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ファインバブルが生み出す領域を超えた新たな価値 サイエンスホールディングス 青山恭明

サイエンスホールディングス 会長 青山恭明

微細な気泡のファインバブルを発生させるシャワーヘッド「ミラブル」やウォータシステムを手掛けるサイエンスホールディングス。未来を見つめる青山会長は、住宅設備の展開にとどまらず、企業との共同開発や産学連携による価値創造に積極的に乗り出している。(雑誌『経済界』「関西経済! 次の一手!特集」2023年3月号より)

青山恭明・サイエンスホールディングス会長 

サイエンスホールディングス 会長 青山恭明
サイエンスホールディングス 会長 青山恭明

サイエンスが世界に広げるファインバブルの技術

 毛穴より小さな気泡を発生させる入浴装置「マイクロバブルトルネード」、その仕組みをシャワーヘッドに組み込んだ「ミラブル」など、サイエンスによって一般市場に認知され始めたファインバブルの技術。

 ファインバブルが汚れを落としつつ、肌にやさしく、水流によっては体温を高める効果も期待できることから、「ミラブル」は発売から4年たった今でも人気となっている。もともと微細な気泡は半導体などの洗浄に使われており、そこから発想を得て開発された製品だ。

 ファインバブルに関する国際標準規格には、ファインバブルの定義を含む多くの項目で日本からの提案が採用されている。一般社団法人ファインバブル産業会(FBIA)も、その中心的立場で積極的な提案を行ってきた。これに関しては、日本発の規模提案が世界にインパクトを与えていく可能性は十分にある。

 ファインバブルとは、100マイクロメートル未満の微細気泡を総称したものだ。超微細な1マイクロメートル未満の気泡は「ウルトラファインバブル」、1~100マイクロメートル未満は「マイクロバブル」と定められている。ファインバブルの最も注目されている機能が洗浄力だ。微細な気泡によって汚れなどを取り除くことができる。肌に書いた油性ペンを洗い流す「ミラブル」のTVCMは、多くの視聴者に衝撃を与えた。

飲食店での導入に手応え、SDGsの達成に前進

 ファインバブルの技術を多方面に広げて活用するべく、サイエンスが力を入れて取り組んでいるのが外食産業への導入だ。

 バーやパブ、レストランなど約50ブランドを展開するダイナックホールディングスと共に、厨房での水洗器具を共同開発。食器洗浄に使用する「ミラブルプロダイナーシンク」と、厨房の床清掃に使用する「ミラブルプロダイナーデッキ」だ。洗浄力を高めつつ、節水に貢献し、従業員の作業の軽減など効率化を図っている。

 約半年間の試験導入段階では、1水栓当たり1カ月で50%以上の節水につながり、年間換算で10万円弱のコスト削減効果が出たという。従業員アンケートでは、68%が「洗浄スピードが速くなった」「効率が良くなった」と回答、また71%が「洗剤の使用量が減った」と回答した。このほか「什器に輝きが出た」「油のぬめりが以前より短時間で洗浄できた」などの意見も出た。取り付けに特別な工事は必要なく、簡単に作業が完了する手軽さも売りだ。

 ダイナックは環境保全の観点からSDGsの目標達成に注力しており、サイエンスとの共同開発に至った。200店舗に及ぶダイナックホールディングスの飲食店全店に導入が決まっている。同製品は2023年に全国展開を開始する予定だ。

 ファインバブルの技術は、人々の生活や健康、産業など、広い分野での貢献が期待できる。サイエンスはこうした活動のほか、医療、介護などさまざま領域で技術協力や共同開発を進め、研究を意欲的に行っている。

 農業分野では、大阪公立大学と連携し、ファインバブルを発生させる試験を実施。これはファインバブルの「生理活性作用」を利用したもの。レタスの水耕栽培に組み込むことで、収穫量は約2倍に増えたケースもある。

新たな価値創造に拍車、大阪・関西万博から未来へ

 ファインバブルの技術を用いた開発が活性化する中、青山会長が特に思いを強め、力を入れている製品がある。ファインバブルを浴槽に発生させ、湯船に浸かるだけで体を洗浄する「人間洗濯機」だ。見据えるのは、25年大阪・関西万博でのお披露目だ。青山会長は、一般社団法人2025年日本国際博覧会大阪パビリオン理事も務める。

 構想の原点は1970年に開催された大阪万博に遡る。当時小学4年生だった青山会長は、三洋電機(現・パナソニックホールディングス)のパビリオンで見た「ウルトラソニックバス」に衝撃を受け、目を輝かせた。

 当時と異なるのは洗浄力だ。水中で発生させる通常の大きな気泡は、発生と同時に水上に浮上する。ファインバブルは気泡が小さく、水中で毛穴に入り込んで汚れを浮力で浮かせて落とす。

 今回製造する新しい製品では、ファインバブルの機能に加えて、大阪大学と共同開発中の人身の状態を測る機能や、映像・音響によるリラックス効果を高める機能の搭載も予定している。

 50年の年月を経て、少年の夢は想像を超える進化形で実現しようとしている。「万博を通して世界に、そして子どもたちに感動を与えたい」と語る青山会長。次世代を担う子どもたちの目にどう映るのか。サイエンスの挑戦はさらなる未来に受け継がれていく。 

会社概要
設 立●2007年8月
資本金●3,000万円
売上高●71億9,000万円
本 社●大阪市淀川区
事業内容●ファインバブル製品の製造・販売およびメンテナンス、セントラル型浄水装置の製造・販売およびメンテナンス
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