48%削減し、リードタイムを45日間から21日間に圧縮。実質、生産能力を2倍にしたのと同じだ。以来20年間、工場の製造現場をハードウエアとソフトウエアの両面から俯瞰することができる稀有な存在であり続けた。東京大学との共同研究は14年間続いており、技術研究にも余念がない。

「寺子屋」で経営者をデジタル化DXの前に経営者の意識改革を

中島代表は現在、日本の製造業を底上げしたいと、培ってきたノウハウ「秘伝」を次世代へ伝承するべく教育に注力。寺子屋と称し、経営者や現場責任者を相手にオンラインで教えている。

「DXやIoTを導入して工場のデータを取得できたとしても、それを活用できなければ意味がありません。生産数や製品別原価など、経営に必要な数字をデータでちゃんと見ている人はほとんどいない。寺子屋ではデータの取り方からデータの見方(分析)まで教えています」

ITやデジタルにコンプレックスを持つ経営者は多いという。

「正しく理解できればデジタルは強い味方になります。生産性を向上させれば人間が付加価値を生み出す部分に注力できるようになります。商品開発のサイクルも早くなり、利益が出るようにもなる。工場で必要なエネルギーの90%は電力ですから、生産性を向上させればカーボンニュートラルやEP100にも寄与でき、あらゆる好循環が生まれます。そのためにはまず、経営者がマインドを改めることが先決です」 

会社概要
創立 1988年1月
設立 2015年7月
資本金 1,000万円
本社 東京都港区
事業内容 IoT・DXサービス開発事業、データ収集デバイス・センシングデバイス、レガシーシステム連携開発事業、ビッグデータ・AI活用プラットフォーム開発事業、DX寺子屋塾運営事業(ZOOM)など
https://www.cimx-initiative.com