北海道経済は、全国にも増して厳しい状況に置かれている。基幹産業である農林水産業や観光産業はコロナ禍の長期化で疲弊、それに加えて諸物価の高騰が道民の生活を苦しめている。北海道では2022年7月、全庁を横断する「経済対策推進本部」を設置、事業者の事業継続と生活困窮者支援に全力で取り組んでいる。(雑誌『経済界』「新時代を切り拓く北海道特集」2023年2月号より)
北海道独自の「緊急経済対策」を取りまとめ道民や事業者を支援
本道経済は、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化に加え、国際情勢の変化などにより、エネルギーや原材料等の価格や供給の動向が見通せず、円安基調と相まって、事業者の方々の経営や道民の皆さまの暮らしを取り巻く環境は大変厳しいものとなっています。
道が四半期毎に実施している道内の企業経営者の方々を対象としたアンケート調査でも、原油・原材料価格の高騰が経営に与える影響について、「影響がある」と回答した企業の割合が、2022年7-9月期で94・9%となるなど、高い水準となっています。
また、総務省が公表した8月の消費者物価指数において、道内の状況は、天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が、21年7月以降14カ月連続で前年同月を上回り、物価上昇が長期間続いています。
道では、事業者の方々が将来に希望を持って事業継続に取り組んでいただくことが何よりも重要であると考えており、22年7月に、国の総合緊急対策の趣旨も踏まえ、エネルギーや原材料、食料等の安定供給対策や中小企業等の事業継続への支援などを盛り込んだ「コロナ禍における価格高騰等緊急経済対策」を取りまとめ、その後も、影響緩和に向け必要な検討を進めながら、追加の対策を講じるとともに、その効果を十分に引き出すため、多くの方々に支援内容を活用していただくことを目的に「コロナ禍における価格高騰等緊急経済対策ガイドブック」を作成し、道民や事業者、関係団体などに広く周知しているところです。
こうした中、緊急経済対策の迅速な実施はもとより、将来にわたって道民の皆さまが安心して暮らし続け、事業者の方々の成長につながる取り組みを効果的に支援していくために、同月、全庁的な推進体制として「北海道経済対策推進本部」を設置するとともに、各(総合)振興局と東京事務所に「地方推進本部」を設置し、不安を抱える道民の皆さま、そして厳しい経営環境にある事業者の方々の生活や経営の安定を図り、社会経済活動の回復を確かなものにするため全力で取り組んでいるところです。
事業者のチャレンジやスタートアップを支援
先行きが見通せないこの難局を乗り切るため22年9月には、ウィズコロナ下での総合的な取り組みを「経済対策等に関する『当面の展開方向』」として、次の4つの柱立てで取りまとめました。
1つ目の柱の「需要喚起を含む事業者の足下対策」では、原油・原材料価格の高騰などを踏まえ、①安定供給対策、②厳しい経営環境にある中小企業者や生産者などの事業継続支援、③需要喚起・地産地消等による社会経済活動の活性化に取り組むこととしており、製造業者の省エネ設備の導入をはじめとした省エネの取組支援や、中小企業への資金供給の円滑化や返済条件変更への柔軟な対応の要請などの金融支援、プレミアム付商品券や旅行商品割引支援策といった需要喚起などを進めていきます。
2つ目の柱の「中長期を見据えた中小企業者や生産者の競争力強化」では、カーボンニュートラルやデジタル化等の社会経済情勢の変化などを踏まえ、①今後の成長につながる新たな取り組みにチャレンジする事業者の後押し、②北海道ブランドのさらなる磨き上げと戦略的なプロモーションに取り組むこととしており、高付加価値商品への転換や生産方法高度化などの原材料コスト抑制への取り組み支援や、インキュベーション施設の入居や産学官共同研究、創業、製品開発などへの補助、外国人の起業活動を促進するためのビザ制度の運用などのスタートアップ支援、30年度運転開始を目指した本道と本州を結ぶ海底送電ケーブルに加え、光海底通信ケーブルやデータセンターなど、北海道全体の価値を押し上げる次世代インフラの整備や誘致に向けた取り組みの促進のほか、米国やアジア諸国など海外市場、ECなど国内の新たな成長市場の開拓や販路拡大、アドベンチャートラベルといった新しい旅行スタイルの推進などを進めていきます。
就業支援や転職支援を強化し人材不足に対応
3つ目の柱の「地域経済を支える人材の育成・確保」では、道内労働力人口の減少などを踏まえ、①産業人材の育成・確保、②多様な働き手の就業支援と就業環境の整備に取り組むこととしており、食や観光、一次産業など地域経済のニーズに対応した人材を育成するための研修や、東京圏からのUIJターンによる新規就業促進、介護や建設など人手不足業種への異業種からの転職支援のほか、若年者や女性、中高年齢者、業界未経験求職者といった多様な働き手の就業支援や職場定着の促進などを進めていきます。
4つ目の柱の「物価高騰等に直面する生活困窮者等への支援」では、物価高騰等に直面し、経済的に大きな影響を受けている実態などを踏まえ、①生活困窮者等の生活支援、②保護者等の負担軽減に取り組むこととしており、市町村が実施する低所得の高齢者および障がい者世帯への給付に対する支援や低所得の子育て世帯に対して道独自の臨時給付金を支給するほか、高騰する学校、保育所等の給食原材料費等の経費支援などを進めていきます。
道としては、この「当面の展開方向」の下、市町村や関係機関とも連携し、施策の効果的・効率的な執行に努めるとともに、引き続き、「北海道経済対策推進本部」を推進役として、国の追加対策や地方推進本部を通じて把握した地域ごとの経済状況や支援ニーズなどの情報共有を図りながら、道民の皆さまの暮らしの安心と本道経済の活性化に向けた取り組みを積極的に推進してまいります。