濾紙業界のパイオニアとして、創業100年以上の歴史を持つ安積濾紙。高い商品開発力で品質にこだわり、日本のものづくり産業を牽引、濾紙の可能性を世界に広げる技術開発型メーカーだ。ダイバーシティ経営にも力を入れ、企業体としての進化を図る。(雑誌『経済界』2024年3月号「関西経済の底力特集」」より)
かつて世界から「ものづくり大国」と評された日本の製造業。昨今は海外情勢などの影響もあり、業界を取り巻く環境は劇的に変化している。安積濾紙は濾紙というニッチな分野で時代や環境の変化に対応しながら日本の産業を支える。自動車関連部品のほか、日常生活に欠かせない商品を数多く開発し、濾紙産業のパイオニアの役割を果たしてきた。
創業時は紙卸問屋だったが、2代目(現社長の祖父)が濾紙にビジネスの可能性を見いだしたことがターニングポイントとなった。高度経済成長期には、自動車のエンジンオイルフィルタの開発に成功。自動車販売台数の増加とともに同社も拡大の一途を辿った。
自動車業界参入時に大量生産用の設備を導入した結果、他の業界にも参入できる体制が整った。産業用フィルタ以外にも、化繊紙、脱臭フィルタ、コーヒーフィルタなど、企業の要望にオーダーメードで応えることで多種多様な商品が生まれた。
一方、苦しい時期も経験した。リーマンショックや、工場の爆発事故を起こした際は企業存続の危機に立たされた。この窮地を救ったのが社員だ。事故後、工場の一部を福井工場に移転した際には社員が一致団結し、約2年で供給を元に戻した。
現在はダイバーシティ経営にも力を入れており、外国人雇用の促進や女性社員の割合を35%以上にするべく、入社後の定着につなげていく施策を行っている。
さらには海外販路の拡大にも積極的に取り組み、2023年にはドイツの展示会に出展。海外企業のオファーを受けて持続可能な社会の実現に向け、環境に配慮した製品も開発している。
「実績と安全・安心がある技術開発型メーカーとして品質にこだわり、質の高い製品の開発を行い、価格の高さには理由があることを証明していきたい。ものづくり大国の日本の底力を世界に発信していきます。そして、『企業は人なり』を強く意識し、社員が働きやすい環境を整備していきます。社員には豊かになって欲しいし、仕事にやりがいを持ち、幸福感をつかんで欲しい。全社一丸で新プロジェクトに取り組んでいきます」と安積社長は意気込む。
会社概要 設 立 1919(大正8)年2月 資 本 金 4,500万円 売 上 高 49億4,800万円(2022年3月 現在) 本 社 大阪市東淀川区 従業員数 172人(2023年3月現在) 事業内容 濾紙製造を中心として、フィルタメディアにおける開発・研究と製品の供給 https://www.azumi-filter.co.jp/ |