経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

過去の辰年の株式相場は大納会に向けて「昇り龍」

(雑誌『経済界』2024年2月号巻頭特集「日本の針路」より)

過去の辰年の株価
過去の辰年の株価

 2024年の干支は「甲辰」。

 「甲」は十干の最初に出てくるため、生命や物事の始まりや成長を意味する。また甲は甲冑に通ずることから、種子が厚い皮に守られている状態を示している。つまり、厚い殻を破り、成長を始めるという意味になる。

 「辰」は振るうに通じる。すべてが振動し成長するさまを表す。また辰は龍に通じ、古来、権力や富、幸運をイメージさせる。

 つまり甲も辰もいずれも成長を意味している。その意味では甲辰は、縁起のいい年と言えるだろう。

 120年前の甲辰、1904年は明治37年。この年勃発したのが日露戦争で、12月には203高地を占領した。翌年には日本海海戦でロシアのバルチック艦隊を撃破、日本は大国ロシアを破り、列強の一角に加わった。

 そして前回の甲辰は64年。言うまでもなく最初の東京オリンピックが開かれた年だ。首都高や東海道新幹線が開通、日本の近代化が一気に進んだ。日本が敗戦から立ち直り、経済大国として世界に名乗りを上げた年であり、まさに甲辰を体現したと言えるだろう。

 ただし、この年の株価はぱっとしなかった。株式市場の新年最初の取引である大発会での株価は1204円。7月には1369円にまで伸ばすがその後失速、10月には年初来最安値となる1202円をつけた。それでもその後、値を戻し、大納会では1216円と大発会よりは若干伸ばして1年の取引を終えた。

 とはいえ株価のサンプルがひとつしかないのは心許ないので、1952年以降の辰年のデータから、2024年の株価の傾向を見ていこう。

 ちなみに各年の出来事を簡単に列挙すると、1952年は日本がIMFに加盟した年。まだテレビ放送は始まっておらず、この年のラジオドラマ『君の名は』が大人気となり、放送時間は銭湯の女湯がガラガラになったというのはあまりに有名だ。

 76年はロッキード事件の年。7月には「今太閤」と呼ばれた田中角栄元首相が逮捕された。6月には伝説の猪木VSアリ戦があり、10月には最初のF1日本グランプリが開催された。

 88年はバブルが勢いを増す中、リクルート事件が発覚。政財官界で多くの逮捕者を出した。東京ドームがオープンしたのもこの年だ。

 2000年は現職総理の小渕恵三首相が脳梗塞に倒れ、その後亡くなった。またみずほフィナンシャルグループが発足、金融再編が加速していった。

 そして12年は12月に総選挙が行われて自民が大勝、安倍晋三氏が首相に返り咲いた。

 それぞれの年の大発会と大納会の株価は表の通り。見ての通り、00年以外のすべてで株価が上がっている。特筆すべきは、多くの年で大納会に向けて株価がうなぎ上りに大きく上がっていることだ。

 1976年、88年、2012年の最高値は大納会の日に記録している。52年にしても最高値は大納会の1日前だ。

 となると、2024年の株価も期待できる。前ページでマネックス証券の広木隆氏が語っているように、1989年大納会でつけた3万8915円の過去最高値を更新することもありそうだ。

文=関 慎夫