経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

総合的なBPOパートナーとしてデジタル社会を支えるインフラに 丸山英毅 TMJ

丸山英毅 TMJ

コールセンター・バックオフィス(事務処理センター)の構築・運営を行うTMJ。金融から通信、製造、公共など幅広い業種、業態で約300社のクライアントの事業を支えている。2017年にはセコムグループの100%子会社となり、より強固で安全性の高いグループネットワークを構築している。文=榎本正義(雑誌『経済界』2023年7月号より)

丸山英毅・TMJ社長のプロフィール

丸山英毅 TMJ
丸山英毅 TMJ社長
まるやま・ひでき 1968年神奈川県生まれ。千葉大学教育学部卒業。92年2月福武書店(現ベネッセコーポレーション)入社。2000年2月テレマーケティングジャパン(現TMJ)入社、本部長、副社長などを経て、15年4月から社長。

業界トップ5内の大手から新興企業まで幅広い顧客層

TMJ
TMJ

 TMJのルーツは、1975年に福武書店(現ベネッセコーポレーション)のインハウスコールセンターとしてオペレーションを開始したところから。92年に福武書店「進研ゼミ」の顧客サービス&マーケティング部門を分社化し、テレマーケティングジャパンとして設立された。2012年社名をTMJに変更し、17年にセコム100%子会社となり、セコムグループ入りをしている。

 当初から、繁閑差の大きい業務で生産性を高め続けてきたダイレクトマーケティングセンターの運営能力があった。その後、分社と同時に一般法人への営業を開始したところ、世界にも例のない継続型の会員制事業を運営している実績と、それを支えるコンタクトセンター管理技術が、当時ダイレクトマーケティングで日本に進出を始めた外資系企業や、高い水準の品質管理を期待する国内の金融機関などから高く評価され、順調に業績を伸ばしてきた。

 現在の取引先は、保険、証券、銀行、通信キャリア、インターネットサービスプロバイダー、自動車、住宅関連など、各業界で売り上げトップ5に入る大手企業から、市場参入を目指す新興企業まで、さまざまな業種の企業・団体から多様な業務を受託し、幅広く問題解決している。売上高は今や500億円を超える規模となった。これを率いるのが、TMJ初のプロパー社員から15年に社長に就任した丸山英毅氏だ。

 「クライアント企業の顧客対応を行っており、コールセンターや事務を、企業や官公庁、自治体などから受託しています。電話でいろいろな問い合わせや注文をいただいたり、こちらから電話を掛けて入会を促進、あるいは商品を購入していただくセールス、さらに経理処理、伝票処理や給与処理の代行なども行っています。プロセス全体を理解した上で、運用フローを可視化したり、業務量を調査し、最適化するといったことを行っています」と丸山氏。

 続けて、「最近話題のAIを活用した顧客対応も、それだけでは顧客満足度を高めることは難しいと思います。どうしても『お客さまに寄り添う』というアプローチが必要になってくる。人にしかできない領域と組み合わせて付加価値を高めていくことが大切です。技術・人・システムの融合が付加価値を創り出すと思っており、クライアント企業のビジネスと、さらにその先の顧客満足度、経験価値を向上させる取り組みをしています」

TQC活動による品質向上と“人に寄り添う”高齢者対応

TMJ_2
TMJ

 丸山氏は、学生時代にはアメフト部に在籍し、教員採用試験に合格したものの、外部から教育の在り方を変えていきたいと考え、福武書店に入社。その後、00年にTMJに転じ、営業統括本部本部長、取締役副社長などを歴任後、社長に就任した。その前後には、リーダーとしての生き方・考え方、その背景にある人としての価値観・哲学を自らに問い続ける「全人格教育プログラム」を修了し、経営者としての土台を形成し、自ら考える組織風土醸成や心理的安全性のある職場づくりに尽力してきた。

 「製造業では70年以上前から行われているQC活動を、当社のBPO事業に合う形にして、06年から現場発のTQC活動として取り組んでいます。また、東京大学が行っている産学連携ネットワーク「ジェロントロジー」プロジェクトに、12年前から参画しています。加齢による聞こえづらさに対して、高齢者対応のトレーニングメニューを作ったり、高齢者難聴に対応するアプリを開発し、それを実際に当社のオペレーターに聞かせて、あなたが応対している高齢者は、このように聞こえているということを体感させてオペレーションに生かしています。例えば、高齢者はカ行、サ行、タ行、パ行などが聞こえづらいので、『発送日』は『お送りした日』に、『解約』は『お止めさせていただく』といったように、通常使っている言葉を言い換えています。そうすることで、顧客のストレス低減と同時に、応対時間の短縮にもつながっています」

 TMJが大切にしているのは、「理解力(エンドユーザーとクライアントへの深い理解)」「設計力(最適な運用設計とテクノロジー活用、改善し続ける文化)」「総合力(“ALL SECOM”によるサポート)」「人材力(人を中心ととらえた育成メソッド)」の4つの価値だ。ビジネスデザインパートナーとして、クライアント事業の理解力を背景に、最適な業務プロセスやタッチポイントをデザインし、日々の業務から将来を見据えた提案まで、“頼れるパートナー”であることを目指しているという。

 「これからの社会を考えると、デジタルと共生する社会の実現ということが成長戦略の重要なキーワードになるでしょう。これまではクライアント企業のマーケティング戦略に則って顧客対応を設計していました。それも大切ですが、膨大な顧客のニーズに日々対応しているので、その良き理解者としての立場もあると思っています。そこで消費者起点で私たちが考える未来像を描き、クライアント企業の一歩先を照らすことができるようにサービス展開していきたい」と丸山氏は先を見据える。

 BPO業界は今後もゆるやかに成長していくと見込まれる一方、今後寡占化が加速していくと予想されている。BPOビジネスは調達力や業務処理力などで規模のメリットが発揮しやすい業界のため、TMJでは今後も規模の拡大を念頭に業界シェアを上げていく方針という。労働人口の縮小、働き方の変化などから、企業が業務の外出しをしていく流れは今後も加速していくはずで、ニーズに即したサービス提供体制と、自動化・AI活用など技術によるオペレーター業務の効率化、人ならではの細やかさを発揮したBPOを展開していくとのことだ。BPOを中核としつつ、新規事業の開発も積極的に進め、将来的には社会の困りごとを広く解消する「デジタル社会を支えるインフラ企業」を目標に事業展開しているTMJ。初の生え抜き社長・丸山氏の手腕に期待大だ。