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外回り・訪問営業の必須ツール 営業のラストワンマイルを支援 金木竜介 UPWARD

UPWARD 金木竜介

DXが加速する中、依然オフラインが重視される対面営業。そんな外回り営業に有用なツールとして近年、注目を集めるモバイルアプリが「UPWARD」だ。位置情報やAIを用いて営業を科学的に効率化し、大企業をはじめ多くの企業で導入が進んでいる。(雑誌『経済界』総力特集「注目企業2024」2024年5月号より)

UPWARD 代表取締役CEO 金木竜介氏

UPWARD 金木竜介
UPWARD 代表取締役CEO 金木竜介 かねき りゅうすけ

位置情報をトリガーに効率的な営業を実現

外回り・訪問営業のDXを実現する「UPWARD」は、顧客情報を地図に表示してCRMと連携させることで、訪問営業や店舗巡回に従事するフィールドワーカーの創造性を高める。システムエンジニアやセールスコンサルタントを経て、前身会社でCOOを務めていた金木竜介氏は、経営危機に陥った同社を引き受ける形で社長に就任。ベンチャーキャピタルから出資を募り、2016年にUPWARDに社名変更して新たなスタートを切った。

「外回り営業に携わるフィールドワーカーは日々の営業活動が忙しく、契約に至るまでの活動報告や履歴をCRMやSFAに入力できていないのが現状です。位置情報をトリガーに、直感的に操作できるSaaSとして提供すればビジネスに役立つと考えました」

「UPWARD」を活用すれば、フィールドワーカーの訪問先の位置情報に基づいて自動的に訪問(チェックイン)履歴が残り、訪問状況もわずか数タップで簡単に入力が可能だ。業務報告や通話履歴の記録機能もあり、移動しながら顧客情報をすぐに取り込んで日報が書ける仕組みだ。この情報は個人の日報だけではなく、顧客プロファイルとして会社の資産にもなる。

「一見すると監視ツールに見えますが、会社に情報を共有するかどうかは選べるのでプロアクティブな対応が可能です。本アプリはあくまでもフィールドワーカーをサポートするものであり、その行動を追跡するトラッカーツールではありません」

顧客には大企業も多く、公式サイトの導入事例にはクボタやPayPayなどが名を連ねる。金木社長は地道な営業を続けることで、顧客を増やしてきた。

「展示会への出展やインサイドセールスを泥臭く続け、ターゲットを絞って営業しては提案を繰り返してきました。まずは数アカウントでトライアルしてもらい、効果を確認いただきながらアカウントを少しずつ増やしていきました」

地道な営業が奏功し、アカウント数は拡大。現在、顧客は約400社に及び、1社で数千アカウントというケースも少なくない。外回り営業時の活動報告の煩雑さが解消され、直行直帰しやすくなることから、現場で活用するフィールドワーカーからも好評を得ているという。

また、顧客企業に合わせた設定の自由度が高く、訪問頻度や取引金額に応じてアプリ上のピンの大きさや色を変更することができるため、直感的に訪問すべき営業先が分かるようになっている。昨年はAI搭載型の「UPWARD INSIGHT」をプレビューリリース。これまでの顧客情報をベースに、AI/機械学習を駆使して売上実績は高くないが成約見込みの高い優良顧客候補を抽出するため、営業の「打率」を科学的に高めることができる。

直感的な操作性と多言語化で海外展開も視野に

ピンの色や大きさで訪問の優先度を見える化する
ピンの色や大きさで訪問の優先度を見える化する

そんな「UPWARD」も、コロナ禍では利用者数の激減が危惧されたが、意外にも解約はほとんどなかったという。

「地域密着型の地方では、コロナ禍でもオフラインの訪問営業を続けていました。例えばオンラインミーティングが定着していない顧客に『オンラインでお願いします』とは言えません。『UPWARD』は行くべき場所を色分けできるので、コロナ禍では逆に重宝されました。既に同アプリを活用していた首都圏の顧客の場合は、訪問を伴わない営業活動におけるデータベースとして戦略的に使用していたようです。契約の際のラストワンマイルは人と人のオフラインであり、そこをDXすることが大切だと考えています」

昨年はシンガポールに進出。英語版とタイ語版も用意し、東南アジアを皮切りに海外への販路拡大を目指している。

「日本のSaaSは国内環境に特化したものが多いですが『UPWARD』は位置情報を軸としているので、世界中で場所を選ばずに使えます。多言語対応に加え、直感的に使えることも海外では強みになると考えています」

セールスフォースやマイクロソフトとも連携を深めており、昨年は両社からパートナー企業として表彰を受けている。今後はコンサルティングファームや大手SIerとのアライアンスを通じて国内エンタープライズ市場の強化を図る。

フルリモート勤務のエンジニアも含めて既に従業員数は100人を超え、順調に成長を続けているUPWARD。組織の拡大に伴い、将来的には上場を目指している。

「世界各国で『UPWARD』を展開するためには、さらなる成長が必要です。27年に顧客社数で現在の約5倍となる2千社の獲得を目標としています」

近い将来、日本発の外回り・訪問営業ツールが世界市場を席捲する日が来るかもしれない。 

会社概要
設立 2002年3月  
資本金 1億円  
本社 東京都港区  
従業員数 100人  
事業内容 フィールドワーカー向けクラウドサービス「UPWARD」の開発、提供  
https://www.upward.jp/