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企業のIT推進支援ひと筋24年DXの老舗が新体制の第二創業へ アイ・ティ・イノベーション 林 衛

アイティイノベーション 林 衛

ITの力でイノベーションを起こすことを目的として1998年に設立されたアイ・ティ・イノベーション(ITI)。自動車メーカーや電力会社など大手企業を中心に、近年はDX(デジタルトランスフォーメーション)の戦略立案・支援ならびに人材育成支援などのコンサルティング業務を行っている。(雑誌『経済界』2022年9月号より)

アイティイノベーション 林 衛
アイティイノベーション 林 衛

独自の「IT哲学」で企業のDXをサポート

ITIの林衛代表は創業前、トッパン・フォームズの前身企業で大手企業のITシステム構築や理論実装などを手掛けていた。そして、90年代には欧米のIT企業で最先端の技術と方法論を学びながら、コンサルティングの実践力を積み上げてきた。

「設計理論を構築するために英米の技術書を翻訳し多くを学びました」。その経験が現在のITIの礎となっている。中でも重視してきたのが、林代表が「メソドロジー(方法論)」と呼ぶ「IT哲学」だ。

これまではイノベーションを支援するコンサルティング業のみで進んできた同社だが、2021年以降は第二創業といえる新たなフェーズへと舵を切った。

その第一歩として21年7月、大手総合商社・双日のグループ企業である日商エレクトロニクスと資本業務提携を締結。さらに翌8月にはシステム開発会社のエクセル・システムプロダクトをITIグループに迎え入れた。これにより、コンサルティング業務のみならずプロジェクト実現に向けて設計開発を行う企画力と、実証・実行する実現力を生み出せる体制を構築した。

「日商エレクトロニクスの強みであるインフラ系サービスやパッケージなど協業を図るとともに、双日グループとのシナジーを生み出すのが狙いです。当社が社名に『コンサルタント』と入れていないのは、設立当初から論理注入だけでなく実現してみせることが大事との想いがあったからです。今後は、クライアントの難易度の高い課題に対し、最後までお付き合いできる会社になります」

新たな体制では、いかに異なる企業同士のカルチャーを融合するかが課題だ。ここでも、これまで培った方法論を注入していくという。

「環境を変えてすり合わせると、プラスアルファの価値が生まれます。まったく異なるカルチャーをいかに融合し、エンゲージメントの高い組織にするか。そのカルチャーをもう一度、ITIの中に作っていきます」

もともと物理学科出身で、感情抜きの理論が元来好きな人間であったという林代表。しかし、経営や人生経験を経て哲学や情が大事だと考えるようになったという。

「第二創業の新体制づくりでも重視しているのが、エンゲージメントすなわち絆です。仕事や人の関係を通じて絆を深めていくのですが、人というのは本当に難しいですね。教育はもともと効率が悪いものですから、長い目で見ていきます。特にプロジェクトマネジメント教育は大事なポイントです」

エンゲージメントを核に新たなステージへ

ITIは設立以来、長年積み上げてきたノウハウの集大成として、ITの組織とプロジェクトを成功へと導くメソドロジー「Modus」シリーズをまとめ上げてきた。この全10巻からなる実践書には「IT構想企画」「要件定義/設計/構築」「プロジェクトマネジメント」「アーキテクチャ設計」などに関する概念、手順、方法、テクニックなどが詳細に記されている。

「本来、IT業界全体が教育システムみたいなものです。というのも、ITはソフトウエアですから物質として存在せず、目に見えません。皆で目に見えないものを創造するので、教育はとても大事になります」

同社が手掛ける人材教育の特長は、人を中心に考える点にある。特に、人のメンタルモデル、マインドの上に理論を構築することを最重要視しているのだ。

「日本ではテクニック面のみの教育がほとんどです。しかし私たちの考えでは、それに加えて絆のようなものが形成されないとお互いに良い仕事はできないと考えています。ITビジネスは使命や筋の通った考え、ストーリーに沿って開発やプロジェクトが進んでいきます。その際に人が人に方法を教え、それが再現性を持つ。その意味で教育はとても大事なのです」

これらの設計理論、そして「Modus」シリーズは、現場のコンサルティング業務で活用されるとともに、教育支援現場での教科書にもなっている。教育事業そのものの売り上げは全体の10%ほどと決して割合は大きくないが、柱の事業に位置づけられているという。教育こそが同社の基礎を形作っているからだ。

さらに、こうしたノウハウの蓄積の活用にとどまらず、AIやディープラーニングなど先端技術への対応にも貪欲だ。

「今までにない価値構造を持った新しいものに対しては、積み上げたメソッドに加えて想像力が必要な時代が来ています。DXの本質とはITの徹底活用ですから、まだまだ私たちが活躍できるフィールドは広がるはずです。そこで最も重要になるのが、本物の絆への挑戦です」

今後は「よりグローバルに展開していきたい」という林代表。最終的に目指す「IT業界の下請け構造を是正する業界再編」の実現に向けた取り組みを加速していく。 

会社概要
設立 1998年7月
資本金 1億円
売上高 10億3,000万円
18億9,300万円(グループ)
本社 東京都港区
従業員数 51人
事業内容 DX戦略、DX実現に関わるあらゆる業務の支援、人材育成を行うコンサルティング事業
https://www.it-innovation.co.jp