経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

ファッションショーやアバター接客、コンビニの「便利」はどう変わるのか

アーバン・ファミマ!!虎ノ門ヒルズ店

コンビニエンスストアに行くと、公共料金の支払いやATMの利用、荷物の発送などあらゆる余事を完結することができる。最近ではファッションショーやアバターを使った接客など、コンビニとは思えない取り組みを打ち出している。地域のインフラであるコンビニはどう進化するのか。文=萩原梨湖(雑誌『経済界』2024年4月号より)

アーバン・ファミマ!!虎ノ門ヒルズ店
アーバン・ファミマ!!虎ノ門ヒルズ店

「コンビニエンスウェア」アパレル市場にファミマ参入

アーバン・ファミマ!!虎ノ門ヒルズ店
アーバン・ファミマ!!虎ノ門ヒルズ店

 1月15日、コンビニエンスストアのファミリーマートとアパレルブランドのアーバンリサーチのコラボレーション店舗「アーバン・ファミマ!!虎ノ門ヒルズ店」がリニューアルオープンした。銀座線虎ノ門駅側から店内に入ると食料品はファミリーマートのオフィス向け業態「ファミマ!!」と同様の品揃えだが、棚同士の間隔が広く、店内には観葉植物が設置されているためゆったりと店内を見て回ることができる。

 この店にはもう一つの入り口があり、そちらは全く違う表情を見せる。虎ノ門ヒルズ森タワー側の入り口から入るとまず廃棄衣料をリメイクした商品が目に入る。リメイク商品はフリルや異素材を組み合わせた比較的奇抜なデザインのものが多く、アップサイクルならではのおしゃれさをかもし出していた。奥に進むとマネキンや試着室もあり、通常のアパレルショップと変わらない。店内の中心にはサステナビリティをテーマとした雑貨コーナーがあり、オーガニック食品や木でできた食器などを取りそろえていた。

 アーバンリサーチとは都会的かつカジュアルな商品展開でベーシックなスタイルを提案するセレクトショップで、アーバン・ファミマ!!は、サステナビリティをキーワードに、両者のノウハウを融合させた新世代のコンビニエンスストアだ。来店する目的や客層が違う業態を結びつけ、コンビニエンスストアとセレクトショップの間にある集客数や非日常感など欠けている部分を補うサービスを提供することが目的とされている。

 今回のリニューアルでは従来店舗の中央にあったキッチンスペースを取り払いイベントスペースを併設。ビジネスパーソン向けの「アーバンリサーチが考えるSDGs」をテーマとした講演会や、親子をターゲットとして丹後ちりめんを使った巾着づくりワークショップなどを行った。

 虎ノ門ヒルズの利用者は周辺で働いている人が多いため、毎日来る人が飽きないようにイベントやポップアップは月一ほどの短期間で変えていくとのこと。

 ファミリーマートはコンビニ大手3社の中でも比較的自由度の高いサービスを打ち出す傾向にあり、現在はアパレルに注力している。2023年11月30日に国立代々木競技場にて行った「ファミフェス Fami-FEST.」の中で、ファミリーマートのオリジナルアパレルブランド「コンビニエンスウェア」の新作を披露するファッションショーを開催した。

 コンビニエンスウェアは21年3月に全国展開を始め、人気アイテムのラインソックスを中心にTシャツ、タオル、撥水パーカーなどを展開している。今回披露した新作は、全国展開のスウェットや麻布台ヒルズ店限定販売のデニムジャケット、デニムパンツ、チノパン、スカートなど。コンビニエンスウェアだけで全身コーディネートできるブランドとして選んで買ってもらえる商品を目指している。FACETASM(ファセッタズム)のデザイナー落合宏理氏がデザインを手掛け、年齢や性別を選ばないシンプルできれい目な作りになっておりカジュアルからクールまでさまざまな系統のファッションと相性が良さそうだ。

 ファッションショーでの新作発表という業界初のプロモーションは、ジェンダーレスなデザイン、機能性と低価格でコンビニエンスウェアの注目を集めることはできたが、価格はデニムジャケット9千円と、ユニクロやGUが4千~5千円なのに対し高めでコンビニ価格とはいいがたい。従来のコンビニの衣料品は緊急時などの間に合わせとして用意されていたが、既存のアパレルブランドが乱立する中、コンビニで洋服を買うというライフスタイルは定着するのだろうか。

