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競合相手は2,800社以上 選ばれる理由はブランド力 中村 悟 M&Aキャピタルパートナーズ

M&A 中村悟 M&Aキャピタルパートナーズ

2005年の会社設立以来、急速に企業規模を拡大してきたM&Aキャピタルパートナーズ(MACP)。同社が力を注いでいるのが、ブランド力の強化だ。同業他社に先駆け、積極的にテレビCMを展開しているのもそのためで、「ライオン社長」で認知度は大きく向上した。ブランド力が業績とどう結びつくのか。中村悟社長に聞いた。聞き手=関 慎夫 Photo=川本聖哉(雑誌『経済界』2023年4月号より)

中村 悟・M&Aキャピタルパートナーズ社長のプロフィール

M&A 中村悟 M&Aキャピタルパートナーズ
中村 悟 M&Aキャピタルパートナーズ社長
なかむら・さとる 1973年福岡県生まれ。95年工学院大学工学部を卒業後、積水ハウス入社、設計業務を経て、資産家を対象とした相続対策、資産運用の営業業務に約8年従事。2005年中堅・中小企業の後継者問題の解決と発展的事業承継実現のためM&Aキャピタルパートナーズを設立。同社は13年11月に東証マザーズに上場、14年東証一部に指定替えし、現在は東証プライム市場。

手数料1億円以上の大型案件増加の理由

―― 前9月期決算は売上高が前々期比36・6%増、最終利益が同57・6%増と大幅な増収増益となりました。コロナ初年度の2020年9月期には減収減益を余儀なくされましたが、ここにきて完全復活したと見ていいですか。

中村 22年はM&A件数が過去最高を更新、事業承継のM&A件数も過去最高となりました。マーケットの好調が業績を下支えしている要因の1つと言えます。また、私たちが大切にしているお客さまとのコミュニケーションについても行動制限で思うように面談ができなかったコロナ禍初期に比べ、現在ではオンラインミーティングによる打ち合わせが増えたことが、ご相談や成約件数の増加につながっています。

 さらにMACPが得意とする大型案件の増加がこの3年間で2倍以上となっていることも業績につながっています。

―― おっしゃるように手数料収入が1億円以上の大型案件が増えています。これはM&A仲介会社の中で、MACPの大きな特徴です。なぜMACPは大型案件が取れるのか、その理由を教えてください。

中村 ビジネスモデルの違いだと思います。一般的なM&A仲介会社は、売り手企業を金融機関などの提携先から紹介されて買い手を探すケースが多いのですが、大型案件だった場合、提携先自ら仲介を行うため、紹介されるのは小さいサイズの案件になってしまうことが多いです。また、売り手企業の紹介手数料を提携先に支払う必要があるため、その分最終的に受け取る手数料収入も少なくなってしまいます。

 一方、MACPでは売り手企業を自社で探すため、提携先に紹介手数料を支払う必要がなく、大型案件を扱うことができます。また創業以来、培ってきたブランドも大型案件が増えている理由だと思います。

―― MACPといえば、ライオン社長のテレビCMが有名です。最近では他社も追随しています。テレビCMを始めた狙いとその効果を教えてください。

中村 M&A仲介において、一番重要なのがブランド力だと思っており、テレビCMの狙いはこのブランド力の強化です。

 創業期はブランド力がなく、かなり苦労しました。社員はみな一生懸命働いていましたが、知名度がないため、なかなかお客さまから信用してもらえないのが実情でした。その転機となったのが13年の東証マザーズ上場です。上場によるブランド力向上で、お客さまから信用していただけるようになり、そこからコンサルタント1人当たりの生産性が一気に上がっていきました。

 現在、マーケットの拡大もあり、中小企業庁に登録しているM&A支援機関の数は約2800件以上にも及びます。この業界環境の中、お客さまから信頼を得て大切な会社の将来に関わる交渉を任せていただくために、今後ブランド力の重要性はさらに高まると思っています。

 18年のテレビCM開始以来、一貫して「ライオン社長」を起用してきました。MACPの代名詞となった「ライオン社長」起用の理由は、会社の未来に悩まれる社長の姿や社員を率いながら重大な決断に独りで立ち向かう社長の姿などを表現するのに一番合っているのが「百獣の王=ライオン」と考えたからです。

 現在、MACPはこの「ライオン社長」のCMのおかげもあり、M&A仲介業界における認知度で圧倒的1位を獲得しています(東京商工リサーチ調べ)。この認知度や法令順守イメージをはじめ、業界主要5部門において1位を獲得するなど、ブランド力は高まっています。今後もさらに磨き続けていきたいと思っています。

ミッドタウンへの移転もブランド力向上のため

―― 直近では、オープンしたばかりの東京駅前の東京ミッドタウン八重洲にオフィスを移転しました。これもブランド戦略の一環なのでしょうか。移転からまだ時間はそれほどたってはいませんが、何か変化はあったでしょうか。

中村 本拠地となるオフィスは、ブランド力構築のため非常に重要となります。今回MACPではグループの成長戦略のため、22年の年末にMACPが東京ミッドタウン八重洲、グループ会社のみらいエフピーがグラントウキョウサウスタワーに移転。23年3月には、レコフがグラントウキョウノースタワーに移転を予定しており、東京駅周辺に事業基盤を結集することで各社の強みを最大限生かし、新たなチャレンジの創出を期待することができます。

 まだ移転したばかりですので目に見える変化はこれからとなりますが、MACPグループはあらゆるクライアントに最適なM&Aを提供することができる国内最高峰のM&Aプロフェッショナルグループとして、グループ全体のブランド力を向上させていきたいと思っています。

―― 高い成長率を示しているMACPですが、さらなる成長に向けて克服しなければならない課題があるとしたら何でしょうか。そのためにどのような対策を立て実行に移していますか。そのうえでどのような将来像を目指していますか。

中村 優秀な人材の確保が今後の成長に重要だと思っています。今回の本社移転もさらに多くの優秀なコンサルタントを採用するための戦略の1つです。

 M&A仲介は、コンサルタントのマンパワーに頼るところが非常に大きい業界です。先ほども言ったように約2800件もM&A支援機関があり、そのために優秀な人材は取り合いになっています。その中で人材を確保するにはブランド力が重要になってきます。当社は業界内でも高いブランド力を持っているため、最近では他社に競り負けることがほとんどなくなりました。現在、コンサルタントの能力を示す、コンサルタント1人当たり売上高・経常利益も業界1位となっていますが、優秀なコンサルタントをさらに獲得し、当面の目標である売上高でも業界1位を獲り、海外にも展開していきたいと思っています。