経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

万博は国家プロジェクト ビジョンとレガシーで未来社会を創り上げる 松本正義 関西経済連合会

関西経済連合会 松本正義

関西経済連合会会長として大阪・関西万博の誘致活動に携わってきた松本氏。「万博は絶対に成功させなければならない国家プロジェクト。打てる手は全て尽くした」と語る。2025年以降の世界に、同氏はどのような未来社会を思い描くのか。(雑誌『経済界』2025年3月号「関西経済、新時代!」特集より)

関西経済連合会 松本正義のプロフィール

関西経済連合会 松本正義
関西経済連合会 松本正義
まつもと・まさよし──1944年兵庫県洲本市生まれ。一橋大学法学部卒業。67年住友電気工業入社。中部支社長、常務取締役、専務取締役、社長を経て、2017年に取締役会長就任。同年5月に関西経済連合会会長就任。

万博は国の威信をかけた国家プロジェクト

 2017年5月に関西経済連合会(以下、関経連)会長に就任した松本氏。それ以来、大阪・関西万博の誘致活動に積極的に携わってきた。海外プロモーションやパリへの誘致専任担当者の常駐、商社等の現地代表による各国への働きかけ、国内の企業への誘致賛同呼びかけなど、打った手は数え切れない。

 「誘致活動に精力的に取り組んできた理由は大きく二つ。一つは万博が国を挙げたプロジェクトであり、絶対成功させなければならないと強い思いを持っていたから。そして、関西経済、日本経済のこれからの飛躍に向けて重要な起爆剤になると確信しているからだ」

 その言葉通り、松本氏自身、各国を訪問し、直接日本への支持をお願いして回ったこともある。開催国が日本に決まった瞬間については、「まさに皆で一丸となって勝ち取った誘致だった」と感動を隠さない。

 誘致以降、関経連は万博の推進組織である「2025年日本国際博覧会協会」と一体となって、さまざまな課題に全力で対応していく。

 「会員企業等に対し、会場建設費の寄付や博覧会協会への社員派遣、前売りチケットの購入等に加え、各国のスタッフが滞在できる宿舎の確保などにも協力を仰いだ。また、全国的な機運を醸成するため、私は博覧会協会に設置された『機運醸成委員会』の委員長に就任し、官民が一体となった広報・プロモーション活動も進めてきた」

 大小の労をいとわず、資金や人材の獲得、機運醸成等に全力を注いできた。「わが国の経済成長や世界の課題解決への貢献につなげていきたい」と、万博への期待と思いを重ねて語った。

万博後の未来社会の鍵はビジョンとレガシー

 開催までの日程が間近に迫る中、まだ向き合わねばならない課題がある。その一つが万博閉幕後のレガシーだ。

 「1970年大阪万博はイベントとしては盛り上がったが、関西経済はこの年をピークに低落傾向に入った。要因の一つは万博後のビジョンやレガシーについて考え尽せていなかったから。今回の万博では、『未来社会の実験場』というコンセプトの下、さまざまな分野の先端技術やサービスが展開される。これらが社会実装されることで、関西経済に大きな影響をもたらすはずだ。そのためにも、関経連としては政府や自治体をはじめ、関係機関とともに、技術・サービスが社会に広く展開していく方法や仕組みについて、引き続き検討を進めていく」

 関経連では日常的な活動として、科学技術振興やイノベーション創出、観光・文化振興やまちづくり、鉄道・道路・空港・港湾といったインフラ整備などの事業に取り組んでいる。万博を契機として、これらをより一層強化し、万博後のレガシーの創出・継承につなげていく構えだ。

 「万博には、国内外から多くのスタートアップが参画することが期待される。彼らの熱意が多くの産業分野に波及し、社会課題に対して先駆的にチャレンジしていくスピリットが関西、ひいては日本中で育まれれば嬉しい。同時に、万博を契機とした関西の魅力発信・向上、観光産業の盛り上がりについても期待している。夢洲ではIRの整備計画が認定されたが、万博後も観光・ビジネスなど魅力ある拠点として発展していけるよう協力していきたい」

イノベーション創出と空の玄関口の整備で未来へ

 万博後に特に注目したいのが、近年勢いのあるイノベーション創出と関西3空港(関西国際空港、大阪国際空港=伊丹空港、神戸空港)のさらなる活用だ。

 「24年9月に先行まちびらきを迎えたグラングリーン大阪にある、イノベーションを創出するための施設JAM BASEは、スタートアップやベンチャーキャピタル、事業会社、大学などの関係者の交流の場となっており、関西のイノベーションのハブとしての進化を期待している。

 「近接した地域に5本の滑走路を有する関西3空港においては、好調なインバウンド需要を取り込み、さらなる経済効果を創出するポテンシャルがある。私はその懇談会の座長として、経済界や自治体、空港会社と一丸となり、空港の最適活用について議論を重ねてきた。その結果、24年7月の懇談会において、3空港で年間発着回数計50万回の容量確保を見据えた新飛行経路の導入に合意できた。今後、日本の代表的な玄関口の一つとして、3空港が連携して機能することになるだろう」

 70年万博後は経済発展にうまくつなげられなかった。国家プロジェクトとして、当時の反省を生かし、後世に誇れる万博とできるか。