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IoTでスマートホームを実現 医療・介護分野にも応用へ 河千泰進一 リンクジャパン

リンクジャパン 河千泰進一

AIとIoT技術で住宅の全てをリンクするプラットフォームを提供。スマートホーム業界シェアナンバーワンを獲得しているリンクジャパン。大手ハウスメーカーが続々とシステムを採用し、今後はヘルスケア分野にも力を入れ、高齢社会へ対応していく。(雑誌『経済界』総力特集「注目企業2024」2024年5月号より)

リンクジャパン CEO 河千泰進一氏

リンクジャパン 河千泰進一
リンクジャパン CEO 河千泰進一 かちやす しんいち

端末で家の中を操作シェアは46%以上

AIスピーカー、スマホ、タブレットなどの端末から、鍵、照明、エアコン、給湯器、カーテンなど家の中の機器を操作できるのがリンクジャパンのスマートホームサービス「eLife」だ。遠隔操作も可能で、大手国内ハウスメーカーを中心に戸建てやマンション物件でのサービス採用が増えている。

また、美和ロック、リンナイ、ノーリツなど家電や住設機器、ダスキンの家事代行サービスやALSOKのホームセキュリティシステムなど、アライアンスを組んでいるパートナーも多数ある。

同社がスマートホーム業界でトップの46%以上のシェアを誇る理由について、「製品ごとのアプリを必要とせず、一つのシステムで操作できるシステムだからです」と河千泰進一CEOは胸を張る。

スマートホームでは各機器が統合されていないと、利用者はそれぞれ個別のアプリをインストールする手間がかかる。トラブルがあった際には、住宅メーカーが製品ごとの解決を迫られる。しかし、同社の「eLife」は統合システムであり、一つのアプリなのでスムーズな対処が可能だ。メーカーの各機器に仕様変更があれば都度反映しており、アプリの毎月のアップデートも欠かさない。

「開発中は、各社のインターフェース仕様、通信仕様がバラバラなので、それらを連携する苦労はありましたが、今では連携可能なデバイスは60種類を超えています。創業から10年かけて統合システムをパッケージ化できました」

これまでに40万台以上のスマートホームデバイスを出荷し、専用アプリ「HomeLink」は28万以上のユーザーに利用されている。

IoTチップをデバイスに組み込むだけで低コスト、スピーディーにIoT製品が実現する事業も好調だ。

「ウォシュレットやカーナビは当初オプションでしたが、現在は標準仕様化されています。スマートホームのサービスも同様に標準化されるようになり、5年後には住宅で5割の普及を期待しています」

最近では賃貸マンションの無人内覧実現にもスマートホームのシステムが活用されている。

「鍵・オートロックの解錠を遠隔ででき、室内カメラを用いることで不動産会社のスタッフの立ち合いなしでお客さまのスムーズな内覧を実現しています。内覧時間の30分前にエアコンを自動オン、終了時に自動オフできるため、空間の快適さも保てます」

内覧がスムーズになれば入居率のアップにもつながり、人的コスト削減にもなるという。

シニアマンションの見守り機能にも役立つ

同社はヘルスケア分野にも力を入れており、昨年は福岡大学西新病院と連携して、スマートホーム統合アプリを活用したオンライン診療サービスの実証実験を行っている。

介護施設での実績もあり、遠隔からのエアコン操作や、スマホからのナースコールでビデオ通話ができる機能など、介護スタッフの負担を減らし、入居者の安心感を増すシステムを構築している。これから高齢者がますます増える時代を迎え、需要の高まりが予測される。

「体が動きにくくなった高齢者の方にこそ、音声でテレビをつけたり、カーテンが閉められるシステムが求められます。センサーを活用した見守り機能で安否確認もしやすくなります」

高齢者の1日の活動量や動きのデータを取れば、認知症や病気の早期発見につながる可能性もある。

介護業界は人手不足が深刻で、シニアへのサービスはこれから大きなマーケットになると考えられる。

「Airbnbが既存の住宅をホテルにしたように、スマートホームサービスで既存の住宅をシニアハウスにするというイメージを持っています。IoTでできるものは任せることで、誰もがハッピーになれる社会を目指します」

IoT、アプリ、クラウド、製品開発、医療・介護の知見といった全ての領域を把握して、プラットフォーム化できる会社は他にはなく、真似や追随されない技術が同社の強みとなっている。

エネルギー機器へのリンクで電力もコントロール

ハウスメーカーのヤマダホームズは昨年、リンクジャパンのIoTプラットフォームを戸建注文住宅に全棟標準採用することを発表し、動く蓄電池(EV)もアプリに統合する。

スマートホームのシステムは、家電をエネルギー機器へリンクし、電力を見える化することで、節電や蓄電も可能になる。さらに規模が大きくなれば、地域でのエネルギーシェアにもつながり、災害時にも役立つ。

「将来的には自分で設定・操作しなくても、AIの判断で気温に合わせて自動でエアコンをつけるといったシステムになっていくと思います。さらにコンシェルジュのように、病気になったら医者を予約してくれるなど、家の中だけでなく、家の外ともリンクしていくでしょう。eLifeサービスを物件に導入することで、コンシェルジュが常駐しているような世界を目指しています」

業界のトップランナーとして新しい未来を築いていく。 

会社概要
設立 2014年4月
資本金 3億7,000万円(資本準備金含む)
本社 東京都港区
従業員数 53人
事業内容 ホームIoTプラットフォーム事業、それに付随するアプリ、クラウド、製品、AIの開発と、それらを生かしたスマートライフ、ヘルスケア、エネルギーマネジメントサービスの提供
https://linkjapan.co.jp/