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【化粧品業界】インバウンド売り上げ140億円が消えた化粧品産業が今やるべきこと ファンケル 堂下 亮

堂下亮・ファンケル

化粧品産業にとってインバウンド消費は追い風だった。コロナによる外国人観光客の受け入れ中止はどのような影響を及ぼしたのか。ファンケル化粧品事業本部、本部長の堂下亮氏に聞いた。聞き手=和田一樹(雑誌『経済界』2022年8月号より)

堂下亮・ファンケル
堂下 亮 ファンケル化粧品事業本部本部長
どうもと・まこと 1980年京都府生まれ。2003年立教大学経済学部卒業。同年ファンケル入社。化粧品事業の販売企画や新ブランドの立ち上げを担当。グループ会社のアテニア取締役を経て、22年1月より現職。

外国人観光客がいなくなり国内のメイク需要も減少

―― 化粧品はインバウンドの恩恵を強く受けていました。影響はいかがですか。

堂下 インバウンドが最も好調だった時は、当社の直営店舗における化粧品売り上げにおいて2割から3割を占めていました。2019年度に約140億円あったインバウンドの売り上げが20年度にはほぼゼロになり、業績への影響は大きかったです。

 また、コロナは国内の化粧品需要にも変化を起こしました。マスク着用によってメイクの機会が減少し、口元のメイク商品などカテゴリーによっては前年から8割ほど売り上げが減少したものもあります。

―― インバウンドに人気の化粧品は、高級品でしたか。

堂下 必ずしもそうではありません。化粧品全般を見れば、高価格帯の美容液などがよく売れていた他社ブランドもありますが、当社では2千円前後のクレンジングオイルや日焼け止めがよく売れていました。安心・安全な品質への支持が大きかったように思います。

―― リベンジ消費への期待はいかがですか。

堂下 一刻も早くコロナが落ち着くことを願っていますが、海外からの観光客が戻ってきても以前のように一人のお客さまが大量にお土産品を購入していく「爆買い」のような現象は少なくなるように思います。

 コロナ以前から、外国人観光客の消費がモノからコトへ変化していく気配はありました。加えて、中国では国内化粧品ブランドが人気になっていること、そしてECを通じて海外商品を購入しやすい環境が整っていることなどが要因です。

 国内の消費については、マスクの有無など生活動態に応じて化粧品需要は変化しますので、お客さまの生活を見極めることでリベンジ消費を喚起することは可能だと思っています。

 しかし、インバウンドがどれくらい戻るのか。リベンジ消費がどれくらい盛り上がるのか。これらは自分たちだけでどうにかできることではありません。消費が活性化した際に、お客さまに選んでいただけるように、市場や消費者ニーズの変化をとらえてブランド・商品に磨きをかけていくことが大切だと考えています。

 私が就職活動をしている時、ファンケルの企業説明会で目にした「変化を求めている人材ではなく、変化を起こせる人材を求む!」というメッセージに強く惹かれました。改めて存在意義を問い直し、変化を恐れずに多くの方に支持されるブランドを目指していきたいと思います。