ティアフォーは、「自動運転の民主化」をビジョンに掲げ、自動運転システムの社会実装を行っている。オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware」の開発から自動運転EVの提供、無人物流・旅客サービスなどを手掛ける同社は、オープンソースとして開発したことが一番の強みだと語る。(雑誌『経済界』2025年1月号巻頭特集「自動運転のその先」より)
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個々の実証実験で適応力を強化
―― 2015年に名古屋大学発の自動運転スタートアップ企業として創業しました。世界初のオープンソースの自動運転ソフトウェアが注目を集めています。
齋藤 社長の加藤が准教授を務めていた名古屋大学で研究を進め、「Autoware」というソフトウェアを開発し、起業に至りました。開発から約9年の間に数十回のバージョンアップを重ね、障害物や人を避ける、雨天に適応するなど、複雑な判断ができるようになってきました。
濤崎 現在は世界で500社以上がAutowareを使って自動運転車の開発を行っています。
ソフトウェア開発以外にも、車両を用いた運行や現地導入の際の技術支援などを行っています。
齋藤 われわれが思い描く自動運転の進化の過程は、まずスタートアップなどの会社がすそ野を広げ、次に自動車メーカーやモビリティサービスの会社が参入するという構図です。その時に、われわれと組んでいただくか、別の企業と組むか、メーカー自身が自社開発するかで方向性が分かれると思いますが、まずは自動運転車が走るエリアやユースケースをたくさん増やすということが重要です。
例えば、10月にはWILLERさんと組んで、青森県の奥入瀬で自動運転サービス導入を見据えた実証実験を行いました。自然観光地であるこの地域では環境保全を目的にマイカー交通規制の実証実験が実施されていたり、バスとのすれ違いや、歩行者、自転車との混在交通があるという特徴があります。
―― 中国やアメリカは日本に比べて自動運転の実装化が進んでいます。
濤崎 確かに海外では、一定の条件下で自動運転システムが主体となって車を操作・制御するレベル4の技術開発が進んでいることは事実です。 しかし自動運転のフェーズ1がここまでの技術開発だとすると、フェーズ2の事業化に課題があります。
クローズドで開発している企業は、サービスが出来上がった後で利益を上げていく算段です。自動運転車単体で採算を取ろうと思うと始点から終点までを自社で賄うことになり、コストの壁にぶつかるはずです。
自動運転とほかのサービスを組み合わせることで価値を高めるのか、利用者数を増やすのか、ソフトを簡素化するのかなど、コスト削減を含む、事業採算性を検討する段階に入ります。
―― そこでオープンソースの強みが発揮されるのですね。
濤崎 その通りです。開発のスピードが遅いというデメリットが生じますが、事業化に入る頃には日本全国の実証実験の結果が集まっています。個別のニーズや開発に対応する形で製品を出していければ、コスト勝負になった時に当社の優位性が発揮されます。