 アーバンリサーチ販売部マネジャーは、「働き方や働く場所、男女の雇用が大きく変化する中、コンビニで間に合わせではない洋服を買うという流れはあり得る」と語る。また、コンビニエンスウェアの質やトレンド感については「取り入れやすい価格帯で、しかもファッション感度が高い人にも訴求できている」。

 ファミリーマートは、世代や目的別にターゲットを明確にしたプロモーションを得意としており、現在約8500店以上にデジタルサイネージを設置し商品・サービスの広告からエンタメ情報、アート、ニュースなどの映像コンテンツを配信している。さらにデータを分析・解析・配信を行う会社としてゲート・ワンも設立。両社を連携させながらリテールメディアの成長を加速させている。

「近くて便利」の徹底で街のインフラとして定着

 コンビニ9チェーンの23年2月末店舗数は5万8095店で商圏範囲は徒歩10分以内半径500メートル程度といわれている。今でこそ地域のインフラとして欠かせないが、そこに至るまでは総合スーパーやミニスーパーとは違う特色を持つ業態として確立させるため、さまざまなサービスを展開し成長してきた。

 セブン-イレブンは1974年5月東京都江東区豊洲に第一号店をオープンし、その翌年に24時間営業を開始した。当時の日本は高度経済成長で製品の需要が急激に増え、それに伴い長時間労働やサービス残業が当たり前になっていた。サラリーマンが深夜に帰宅すると、スーパーマーケットはすでに閉まっている。それでは困るので食品や日用品など多数の品目を扱う年中無休のコンビニエンスストアが誕生した。

 国連が76年から85年までを「国連婦人の10年」と定めたことにより、日本でも女性の社会進出の流れが大きく加速し、専業主婦として家庭を守るだけではなく、働きに出る女性が増えた。夫婦共働きの世帯も年々増加する中、24時間開いていて短時間で買い物を済ませられるコンビニは次第に定着した。

 また銀行の営業時間は平日の9時から15時で、その間働いている人は行くことができない。そのためセブン-イレブンは87年に、公共料金支払いの代行を行う「収納代行サービス」、2001年には24時間利用できるATMを設置した。こうして生活インフラとして機能することで、24時間「開いててよかった」から「近くて便利」なセブン-イレブンへと進化を遂げた。

 一方で品揃えの変化はというと、調理する手間や時間がかからないような加工食品やワンハンドで食べられるもの、例えばおにぎりや弁当、サンドイッチ、調理麺といったファストフーズを自社開発して販売する割合が増えていった。今ではセブン-イレブンが取り扱う食品のPB比率は75%を超えている。セブン-イレブンの広報担当者は、コンビニがPBに力を入れる背景としてPB商品の扱われ方が10年ごろから大きく変わってきた、と感じている。

 「普通PB商品はNB商品より安く設定するため、昔はNB商品の模倣品というイメージがありました。でも今は、そのブランドだからこそできる高品質・低価格の商品という認識が浸透し、安いから買うというよりは品質がいいから買う、という時代になりました。『セブンプレミアム』の『直火炒め極上炒飯(321円)』や『レンジで焼き餃子(170円)』など、食卓に出すもう一品として購入していただくお客さまが多くなっています」

 コンビニ大手3社、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンの中で特に販売をリードしているのが「セブンプレミアム」。19年にリニューアルした「金の食パン(4枚入り375円)」は焼かずにそのまま食べると高級生食パン並みのおいしさとSNSで話題になった。

 そしてコロナ禍の直前19年ごろからは消費行動に変化が起きており、低価格な商品を求めて何軒もの店を回る「買い回り」が減り、一つの店で必要なものをすべてそろえる「ワンストップショッピング」への傾向が高まっている。そんな中、ストックしておくことができる冷凍商品の需要は特に顕著で、セブン-イレブンは17年から冷凍食品の売り場を拡張した。

独自規格・サービスで競争が激化する

 一方でローソンは健康志向の消費者をターゲットに、01年東京・自由が丘にナチュラルローソンをオープンした。既存の店舗と比べて野菜や果物の品ぞろえを増やし、おにぎりや弁当の米は玄米を使用、サンドイッチのパンにはオーガニック小麦を使用したものを陳列した。ただ、全商品を健康志向・ナチュラル志向にするわけではなく、利用者の生活を支えるという役割が損なわれないよう、既存店にあるようなカップ麺や菓子などのNB商品も取り扱っている。健康志向のコンビニを作ったところ結果的に女性客比率が高くなり、今までコンビニを利用しなかった層を取り込むことに成功した。

