経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

企業の「想い」を戦略としお客さまに選ばれるブランドに 長田敏希 ビスポーク

ビスポーク 長田敏希

今やブランディングは中小企業にとって重要な戦略の一つだ。あらゆる商品がコモディティ化しつつある中、理念やストーリーなしに顧客の心をいかにしてつかむのか。企業と二人三脚でブランドづくりを行っているビスポークの長田敏希氏に聞いた。(雑誌『経済界』総力特集「注目企業2024」2024年5月号より)

ビスポーク 代表取締役 CEO 長田敏希氏

ビスポーク 長田敏希
ビスポーク 代表取締役 CEO 長田敏希 おさだ としき

ブランディング戦略は中小企業にこそ必要

ブランディングはこれまで、「大きな資本を持つ企業が巨額を投じてマスメディアでPRするもの」というイメージを持たれていた。しかし昨今、ブランディングは大企業のものだけでなく、中小企業にこそ必要なものとなっている。

「ブランディングは自社には必要ないと考えている企業も多いのが現状です。しかし、ブランディングは、会社の経営と一体化した重要な部分です。これは事業を行う以上、その大小に関係ありません」と語るのはビスポークの長田代表だ。

同社は企業ブランドや商品ブランドのコンサルティング事業を展開しており、これまでに日本全国で数百に及ぶブランドづくりのサポートをしている。

新規事業や新商品のブランディングだけでなく、成長が頭打ちとなった企業を立て直すためのリブランディングや、事業承継後に新たな価値を打ち出していこうとしている企業のブランド戦略なども数多く手掛けている。

長田氏はデザイナーとして広告代理店で10年のキャリアを積んできた。広告代理店時代には、単発的な商品の売り出しを行うことも多かったが、商品に込められた想い等も知った上でデザインすることが重要ではないかと考えていた。

「中長期的な支援を通して、経営状況に効果が表れるところまでコミットし、社名の由来となっているビスポーク(対話)を大切にしたい」との想いが、ビスポークの設立につながっている。

企業の「想い」がブランド戦略になる

ブランド構築に入る際には、まず徹底して「想い」を掘り起こす。経営者が、そもそもなぜその事業に取り組もうと思ったのか、チームメンバーが考えるブランドとは何かなど。

中小企業の意思決定は、何事もトップダウンで進められているところが少なくない。しかし、現場が付いてこなければ、事業は立ち行かなくなってしまう。

ブランド構築の段階で現場の声を取り入れることが、全社一丸となって事業に取り組むためのエンジンとなる。ブランディングチームの編成がブランド戦略の成否を分ける要となる。例えばメーカーの場合は、経営層、工場勤務の職員、事務職など、さまざまな立場のメンバーをチームに迎える。

「われわれがファシリテーションをしながら、チームメンバーの皆さんと、ブランド戦略を考えていきます。チームで話し合ったプロセス(=想い)は、事業を推進する際の大きなパワーになります。『想い』がそのまま戦略になるのです」

目先のアピールポイントだけでなく、社会に対してどのように貢献できるのかについても、しっかり言語化していく。

市場が成熟し、商品のスペックや性能などでは、なかなか差別化ができない時代となっているからだ。

「経営者がどのような想いで事業を行っているのか。理念や背景はお客さまも知りたがっています。そこについてもしっかり言語化した上で、顧客とのコミュニケーションを考えていきます」

食品や生活用品に限らず、競争が激しい事業こそ、ストーリーを打ち出して、顧客の関心を引き付けることが鍵となる。

ブランドの方針づくり構築から販路開拓まで

対話を重視する同社では、特段の事情がない限り、必ず現地へ赴く。メーカーの場合は、工場の中まで入り、製造の流れや製造スタッフに話を聞く。ブランド・アイデンティティ、つまりブランドのコアとなる企業の存在意義について、対話を通して構築していくためだ。

原宿にある小池精米店は、この対話によって「産地直米、お米を楽しく。」というブランド・アイデンティティを築いた。この「お米を楽しく」を軸に、情報発信やイベントを開催。ブランドのリニューアル後、わずか4年で年商は約3倍に。全国のメディアから取材の申し込みが殺到し、CM出演、本の出版も行う人気店となった。

その他、数々の事例が長田氏の著書『ブレイクスルーブランディング』(クロスメディア・パブリッシング)に掲載されている。

ブランド・アイデンティティという軸が決まった後は、さまざまな接点でどのようにブランドを伝えていくかを考え、顧客とのコミュニケーションまで一貫して支援を行う。

同社の強みは小売業とのネットワークだ。ブランドを構築して終わりではなく、大手コンビニエンスチェーンやスーパー、ライフスタイルショップなどへの販路開拓まで、とことん伴走する。

「商談をセッティングし、プレゼンテーションも一緒に行います。店舗に商品を置いてもらい、テストマーケティングまでお供します。時には、もっと源流の原料選びや原料メーカーのご紹介から入ることもあります」

現在、支援先同士をコラボレーションさせる機会も増えており、各企業の唯一性や価値を高めている。異なる企業のブランドが掛け合わさることで新たな価値が創出される。現在は食品や生活用品にとどまらず、建築やホテル、病院等の企業支援などにも携わる。

「今後も業種を問わず、想いを持つ企業に寄り添っていきます」 

会社概要
設立 2017年3月  
本社 東京都目黒区  
事業内容 ブランドコンサルティング、マーケティング支援、クリエイティブ戦略、商品・事業開発、デジタルマーケティング、空間・店舗デザイン等  
https://bespoke-inc.jp/