経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

AI・IoTの融合ビジネスで社会課題の解決を実現する 渡邊 亮 MOYAI

MOYAI 渡邊亮

MOYAIのLED一体型次世代ネットワークカメラ「IoTube」は防犯カメラの域を超え、AI、通信、各種センシング、ビーコンなどによるOMOデータゲートウェイ・プラットフォーム化を通じ、スマートシティソリューションとしての可能性を秘めている。(雑誌『経済界』総力特集「注目企業2024」2024年5月号より)

MOYAI 社長CEO 渡邊 亮氏

MOYAI 渡邊亮
MOYAI 社長CEO 渡邊 亮 わたなべ りょう

電車内の蛍光灯にひらめき カメラ、センサ、通信機能を

渡邊社長がMOYAIを立ち上げたのは2018年。それまではインテリア、デザイン、店舗プロデュースなどを手掛けた後、独自性の高いLEDビジョンを中心としたデジタルサイネージを主軸に会社の規模を拡大。東京ドームのメインビジョンなども担ってきた。しかしデジタルサイネージは競合も多く、安定して事業を拡大させるには不安もあった。

「デジタルサイネージ1本でこの先も続けていくのは難しいので、自分たちにしかできない技術と営業スタイルで新規事業を立ち上げなければならないと考えていました」

きっかけは電車内の風景だった。周りを見渡すと自分を含めて片手は吊革の握り、もう片方の手にはスマートフォンを握る人たちばかり。

「両手を塞いで痴漢の冤罪を防止する典型的なスタイルですが、これに慣れていること自体が社会課題の一つです。ふと見上げると蛍光灯があり、『これに防犯カメラが付いていればいいのに』とひらめきました」

渡邊社長はカメラ一体型の蛍光灯が他にもないか調べた上で特許を申請。特許取得後の18年、デジタルサイネージ会社とは別に新規事業会社として同社を設立した。

現在は電車車両を中心によく目にするが、同社はそのパイオニア企業だ。SIMカードを搭載し通信機能を持たせたのも特徴の一つ。技術的には既存技術の集積であったが、カメラ、照明、通信、AIなど分野を超えたプロダクト開発は事業部別の縦割り意識が強い大手企業よりも動きやすかった。だが、肝心の顧客なしではビジネスにならない。

そんな時、パートナーを通じて東急電鉄の相談を受けた。20年の東京五輪までに全車両への防犯カメラ設置を宣言していたが、予算も時間も想定を大幅に超えていた。そこに蛍光灯を替えるだけで設置でき、別電源も不要なMOYAIの「IoTube」が採用され、東急電鉄の全1250車両に5千台を納入。コストは4分の1に、8年かかると目されていた導入期間は2カ月で済んだ。

エッジAI搭載で幅広く解析 鉄道車両にとどまらず拡大

京王電鉄全車両に設置されている「IoTube Pro.4Gシーリングユニットタイプ」
京王電鉄全車両に設置されている「IoTube Pro.4Gシーリングユニットタイプ」

その後も大手電鉄各社から導入案件が進んでいたがコロナ禍が直撃。乗客減に伴い、白紙撤回された。

「それなら今のうちに性能を向上させようと第2世代の開発に取り組みました。皆さんは防犯カメラの延長で考えますが、『IoTube』の切り口はAIとIoTの融合で実現する未来です」

2年の開発期間を経て22年に次世代モデルを発売。GPSやビーコンに加え、各種センサは温湿度、加速度、サーモ、煙、CO2など充実したセンシング機能を標準搭載している。ネットワーク端末機器に直接搭載する「エッジAI」は人流や人数カウント、怒声・罵声・叫び声、視線なども解析。例えば車内で事件が発生した場合、乗客の声や視線の注目度、逃げ惑う人々の動きなどから異常事態を検知し、運転手や指令所に通報する。膨大なデータはクラウドサーバーに蓄積され、マーケティングにも活用できる。

21年に小田急電鉄と京王電鉄で車内放火事件が続けて発生。「IoTube」の次世代モデルは発売と同時に電鉄各社から多くの引き合いがあり、京王、西武、多摩モノレール、京急、東京メトロと瞬く間に普及していった。痴漢防止の効果も高く、都内で相互乗り入れしている電鉄会社からは、「同じ路線でもうちの車両だけ痴漢発生件数がゼロだった」などと好評を博している。電鉄各社は導入時に防犯性能を公表するため抑止効果も高いと見られる。

「AIを搭載した汎用性の高いIoTデバイスなので鉄道以外にも裾野を広げていくつもりです。一つは幼稚園・保育園向け。多くの子どもが泣いている状況や、怒声や罵声の発生を検知できれば不適切保育をいち早く発見できます。もう一つはドライバー向けで、バスやトラックの運転手の体調不良を検知したり、あくびの回数、よそ見、急発進、急停車などをモニタリングし、安全運転のために活用できます。現在、大手保険会社と開発を進めています」

海外展開にも意欲的で、フィリピンやシンガポールの鉄道会社にアプローチしている。社員数は16人と少ないが世の中に求められる製品やサービスを先回りして提案する企画力とマーケティング力は大企業にも劣らない。「グッドデザイン賞」も2回受賞するなどデザイン力にも定評がある。目標は27年の上場。それまでに売上高を今の10倍の60億円に引き上げる計画だ。

「上場は通過点に過ぎません。上場後に急落するスタートアップもあります。当社事業にはデータゲートウェイとしてのデジタルメディアもあるので、データインプットとアウトプットを連携したプラットフォーム型ビジネスモデルを幅広く展開していくつもりです」

安心・安全・快適な社会を実現するための同社の挑戦は続く。 

会社概要
設立 2018年11月  
資本金 1億5,000万円  
売上高 6億4,000万円  
本社 東京都中央区  
従業員数 16人  
事業内容 ネットワーク通信関連事業、AI、IoT関連事業、デジタルサイネージ関連事業、防犯、セキュリティ関連事業  
https://moyai-net.com/