(雑誌『経済界』2025年2月号より「第49回経済界大賞」優秀経営者賞受賞)
優秀経営者賞 芳井敬一 大和ハウス工業社長CEO
2024年3月期、大和ハウス工業の売上高は5兆2千億円と、初めて5兆円を超えた。建設業界2位の積水ハウスは3兆1千億円、スーパーゼネコン最大手の鹿島は2兆6千億円、続く清水建設は2兆円(いずれも24年3月期)。大和ハウスは建設業界では断トツだ。
驚かされるのはその成長スピードだ。3兆円に到達したのは、16年3月期で、3年後の19年3月期には4兆円を突破する。その後、コロナ禍で一時的な減速があったが、5年で1兆円を積み増した。
大和ハウスの3本柱は、賃貸住宅、商業施設、物流などの事業施設。物流に関しては日本最大のデベロッパーで、ECの普及とともに業績を伸ばしてきた。
大和ハウスの芳井敬一社長は、大学卒業後、神戸製鋼に入り社会人ラグビーで活躍したが、ケガもあって断念、1990年に大和ハウスに転じた。
芳井氏は入社当時を振り返り「大型案件はスーパーゼネコンに持っていかれた」と言う。だからこそ、大手が手掛けない事業を手掛け、瞬く間に規模でスーパーゼネコンを抜き去った。
それでも大和ハウスは成長の速度を緩めない。最近ではAIの浸透で需要が急増しているデータセンター建設にも積極的なほか、米国など海外事業にも力を注ぐ。
なぜここまでアクセルを踏み続けるのか。
「低すぎる目標は自分を成長させない。組織も同じで成果を出したければ、目標を高く掲げ全員で努力する」(芳井社長)
その点、大和ハウスには、創業者・石橋信夫氏が掲げた「創業100周年10兆円」という大目標がある。設立は1947年3月だから、来る3月で68年。100年のうちの3分の2を経過した。それに対して売り上げは目標の半分だ。
それを考えれば、建設業界では未踏の5兆円も、単なる一里塚ということになる。
今のペースで成長を続ければ、2030年代には10兆円の目標に手が届く可能性が高い。次なる目標もそろそろ考える時期に来ているのかもしれない。