経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

アフターコロナの見通しは 岩口敏史 レコフ

M&A 岩口敏史 レコフ

岩口敏史・レコフ社長のプロフィール

M&A 岩口敏史 レコフ
岩口敏史 レコフ代表取締役
いわぐち・さとし 1986年東京大学理学部卒。ミシガン大学経営学修士。山一證券、ボストン コンサルティング グループを経て98年レコフ入社。2020年代表取締役専務に就任。

聞き手=関 慎夫 Photo=横溝 敦(雑誌『経済界』2023年4月号より)

事業承継は続伸、大型案件は横ばい

 日本のM&A件数は、基本的に増え続けています。ただし金額ベースでは減少しています。上場企業が関連する大型のM&Aが減っているからです。件数が増えている理由は、事業承継とベンチャー投資が活況だからです。

 事業承継に関しては、2000年代に入りマーケットが本格的に立ち上がり、そこからは右肩上がりです。後継者のいない中小企業127万社という潜在需要があるので、これはさらに伸びていく。

 ベンチャー投資も増えていきます。10年後、世の中がどうなっているかは誰にも分からない。その中で企業を存続させていくには、面白そうなシーズを取り込んでいけるかどうかにかかっています。そこで企業はCVC(企業内ベンチャーキャピタル)を立ち上げ、ベンチャー投資を行っています。この動きは今後も続きます。

 大型案件は減少していますが日本企業による海外企業の買収、いわゆるイン-アウトは、今後は増えると見ています。海外買収はコロナ禍の影響で、交渉過程での人的な往来も難しく、案件への取組姿勢が慎重になっていたところはありますが、日常はほぼ戻りました。成長戦略をもう一度立て直す中で、イン-アウトのM&Aが再開されることになるでしょう。内部留保は高止まりし、その使い道も考えなければならないことも理由のひとつです。

 ですから、事業承継やベンチャー投資は今後も増え、イン-アウトなどのクロスボーダー大型案件も増加していくと見ています。

 日本のM&A市場を見るうえで、忘れてはならないのは、M&Aのスキルは着実に上がっていることです。買い手企業はこれまでの経験が積み上がっている。そのためM&Aの成功確率は以前よりも高くなっていると思います。ディール自体の成約確率だけでなく、合併・買収後の統合作業(PMI)自体のスキルも上がっています。

 仲介会社、FA(ファイナンシャルアドバイイザー)、PMIへの助言をするコンサルティング会社など、M&Aをサポートする会社の能力も高くなっています。仲介会社を例にとれば、1990年代まではレコフと日本M&Aセンターの2社程度。2000年代に入り市場が本格化すると一気に参入業者が増えていきます。市場拡大していく中で切磋琢磨しながらスキルを磨いていきました。

 買い手としてプラベートエクイティファンドが増えてきたことも大きい。彼らは企業買収のプロフェッショナルであり、PMIによって買収効果を最大限に上げ、場合によっては事業の一部を売却したり、買収をしたり、経営のプロを企業に送り込むなどして、企業価値を上げたうえでイグジットに持っていく。

 M&Aを行う事業会社も経験を積んできました。M&Aを活用して成長を遂げている企業は、M&Aは継続してやり続けていくものという認識を持っています。そのような認識を持っている企業は、M&Aを繰り返すごとに自社のスキルを上げていくという意識が明確です。

 このようなM&Aスキルの向上が加わったことで、M&Aを活用した成長事例が増加して、日本のM&A市場はさらに活性化されるのではないでしょうか。(談)