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「スマート経営」で成長を加速 再生医療の最前線を支える革新者 加藤学司 サンプラテック

サンプラテック 加藤学司

プラスチック製理化学機器メーカーとして64年の歴史を持つサンプラテック。近年はiPS細胞など再生医療分野への技術供与で注目を集めている。社員30人ながら売上高は27億8千万円。好調の理由は、外部の専門家との協業で実現する開発力と柔軟なアイデアにあった。(雑誌『経済界』2025年3月号「関西経済、新時代!」特集より)

サンプラテック 加藤学司
サンプラテック 加藤学司

社員30人で年商27億円超 外部連携でブランドを確立

 創業から64年、プラスチック製理化学機器のメーカーとして歩んできたサンプラテック。約7千種に及ぶ同社の製品は、国内外の大学の研究室、半導体や製薬・化学などの企業の研究開発部門、品質管理部門、製造部門など、幅広い場所で活躍している。社員30人ながら、2024年9月期の売上高は過去最高の27億8千万円。コロナ禍に影響を受けることなく、増収増益を続けている。

 同社の強みは、少数精鋭の「スマート」な仕組みと、ニーズに応えてオリジナル製品を生み出す開発力にある。流通や製造は全て協力会社にアウトソーシング。自社では柔軟な発想で外部のプロフェッショナルたちの技術を組み合わせ、企画・設計を行う役割に徹している。この経営方式は、半世紀以上に及ぶ進化の歴史によって培われている。

 1960年、三光製作所として誕生したサンプラテックはもともと理化学機器・器具の仕入れ販売やプラスチック加工などを行っていた。だが次第に、安定して売れる容器や器具は金型から製造するように。いつしかそれが事業の基盤となった。「流行り廃りがないのがこの業界のいいところ。40年、50年近く前の商品が、今なお支えてくれています」と代表取締役の加藤学司氏は微笑む。

 69年には、自社製品を含めたプラスチック理化学機器の総合カタログを発刊。ブランド名は積極的に出さず、卸売する約1千軒の代理店名義で研究室などに販売していたが、転機が訪れる。2006年、加藤氏が代表に就任した頃に、価格競争時代に突入したのだ。同社は安売り合戦に巻き込まれないよう、材質の変更やコーティングで耐久性や安定性を高めた容器、当時研究室になかったカラフルな什器などを開発していく。それらの製品は「サンプラテック」ブランドをうたい、付加価値を付けて差別化を図った。

 また開発には周辺企業の職人たちの協力が不可欠で、金型の成形機から共に開発したこともあったという。この時、プロフェッショナルの技術を組み合わせる現在のスタイルの素地が完成した。

 一方、時代もサンプラテックに味方した。カタログからウェブへの移行が始まったのだ。「デジタル化の波に必死でついてきました。すると、それを見た国内外の研究者から、ニーズに合う研究機器の相談が持ち込まれるようになったんです。そこからクチコミで相談数がどんどん増えていきました」(加藤代表)。

 当初オリジナル製品は自社で在庫を抱えて梱包し、集荷に来たトラックに預けていたが、「そんな体制では商品点数が限られてしまう」と、委託倉庫に在庫保有と流通を任せ、物流社員も移籍。社員は60人から30人になり、より企画や商品開発、営業に専念できるようになった。

再生医療分野を継続サポート 最先端医療を支える存在に

 同社が近年注力しているのが再生医療分野だ。始まりは13年、iPS細胞を凍らせず輸送できる容器の開発依頼を受けたこと。

 最近では山中伸弥氏が理事長を務める京都大学iPS細胞研究財団との共同研究で、閉鎖型培養装置の開発に取り組んだり、未来の再生医療産業の拠点となるNakanoshima Qrossでも資材協力などを進めている。また、澤芳樹・大阪大学大学院名誉教授が開発したiPS細胞由来の拍動する心筋シートの、大阪・関西万博での展示用容器の製作も行っている。さらに宇宙にも事業展開をしており、国際宇宙ステーションで行うバイオ実験用の容器も採用された。

風通しのいい組織づくり。次世代の人材育成にも注力

新しくなった本社では創造的な労働環境を実現
新しくなった本社では創造的な労働環境を実現

 意外にも同社はほぼ文系社員で占められている。研究開発を統率するフェローは手芸用品メーカーからの転職組。開発責任者はもともとデザインが専門、広報担当者は元ラジオ局プロデューサー、管理部長も元アメリカンフットボール日本代表だ。あくまでも求められるのは理系の知識ではなく、アイデアや企画力なのだ。

 4年前の本社建て替えを機に、創造的な労働環境も整えた。3階はコミュニケーションスペースになっている。キッチン付きカフェのような空間は、昼食、商談、会議、歓送迎会などで自由に使える。専門家を招きセミナーなども開催している。

 4階には企画・開発、海外営業、広報部門と実験・評価スペースがあり、2階には営業、営業事務、経理などの部署がある。中間にコミュニケーションスペースを設けることで、風通しのいい社風が育まれている。

 再生医療が脚光を浴びる中、今いる社員だけでは手が回らないほど相談件数が増加。「これまで採用にかける労力が不足しており、中途採用中心でした。しかし今後は新卒採用に力を入れ、次世代の人材育成に注力していきたい」と明日を見据える。

 M&Aによる新技術の獲得や、ウェブやSNSを活用し、海外に取引先を増やすための取り組みもスタートしている。次なる目標売上高は40億円。その成長は加速する。 

会社概要
創  業 1960年7月
資 本 金 9,800万円
売 上 高 27億8,000万円
本  社 大阪市北区
従業員数 30人
事業内容 プラスチック製理化学機器の製造販売
https://www.sanplatec.co.jp/