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「落ちこぼれをつくらない、湧き上がる組織」がいい人材を呼ぶ 藤原元彦 タカマツハウス

タカマツハウス 藤原元彦

成熟産業とされる戸建住宅市場において急成長を遂げているのがタカマツハウスだ。髙松コンストラクショングループのブランドと資金力に加え、「落ちこぼれをつくらない、湧き上がる組織づくり」に共感する人材が業界内外から続々集まってきている。(雑誌『経済界』2024年9月号「総力特集 人材育成企業2024」より)

タカマツハウス 藤原元彦
タカマツハウス 藤原元彦

ビジネスにおいて大切な「義理・人情・恩返し」

タカマツハウスは、2019年にわずか社員3人からスタートし、6期目の今、社員数132人、売上高269億円と右肩上がりの成長を見せている。木造戸建住宅の建売・用地分譲事業の中でもバリューチェーンの上流である用地仕入れ、都市部の資産価値の高い優良な宅地を厳選して顧客に提供する点に強みを持つ。そして拡大期に入った現在、分譲住宅ブランド「MIRAKURASU」の販売を開始するなど、販売部門を強化中だ。

その同社の成長を牽引するのが積水ハウスで数々の業績を上げてきた藤原元彦氏だ。

「私が模範としているのは積水ハウス元会長CEO和田勇氏と髙松グループの創業者・名誉会長の髙松孝之氏のお二方です。ビジネスだけではなく、人として清廉潔白であること、義理、人情の大切さなど生きざまを教えていただきました。ご縁あって髙松名誉会長から『戸建住宅産業へ参入したい』という長年の夢をお聞きし、ご期待に応えるべく経営を担っています。『受けた恩は石に刻め』と育てられたこともあり、ビジネスにおいても義理・人情・恩返しをモットーに、『正しく強く、楽しくあれ』という理念で、社員らと共に仕事をしています」

企業の組織風土をつくるのは経営者の見識に他ならない。このような真っすぐな「藤原イズム」に呼応する人材が、業界内外からタカマツハウスに集まってきている。

「社員は家族」採用は人間性を重視

創業当初は経験者採用を優先していた同社も年々未経験者の採用を増やし、他業種販売員やCA、元キックボクサー、お笑い芸人などユニークかつ多士済々な人材が入社している。また新卒採用も開始し、23年に6人、24年には14人を迎えた。来期も新卒15~20人、中途30人ほどの採用を予定している。

「歴史ある安定したグループ企業内にあるベンチャー企業といった点に惹かれる人材も多いようです」

それ故、さまざまな分野で腕に覚えありの人材が集まってきているが、重要な採用判断基準があるという。

「スキルだけでは採用しません。チームの和を乱しかねない方は残念ながら採用を見送ります。社員は家族だと思っているので、最も大切なのはその人材が仲間に入った時、チームの皆に『いい仲間を入れてくれたな』と思ってもらえるかです」

人間性重視の採用で急成長が実現できるほど企業経営は甘くはないだろうが、藤原氏は断言する。

「素直で正直、一生懸命に取り組める素地さえあれば、当社の研修や仕事を通じて、一流のビジネスパーソンに育てることができます」

心理的安全性に加え、満足度の高い報酬体系も

同社の組織づくりや人材育成手法には応援というキーワードがある。「不幸な社員をつくらない=落ちこぼれを生まない」ために皆でフォローする組織づくりだ。

「誰も落ちこぼれになりたいとは思っていません。もしそうなるとすれば周りのせいです。社員の皆には『周囲に関心を持とう。顔を上げて声をかけよう』と伝えています」

具体的には毎日の成果に対する上司のフィードバックや同行営業の補助、未契約で悩む社員には優先的にフォローする。市場規範を優先する企業ならば置き去りにされる人材にも寄り添う姿勢、思いやり、優しさといった社会規範を重視するのがタカマツハウス流だ。同社の応援文化は、人的資本経営そのものだろう。

「取り過ぎても足りないのがコミュニケーション。湧き上がる組織をつくるには、毎朝の挨拶や雑談こそ大切。それが企業風土の土台になります。仕事には必ず勝負どころがありますよね。そんな時に日々コミュニケーションが取れていると一致団結して乗り越えられるものです」

人材教育面においては、独自の豊富な研修メニューを策定。各人の成果を共有し、ナレッジ化を図っている。これもまた応援する風土がなせる業だろう。

さらに、応援という心理的安全性だけではなく、経済面での社員満足度を上げる施策もある。年収3千万円プレーヤーをつくるという旗を掲げ、実際に実現しているのだ。

「外部の調査も入れながら、インセンティブ制度の仕組みを整備しています。20代で1千万円の年収を得る女性もいます。報酬においても当社には夢があると思いますよ」

物心両面で社員を応援する姿勢があるが故に、リファラル採用の比率が高いことも同社の特徴だ。23年度は入社した社員の39%が社員同士の紹介によるものだった。その数字こそ良い会社の証左と言えるのではないだろうか。

今後の展望を聞くと、新卒1期生が20年目を迎える42年に売上高1兆円が目標。そのために11期までに1千億円を目指すという。しかし数字以上に、「社員自身やそのご家族に誇りを持ってもらえる一流の会社にしたい。売り上げ・利益を出すのは当然としてプロセスにおいても清廉潔白な会社でありたい。次世代を担う子どもたちに『タカマツハウスっていいね。将来入りたい!』と言われる会社になるのが目標です」

「早く行きたければ、一人で進め。遠くまで行きたければ、皆で進め」という格言がある。同社には、孤軍奮闘ではなく、皆で苦労や喜びを味わう舞台がある。 

会社概要
創業 2019年4月
資本金 3億円
売上高 269億円(2024年3月期)
本社 東京都渋谷区
従業員数 132人(2024年6月時点)
事業内容 木造戸建住宅関連事業
https://takamatsu-house.co.jp/