経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

日本発のE-Mobilityで地球環境問題を解決に導く 山本朋宏 ツバメ・イータイムズ

ツバメ・イータイム 山本朋宏

ジャパンクオリティーのE-Mobility事業を基軸とした山口県の企業が、設立から10年で地球環境問題の解決を理念とするベンチャーに生まれ変わろうとしている。国内外の最先端技術を取り入れながら政府や企業との連携も進め夢の実現に向けて走り出した。(雑誌『経済界』総力特集「注目企業2024」2024年5月号より)

ツバメ・イータイム 代表取締役  山本朋宏氏

ツバメ・イータイム 山本朋宏
ツバメ・イータイム 代表取締役  山本朋宏 やまもと ともひろ 

山口県岩国市発のカーボンニュートラル企業

地球環境問題の解決に企業が貢献することは重要な責務の一つになっている。脱炭素化やカーボンニュートラルへの対応などの取り組みがあるが、ツバメ・イータイムズは日本発の技術を基礎にしたE-Mobilityのメーカーであると同時に、最新テクノロジーを世界に供給してグローバルな視点で地球環境問題の解決に寄与することを理念に掲げている。本社は山本朋宏代表の出身地である山口県岩国市に置いている。

「重要なマーケットとしてアジアや世界を見ているので、必ずしも東京に本社を置く必要はありません。東京一極集中で地方経済は厳しい状況にありますが、われわれの事業が成功すれば地方や全国の中小企業の経営者にインパクトを与えます」

山本代表の実家はガソリンスタンドを経営しており、大学入学と同時に上京し、卒業後は東京の会社に就職したが、30歳の時に実家に戻った。しかし、学生時代から世界と戦える会社を起業したいという夢を抱いていた山本代表はEVの将来性に着目。ツバメ・イータイムズを起ち上げた。

「EVと出合った時、将来ガソリンエンジンがなくなることにショックを受けましたが、EVバイクは意外とシンプルなつくりで、これならできると思いました」

当時出会ったのが同郷出身で、EVバイク事業で成功していたテラモーターズの徳重徹社長だ。意気投合し協業を模索する中で、同社から日本とベトナムでのEV事業を譲り受けることになる。

EVバイクの販売を開始したのは2015年。部品の選定やデザインの考案などを行うファブレス型の会社で、翌年にはバイク大国で知られるベトナムに進出してハノイ市公安局に5千台以上を納入し、ハノイの2輪販売店の2割以上と販売代理契約を取り付けた。一方、国内では内閣府などが推進する日本版MaaS(次世代移動サービス)事業への参画が決まった。

カーボンニュートラルのコンビニを世界へ

マレーシアへEV、エネルギー技術を提供することで合意(マハティール元首相と。2023年10月)
マレーシアへEV、エネルギー技術を提供することで合意(マハティール元首相と。2023年10月)

同社はEVメーカーの枠を超えて国内外の最新技術をパッケージ化して海外の企業や政府に供与している。アジアでは昨年10月、マレーシア政府が掲げるグリーン成長戦略の施策の一環として同社のEV、エネルギー技術の提供で合意した。

「マレーシアでは50年までにCO2排出ゼロという目標を掲げています。段階的にCO2排出量を減らしながら、起業家の育成や経済の発展を目指していくグリーン成長戦略を描いており、その一端を担います。また、オマーンからもスーパーシティ構想に当社の技術が生かせないかという相談が来ています」

またグローバル企業との連携も進展している。

「世界第4位の電子機器委託製造のフォックスコンとは製造分野で協業を、台湾に本社を置くEVスクーターとバッテリーの先進的メーカーのGogoroとは日本国内のバッテリー交換ステーションサービスの展開について基本合意しました」

E-Mobility製造から端を発した同社だが、その基軸を保ちながら技術供与を通した事業展開を構想している。キーワードは、「コンビニ」だ。

「コンビニは日本が誇るビジネスモデルです。優れている点は顧客を基点として製造も販売も行うことです。当社のものづくりやサービスのこだわりもそこにあって、それぞれの国や地域の文化やニーズに応えることを重要視しています。大企業のものづくりやサービスは提供する側の目線に執着しがちで、最先端技術を追い求めてしまいます。そうしたポリシーにも価値はありますが、当社の立ち位置は違います。時に過剰と思える仕様やスペックは取り除き、必要十分かつそれぞれの国や地域のニーズに合うものを組み合わせ、E-Mobilityという乗り物や、カーボンニュートラルに関わるサービスを提供しています」

国内外の尖った企業と連携 地方発の課題解決型企業へ

「地球環境問題の解決は、当社単独でできるものではありません。だからこそ賛同できる企業との連携を急いでカーボンニュートラルの目標達成に貢献したい。E-Mobilityや関連の最新技術を持つ当社がハブとなり、企業が求める技術などを提供していきたい。顧客起点の『カーボンニュートラルのコンビニ』を標榜するビジネスモデルは世界中どこを探してもないはずです」

日本国内のCO2の吸着技術や再生エネルギー、バッテリーのリサイクル事業者など、稀有な技術を持つ中小企業と連携し、海外では技術を供与する販売網も拡大し続けている。

「尖った技術やサービスが魅力的な企業は全国にあります。日本が誇る技術力を集約し、世界に知らしめたい。同じ想いを持つ経営者に勇気を与え、手を取り合って世界や未来を変えていく。その先陣を切ります」

今後グローバル展開を加速させるためIPOの準備を開始した。 

会社概要
設立 2014年5月
資本金 4億100万円
本社 山口県岩国市
従業員数 15人
事業内容 E-Mobility開発・製造・販売、医療・介護関連電動機器研究開発、情報インフラ整備事業等
https://e-time.tsubame-group.co.jp/