経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「現代のフロンティア」を守る 民間「宇宙ゴミ」除去会社 岡田光信 アストロスケールホールディングス

経済界大賞 岡田光信 アストロスケール

(雑誌『経済界』2025年2月号より「第49回経済界大賞」ベンチャー経営者賞受賞)

経済界大賞 岡田光信 アストロスケール
経済界大賞 岡田光信 アストロスケールホールディングス

ベンチャー経営者賞 岡田光信 アストロスケールホールディングス社長兼CEO

 2024年6月5日、アストロスケールホールディングスが東証グロース市場に上場した。

 アストロスケールはその名の通り、宇宙ビジネスを手掛ける会社だ。

 宇宙開発競争が過熱している。宇宙こそがフロンティアだと考えた国、企業が開発に乗り出している。

 地上でも海中でも、開発が進めばそれに伴い廃棄物が出る。それが環境を破壊し、人の健康をおびやかし、気候変動を引き起こす。

 宇宙でもそれは同様だ。宇宙の場合、大気が存在しないから空気が汚染されることはない。その代わり衛星が破損するなどした際に出た破片は、永遠に宇宙空間を漂い続ける。これがスペースデブリ(宇宙ゴミ)だ。

 人工衛星は宇宙空間を秒速8キロの猛スピードで移動している(低軌道の場合)。そのため小さい破片でも、ぶつかれば甚大な被害を生む。今はまだ、宇宙空間の「ゴミ密度」が低いため大きな問題になっていないが、開発が進めば進むほど深刻化することは間違いない。そのためデブリの除去は喫緊の課題となっている。

 この問題を解決するために、世界初の民間スペースデブリ除去会社として、13年に設立されたのがアストロスケールだ。

 22年には模擬デブリの捕獲に成功、24年には実際のデブリに50メートルまで接近し、世界初のデブリの周回観測に成功した。このようにデブリ除去の実用化に向けて、着実に前進を続けている。

 創業者で社長の岡田光信氏は、元大蔵官僚。米国留学中に大蔵省を退職、コンサルタント会社などを経て起業家人生を歩みだす。

 驚かされるのはその行動力。スペースデブリの問題を知った数カ月後の13年4月に、この問題に関する欧州会議が開かれるのを知り参加。その1週間後にアストロスケールを創業した。

 この時、周囲の人は「技術がない」「市場がない」と反対したという。

 ところが岡田氏は、「市場がないと聞いた時、すごくいいニュースだと思った。市場がないのであれば競合がない」とむしろ前向きにとらえている。目指すは「世界で断トツのすごい会社」だ。