 また、近年さまざまな場面で多様性を尊重する考え方が主流になってきており、髪型やファッションなどの見た目で属性を判断したり、家庭での役割や職業などを性別で決めつける考え方を排除する流れがある。従来のように客層を年齢や性別でひとくくりにはできなくなっているため、ターゲットを狭く設定しそれ以外を切り捨てるという戦略はコンビニエンスストアの業態にはそぐわない。時代の変化とニーズの間でバランスが取れない業態は淘汰されるということだ。

 また、コロナ禍ではウーバーイーツを筆頭にデリバリー業界が大きく売り上げを伸ばし、その流れはコンビニ業界にも波及した。ローソンは19年8月に日本のコンビニで初めてウーバーイーツの導入を開始し、20年に1千店舗、21年に2千店舗22年には3千店舗を突破している。そのほかWolt、menu、出前館なども含め現在は約4500店で展開している。

 セブン-イレブンは、17年から一部地域でテストしていた自社サービス「7NOW」を22年に本格導入し、24年度中に全国展開する予定。7NOWとは、7NOW公式アプリで注文した商品を最短30分で届けるデリバリーサービス。自社サービスのメリットとして実際の店舗在庫とリアルタイムで連携し、リアル店舗とほぼ同様の幅広い品揃えを提供することができる。

ローソンはアバター接客で人手不足に対応

グリーンローソンのアバタースタッフ
グリーンローソンのアバタースタッフ

 2月6日、KDDIがローソンのTOBを発表した。KDDIの持つデジタル技術を生かして実店舗とネットの融合でローソン店舗の新たな価値創出を目的としている。

 ローソンは22年にオープンした未来型店舗「グリーンローソン」でアバターを使ったリモート接客サービス「AVACOM」を導入。従業員側が制約にとらわれずに働ける仕組みをいち早く取り入れた。

 「グリーンローソン」では、環境負荷軽減や省人化に特化しており実験的にさまざまな取り組みを行っている。オンラインで注文を受けてから店内厨房で作るメニュー「できたてモバイルオーダー」や食品ロス削減を目的としたおにぎりの冷凍販売、プラスチック削減のためのカトラリー完全撤廃などはローソンとして初の取り組みだ。

 アバター接客もその一つでアバターは「そらと」と「あおい」の2種類を展開しており「ローソンアバターオペレーター」と呼ばれる従業員が遠隔地からアバターを操作する。画面上で身振り手振りを交えて会話する接客方法で、今後は深夜の防犯や地方特産品の販売などの活用も視野に入れている。ローソン広報によれば「アバターを用いたリモート接客で勤務地や勤務時間の選択の幅を広げ、職場と家との移動や子育てといった時間の制約、働き手の障がいの有無に縛られない新しい働き方を提供することができる。また、リモート接客とリアルの接客を併用することで、店舗に配置する従業員を最小限に抑えることができ深刻化している人手不足にも対応することができる」。ローソンは25年度中に全国各地のローソン店舗で活躍する「ローソンアバターオペレーター」1千名の育成を目指す計画だ。KDDIのデジタル技術はここでも生きてくる。

 従業員の負担低減への取り組みは他のコンビにでも進む。ファミリーマートは、いつでも小口荷物の受け取りと発送ができる自社運用のスマートロッカー「ファミロッカー」サービスを23年10月から開始し、24年1月時点では1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の650店に設置が完了、今後も全国店舗への拡大を目指している。背景には、EC市場の拡大やフリマサイトなどによる個人間取引の増加、コロナ禍における生活様式の変化により、小口荷物の取扱量が年々増加していることがある。ファミリーマートでは取り扱う荷物の量が5年前に比べて約1・3倍に増加し、店舗従業員の作業負担や荷物の保管場所などが課題だった。ファミロッカーは、客にとってはスムーズな発送と受け取りができる便利なサービスとなっているが、客側のメリットにとどまらず従業員の不便さを解消する側面を併せ持つ。

 これからのコンビニは、客の便利だけを追求し従業員の負担が大きくなるサービスはNGということだ。日本のコンビニ界の父でありセブン-イレブンの事実上の創業者鈴木敏文氏が「小売業は変化対応業だ」と定義したように、社会インフラであるコンビニも時代や消費者の変化とともに変わっていかざるを得ない。コンビニエンスストアはさらなる進化を遂げようとしている。