経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

独居高齢者の見守り活動と健康寿命の延伸に寄与する配食を 高橋 洋 シニアライフクリエイト

シニアライフクリエイト 高橋洋

高齢者向け配食サービスを全国展開するシニアライフクリエイト。見守りを含む安否確認型のサービスに加え、行政と連携して健康寿命の延伸を目的とした予防型のサービスにも取り組み、地場産業の活性化のみならず介護認定率や医療費の削減にも尽力している。(雑誌『経済界』総力特集「注目企業2024」2024年5月号より)

シニアライフクリエイト 代表取締役 高橋 洋氏

シニアライフクリエイト 高橋洋
シニアライフクリエイト 代表取締役 高橋 洋 たかはし ひろし 

高齢者の見守りと健康寿命の延伸に注力

シニアライフクリエイトが手掛ける高齢者専門の在宅配食サービス「宅配クック123」。同社が特に重視している一つが高齢者の見守りで、買い物などの外出に難がある独居の高齢者に対して、弁当を届ける際に安否確認を含めたコミュニケーションを推進している。弁当は手渡しを原則とし、利用者と対面することで会話の中から重要な情報や問題点、課題が抽出されるケースが多いという。

そんな利用者との対話を徹底するため、同社では配達スタッフを対象にした地域勉強会を毎月20回以上、各地で実施している。具体的な事例を共有して手渡しと会話の重要性を徹底するのが狙いだ。こうした地道な啓蒙活動が、同社への信頼感の醸成に寄与していると言えるだろう。

「当社はエリアテリトリー制で1エリア1店舗を守っています。そのため店舗間で無理な競争が生じず、成功事例の共有などが起きやすい仕組みになっていることも大きいでしょう」と高橋洋代表は笑顔で話す。

また、後期高齢者の健康寿命の延伸にも取り組む同社では、介護の重度化予防や未病状態の高齢者の病気を予防するため、たんぱく質に着目した。1食当たり20グラムのたんぱく質を摂取できる「幸(しあわせ)たんぱく食」を開発し、昨年4月から導入している。

「量を増やすことでたんぱく質が増えても、食べ残しては意味がありません。高齢者が食べ残さない量に収めることに腐心しました」

一方、高齢者施設向け食材供給サービス「特助くん」は、管理栄養士が作成した献立を提案する高齢者施設向けの食材供給サービスだ。主菜からデザートまで常時500品目以上をラインアップし、調理済かつ冷凍なので保存が可能で手間もかからない。もともと同サービスは「特別養護老人ホームを助ける」という意味で20年以上も前にネーミングされた。当時は厨房を外部に委託するケースは珍しかったが、近年需要が増大した結果、ネーミングとサービスが合致してきたことになる。

画期的なアイデアで自治体の歳出削減を実現

地域医療連携推進法人清水令和会との「持続可能な医療と介護に資する包括連携協定書」の締結式(2023年10月)
地域医療連携推進法人清水令和会との「持続可能な医療と介護に資する包括連携協定書」の締結式(2023年10月)

同社は「地域高齢者の健康寿命の延伸と地域活性化の両立」をテーマに、地元で取れた農水畜産物を地元以外の場所でも消費する「地産外商」を進めている。実際に、高知県や土佐清水市とそれぞれ包括連携協定を結び、地域創生SDGs官民連携事業を推進。これに加え、昨年10月には土佐清水市の複数の医療機関が参加する地域医療連携推進法人の清水令和会と「持続可能な医療と介護に資する包括連携協定書」を締結、見守りを含めた安否確認型の配食サービスに加え、健康を支援する予防型の配食サービスを推し進めている。

「地域における医療崩壊を未然に防ぐためには、在宅の高齢者が健康になることが一番です。それには入院時と在宅時での一貫した栄養管理が不可欠で『幸たんぱく食』と『特助くん』の連携が最適です」

実際に、ある小さな自治体が高齢者をサロンや運動などの活動に参加させたところ、介護認定率が6%低下したというデータがあり、これは同自治体の介護費、医療費で言えば約6億円歳出が減ることを意味するという。こうした数値が出始めているため、高齢者とコミュニケーションを取ることは健康寿命の延伸につながると全国的に各自治体が理解し始めている。

「そこに『食』が加われば介護認定率をさらに下げ、医療費や介護費用の抑制につながるのは間違いありません。国の未来にも関わる重要な施策となるはずです」

同社は将来を見据え、「競争より共創」を指針としている。例えば弁当の場合、たんぱく質などの栄養が豊富で健康に良いものをつくるには相応のコストがかかる。そこで同社が提案しているのが官民のタイアップだ。具体的には、自治体の予算で健康に良い弁当を高齢者に無料で提供する。高齢者の健康寿命が伸びることで医療費介護費の歳出が抑制でき、自治体のイメージアップにもつながるとともに、地域の産業も活性化できる「三方よし」のアイデアだ。

「原価率90%の弁当をつくっても商売になるのなら、手を挙げる会社は少なくないはず。私たちがリードする形で地場の企業が活性化できるのなら、やらない手はありません。各自治体からの反応も上々です」と高橋代表は自信をのぞかせる。

外出可能な高齢者が集う場として同社が運営するコミュニティサロン「昭和浪漫倶楽部」も地域に浸透し、着実に利用者を増やしている。また、直営店のある小豆島では、高松大学の学生がボランティア活動の一環で施設を訪れ、高齢者との交流を進めているそうだ。

「ここ数年で若者たちの意識の変化を感じます。昭和浪漫倶楽部が学生の社会参加を促す一助となっているのはとても嬉しいことですね」と高橋代表は目を細める。 

会社概要
設立 1999年12月  
資本金 5,000万円  
売上高 133億3,848万円(2023年2月期)  
本社 東京都港区  
従業員数 118人  
事業内容 高齢者専門宅配弁当サービス、高齢者施設向け食材卸、高齢者向けコミュニティサロンの運営  
https://slc-123.co.jp/