経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

Web3のテクノロジーを生かした次世代型採用プラットフォーム「Desume」に懸ける想い 吉田将人 プロタゴニスト

吉田将人 プロタゴニスト

【経済界GoldenPitch2022審査員特別賞受賞】

インターネットは中央集権型のWeb2から非中央集権型のWeb3の時代へ――。ブロックチェーンの技術を活用した次世代のHR支援サービスとして、Web3特化型の採用プラットフォーム「Desume」を提供するプロタゴニスト。「ブロックチェーン採用のナンバーワン企業を目指す」と語る吉田将人代表の事業に懸ける想いとは。文=大澤義幸(雑誌『経済界』2023年7月号より)

吉田将人・プロタゴニスト代表取締役のプロフィール

吉田将人 プロタゴニスト
吉田将人 プロタゴニスト代表取締役
よしだ・まさと 1993年生まれ。立教新座高校、立教大学異文化コミュニケーション学部卒業。在宅主婦を活用した人材系・組織コンサルティング会社を経て、2018年よりシード特化独立系VCに参画。20年3月に独立し、「好きを価値に出来る社会へ」というミッションを掲げてプロタゴニスト創業。経済界GoldenPitch2022審査員特別賞受賞

Web3の特徴を生かしたHR支援サービスで起業

 「ヒト・モノ・カネの中で、僕たちが最初にお手伝いできると思ったのがヒト。新しいことや好きなことにチャレンジしている起業家や経営者を見るとワクワクします。そうした真面目に頑張る人たちを応援するために、2020年に創業したのがプロタゴニスト。『好きを価値に出来る社会へ』をミッションに掲げ、Web3のテクノロジーを使って新しい働き方の仕組みを世の中に提供する会社です」

 そう話す代表取締役の吉田将人氏は、コンサル会社やベンチャーキャピタルで多くの企業支援を行ってきた。Web3事業での起業を思い立ったのは、※GameFiを手掛けるシンガポールの企業でHRの仕事に関わっていた頃だ。

 「Web3がもたらす変化として、データ管理の主体はプラットフォームから個人に、決済は国や事業者を通さず個人間で可能に、サービス提供も事業者主体ではなく個人と共に創る、といったものがあります。組織もDAOなど新しい形態が出てきました。Web2のインターネットの可能性をさらに拡大するのがWeb3です」

 昨年は日本政府や経団連から「日本をWeb3先進国に」という声が上がり、大企業だけでなく中小企業も新規事業スタートに向けた環境整備や専門人材の採用に力を注いでいる。とはいえ、Web3が意味するのは、GameFi 、DAOのほか、分散型ID、Token、DeFi、NFTなどさまざまだ。

 その中で吉田氏が目を付けたのが、「ブロックチェーンの技術を活用することで、個人の行動の履歴や実績を見える化できる」という特徴。これをHRの軸でサービスに落とし込んだのが「Desume」だ。

「Desume」と両輪で「Plus Web3」を提供

図版プロタゴニスト
図版プロタゴニスト

 「Desume」は、Web3に特化したハイスキル人材と、そうした人材を求める企業とを結ぶ次世代型の採用プラットフォームだ。

 Web3業界で働きたい人(ユーザー)はオンチェーンデータから信用スコアを自動作成するポートフォリオ機能や、実績証明NFT「Job POAP」を使い、Web3の実績をウェブ上に登録できる。企業はその登録データを検索し、他媒体では探しづらい、自社が求める分野のWeb3事業にマッチする人材を採用できる仕様となっている。

 22年のローンチ直後は、ユーザーと企業との採用マッチングを進めつつ、サービスの利用拡大に努めてきた。しかし、「日本ではWeb3の浸透が遅く、ウォレットアドレスを保有するユーザーを増やすのは限界があった」と振り返る。

 その後も企業にヒアリングを重ね、「企業が雇用したいのは、『Web3に興味のある未経験者』ではなく、IT企業でWeb2の新規事業を立ち上げた経験があるなど、『Web3に興味のある、Web2の実績のある優秀な人』だと分かりました。そこでWeb3のハイスキル人材をWeb3企業とマッチングさせる形に事業をシフトしました。この Web3業界で活躍する人を増やすために始めたのが、『Plus Web3』です」。

 「Plus Web3」は、Web2の実績のある人にWeb3のノウハウや知識を提供し、キャリア育成を支援するサービス。Web3業界を志望する人のキャリア相談対応、リサーチメディア運営を通したWeb3企業のビジネス情報発信、リスキリングプログラムなどを供与する。

 「キャリア相談で多いのが、『Web2のエンジニアを10年経験してきたが、Web3未経験の私に価値があるのか』という不安の声です。でも実はそういう人こそ企業は採用したい。リサーチメディアでWeb3に敏感な人材を取り込み、リスキリングで『あなたのキャリアはWeb3のこの領域で、こういう発展性がある』と伝えています」

 Desumeという箱、Plus Web3というコンシェルジュの両輪を回しながら、まずは登録ユーザー数1万人を目指す。その上で、「Web3の橋渡し役からグローバルスタンダードへ、さらにブロックチェーン採用が一般化する頃には同分野のナンバーワン企業になっていたい。目標はIPO、そして時価総額500億円企業です」と夢を語る。

 この実現に向けて、中途採用に加え、組織人事、バックオフィスにも事業領域を広げていく方針だ。

「好きを価値に」に込めた想い誰かの成功を全力で願う

 同社は東京都が開設した東京コンテンツインキュベーションセンター(東京都中野区)にオフィスを構え、同様の環境にある起業家たちと切磋琢磨している。吉田氏はミッション「好きを価値に出来る社会へ」に込めた想いをこう語る。

 「以前勤めていた会社では、毎晩深夜まで働いて就業時間外もハードワークをしていましたが、それでも『楽しかった』。それはなぜだろうと考えた時に、僕は仕事を通して誰かに喜んでもらうこと、それを価値として還元することが好きだと気づいたんです。その瞬間から僕自身の働き方への認識が変わりました。プロタゴニストのサービスを頑張る人たちに使ってもらい、それで成功してほしい」

 吉田氏自身が時代を切り拓くチャレンジャーとして自社の成功を目指しながら、その根本の原動力となっているのはあくまでも他者の成功、一人一人の喜びなのだ。

※GameFi:「Game(ゲーム)」+「Finance(ファイナンス)」の造語。ブロックチェーンの技術を使ったゲームのこと。