経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

良き出会い、良き仲間、良き仕事三本柱で次代の社会構造を創る 奥村茂和 二期(二期一級建築士事務所)

二期(二期一級建築士事務所) 奥村茂和

土地開発事業やマンションリフォーム事業、投資不動産事業などを展開する二期。「不動産屋の駆け込み寺」と称される同社は前年対比で約2倍の増収増益となった。そうした中で奥村代表は「利益追求が目的ではなく、社員ファーストの会社でありたい」と語る。(雑誌『経済界』総力特集「注目企業2024」2024年5月号より)

二期(二期一級建築士事務所) 代表取締役 奥村茂和氏

二期(二期一級建築士事務所) 奥村茂和
二期(二期一級建築士事務所) 代表取締役 奥村茂和 おくむら しげかず

49歳で独立し二期を設立 組織づくりは「人」重視

「創業以来、私が常に心掛けているのは、組織は何よりもまず『人』が大切ということです」

そう語るのは、代表取締役の奥村茂和氏。京都市生まれの奥村氏は、バブル期に友人の勧めで不動産業界に足を踏み入れる。1996年に上京した後も不動産会社に入社。マンション開発事業で業績を上げるも、リーマン・ショックの影響で会社は解散してしまう。その際に奥村氏は独立を決意する。

「当時、私は49歳。あと20年働けるかという年齢です。なので、私が中心の会社をつくるというよりも、私の意志を継いでくれる後継者を育てることに注力してきました」

会社設立時の人材採用で求めたのは、不動産の知識や能力がある人ではなく、業界未経験者だ。自ら人材を探しに行きメンバーをスカウト。チームを編成し、社員教育を実施してきた。不動産に関しては素人のチームながら、毎年売上高を更新してきた。

会社の責任は従業員とその家族を守ること、そして会社が得た利益は従業員が一層働きやすい環境にするために投資する。この二つを肝に銘じて経営を行っている。

ちなみに、社名の「二期」は、千利休の言葉「一期一会」から。一つ一つの縁を唯一無二と捉え、大切にしていくことを意味する。ここにも若い頃から人の縁を大切にしてきた奥村氏の想いが込められている。

会社にテラスやジムを設置 健康経営に真摯に取り組む

「そのため弊社はトップダウンではなく、ボトムアップの組織形態としています」と奥村氏。

例えば「ストレスを溜めず楽しく働くためにはどうして欲しいか」と社員にアンケートを取ったところ、従業員同士の交流や休息の場が欲しいという要望があった。そこで、会社の屋上にリラックスして食事ができるテラスを設置。社員はもちろん、社外の人たちとの交流の場にもなっている。

また新型コロナウイルス流行の際には、従業員の心身を健やかに保つことが何よりも先決と考え、要望の多かったジム会費の補助に取り組んだ。もっとも、ジムに通うことで感染リスクを増やすのではなく、社内にトレーニングジムを設置してしまおうと考えた。そうして会社の地下に造られたジムは最新のマシンを揃え、プロのトレーナーも招く本格的なものになっている。

「弊社のスローガンの一つに、『健全なる精神は健全なる身体に宿る』があります。従業員の健康な身体づくりは、経営者である私の責務です」

この健康経営の取り組みは経済産業省が定める「健康経営優良法人認定制度」の認定を、またスポーツ庁から「スポーツエールカンパニー」の認定を受けている。ジムは従業員だけでなく地域の人々にも開放されている。

こうした社員ファーストの考え方や、「良き出会い、良き仲間、良き仕事」の三つの柱で次の時代につながる社会構造を創るという理念は「ニキイズム」として掲げられている。

京都の街の再生やグループホーム事業に取り組む

同社の取り組みの一つに京都の町家を一棟購入して生かす「京町家再生プロジェクト」がある。これは奥村氏の郷里である京都が、数年間で数千件の町家が消失するという問題を抱えていることを知り始まったものだ。

「第一棟目の町家は弊社の京都支社になるとともに、これまでになかった新しい京町家のあり方を提案するモデルルームです。また、地元の若いアーティストたちの作品発表やイベント会場としても開放しており、文化の発信地として機能しています」

この活動は行政とも連携を取っており、今後は国内にとどまらず、国外にも出ていく計画がある。

さらにスポーツも文化の一つと捉え、アスリート支援活動を行っている。

「アスリートの諦めない強い心、常に困難に挑む姿勢は、ビジネスパーソンにとっても学ぶべき点が多くあります」

このほか、現在注力している取り組みにグループホーム事業がある。

「グループホームは需要が多いのに、数が圧倒的に不足しています。理由は物件を貸してくれる家主さんがいないから。であれば、われわれが物件を貸そうと考えました」

不動産を購入し、リノベーションして、グループホームの運営を行う事業主に貸すというビジネスモデルを思い付き、殺処分されるはずだった犬猫を引き取って入居者と一緒に暮らせるグループホーム8棟を建設した。この事業を本格的に始動させるために、本体から独立させる形で、オペレーション会社「NIKI terrace」を設立した。

これらの事業によって会社は順調に成長しており、今期は250億円の売り上げを目指している。しかし、利益だけを望んでいるわけではないと奥村氏は語る。

「クライアントの喜びを従業員一人一人の幸せにつなげられる環境づくりに努めています。そして創造的なアイデアとセンスを持つプロ集団であり続けるために努力を惜しまず、社会からの信頼を得て永続的な発展を目指します。同時に、社員一人一人がやりたいことを実現できる会社であり続けたいですね」と笑みを浮かべる。 

会社概要
設立 2014年8月  
資本金 8,000万円  
売上高 162億円  
本社 東京都渋谷区  
従業員数 46人  
事業内容 土地開発、マンションのリフォーム再販、収益不動産の販売、リフォーム工事・解体工事、京町家の保存再生、障がい者向けグループホームの運営  
https://niki-s.jp/