DOTZ(ダッツ)はウェブ広告をクリックしたユーザーをLINEに誘導し、チャットボットによる接客で離脱を防ぐDPS事業と、街の飲食店のリピーター獲得に向けたLINE自動運用ツール「ジーニー」を展開する。株式上場とグローバル市場を目指す。(雑誌『経済界』総力特集「注目企業2024」2024年5月号より)
DOTZ 代表取締役CEO 稲益 仁氏
チャットボット事業に注力し独自戦略で差別化を実現
サイバーエージェントで多くの新規事業の立ち上げを経験し、独立した稲益代表は、以前からLINEの持つ可能性に注目してきた。LINEは、商品やサービスを購入後も長期的に利用してもらうためのCRM(顧客関係管理)において大きな力を発揮する。稲益代表は、国内にわずか9人のみが資格を保有するLINEヤフー社公認の認定講師である「LINEフロントライナー」としても、LINE市場の拡大にも貢献している。
DOTZは創業時からの基盤事業として、FOS(フルオーダーメイドソリューション)事業を拡大させてきた。これは大手企業向けの広告代理業で、企業のLINE公式アカウントの企画から運用代行までをワンストップで行い、蓄積したデータを活用し、継続的な改善を重ねることでLINE公式アカウントの効果を最大化するものだ。
そして現在、成長事業として力を注いでいるのがDPS(ダイレクトパフォーマンスソリューション)事業だ。ウェブサイトに訪問したユーザーが、ウェブサイトを離脱しようとしたタイミングでLINEに誘導し、チャットボットを通した接客により態度変容を促し、商品の購買やサービスの利用申し込みを促すシステムを構築している。
「2023年のアカウント数は、DPSは前年の2倍に達し、売上高もFOSを逆転しています。完全成果報酬型の料金モデルで提供しているため、初期費用や月額費用は一切発生しません。成果(=購買や申し込みなど)が発生した場合のみ、費用がかかるため、クライアントにも喜ばれています」
現在はプライバシーを向上させる取り組みとして、グーグルがサードパーティCookieの提供を24年後半に廃止していくなど、大きな環境の変化が起きている。
サイトを訪れた顧客の90%以上が離脱する中、従来は離脱を防ぐためにメールアドレスを取得したり、アプリのダウンロードを促していたが、これはハードルの高い仕組みだ。それに対して、DPSは離脱のタイミングでLINEに誘導し、提供する商材の便益に関する悩み事をチャットボットでアドバイスする。
「当社のチャットボットは、オファー、診断、レコメンドという3種類のフォーマットを使い分けています。これを自動応答で提供し、離脱しようとしたユーザーを再度ウェブサイトに戻していきます。LINEの友だちに追加さえしてもらえれば、離脱後もメッセージを送ることができるため、Cookieの取得ができなくなった後も見込み客の追走が可能となります」と稲益代表はビジネスモデルの優位性を語る。
また、競合他社は単一商材を持つクライアントを取り扱うケースが大半なのに対して、DPSは複数商材を持つクライアントまでをカバーしている。例えば、アパレルでは10万点以上のアイテムをチャットボットでレコメンド(おすすめ)することが可能だ。単一商材とは異なり、1件当たりの成果(購買や申し込み)に対して、1件いくらといった成果単価ではなく、複数商材のため、売上に対する成果料率(%)にて費用を計算している。いわゆるレベニューシェア型のモデルとなっており、これが差別化につながっている。
オンライン上で申し込み地点があるBtoCサービスであれば、さまざまな企業に転用が可能だ。アパレル企業にとどまらず、転職情報を扱う人材系企業などにも対応できる。チャットボットの提供ノウハウに特化しているため、販路として多くの販売代理店を抱えていることも強みとなっている。
70万店舗以上の飲食店のDX化を支援する「ジーニー」
22年にスタートしたジーニーforレストランは、街の飲食店に向けたLINE自動運用ツールだ。LINEで来店した顧客にメッセージを自動配信しリピートにつなげるもので、順調に実装が進み、現在は200店舗以上が導入している。日本には70万店舗以上の飲食店が存在するが、いまだDXが進んでおらず、将来的な成長を期待できる市場だ。
「飲食店の皆さまからは、LINEの運用方法が分からない、効果の検証も難しいといった声をよくお聞きします。ジーニーを導入することで自然な流れで友だちを増やすことができ、再来店を促すためのメッセージが自動的に配信され効果も測定できる。しかも低価格です」
例えば、ラーメン店ではPOPからLINEに誘導し、抽選でラーメン1杯が当たるという仕掛けをつくる。はずれでもクーポンがもらえ、抽選に応募することで友だちとなる。これで来店客のうち約60%の人がLINEに友だち登録される。まさにLINE運用を知り尽くしたプロが手掛けるツールだ。他社はツールのみを販売するが、ジーニーはLINE運用ノウハウを生かし、再来店を促すための複雑なシナリオも作成し、1to1でメッセージを自動配信する。導入店では2回目以降の再来店率が通常の約2倍の平均で22%となっている。次なるターゲットとしては理容店や美容室、エステサロンを想定している。
同社は今後あらゆる業界を開拓し、新たな商機につなげていく。「ベンチャーとしてさらに高いところを目指すため、新規の資金調達、そして新たなツール開発を進め、26年10月期の上場を目指します」と語る。
稲益代表は5年後のありたい姿として、「積極的に海外に進出しながら、中長期的にはプラットフォームをLINEに限定せず、他のSNSでも技術を載せていく考えです」とビジョンを語った。ジーニーは外食率の高いタイや台湾と親和性が高く、現地にネットワークを持つ代理店とコラボレーションしていく考えだ。LINEで蓄積した経験を元に、グローバル市場に挑戦していく。
会社概要 設立 2020年1月 資本金 2億1,990万円 売上高 13億1797万円 本社 東京都目黒区 従業員数 19人 事業内容 LINEを活用した企業のサービスDX化推進事業、LINE広告代理事業 https://dotz.co.jp/ |