大手製造業を中心とした顧客企業の工場内の生産性向上等を目的とし、人手のかかる業務を自動化・最適化するAIソリューションサービスを提供するSpakona(スパコナ)。河﨑太郎代表は、労働力不足を解消し、高度な自動化社会を実現する「最強の未来」を描く。文=大澤義幸(雑誌『経済界』2025年3月号「~INNOVATORSイノベーターズ~新時代を創る経営者たち~」より)

「世界を最適に設計する」をミッションに掲げ、顧客企業の業務効率化や最適化、生産性向上に寄与するAI技術を使ったトータルソリューションサービスを提供するSpakona。
前身は代表の河﨑氏が東京大学大学院を卒業後、2020年8月に立ち上げたDaedalusだ。顧客企業へのAI技術のコンサルティングや、企業が新規事業を行う際の技術導入を手掛ける会社で、大学院時代の同期の服部篤樹氏(取締役兼CTO)に声をかけ、共に経営。大手企業との取引を中心に受注を増やし、24年7月にSpakonaに社名変更した。
大学院時代はCV(コンピュータビジョン)を研究し、物体検出技術や深層学習に関心を持っていた河﨑氏。起業を前提に入社したソフトバンクではBeyondAI事業に携わり、研究成果の社会実装や事業化を経験する傍ら、今の会社を設立。設立翌年の「ものづくり補助金」採択を機にソフトバンクを退社し、独立を決めた。同じ頃、服部氏は三菱重工業に新卒入社し航空機の開発等に従事。河﨑氏の独立を機に自らも退社し、本格的に今の事業に参画した。
「僕たちがチャレンジしているのは少子高齢社会における人手不足の解消です。日本の製造業の現場ではDX化が急務ですが課題も多い。例えば地方では収益性の高い企業でもAI技術者の確保が難しく、仮に優秀なAI技術者がシステムを開発しても、現場の業務理解不足から使われません」と河﨑氏は現状を分析する。
そこで同社では、大手製造業の工場の現場等での課題をAI技術やITシステムの要件定義に落とし込み、コンサルティングと併せて企業が導入できる形でソリューションサービスを提供している。
例えばアート引越センターでは、3D点群データから家具の分類やサイズ推定を自動で行い、引っ越し料金の見積もりを瞬時に出すアプリ「ぐるっとAI見積もり」を開発。見積もり時の業者の立ち合いを不要とした。また、トヨタ自動車では、ロボットアーム作動時に周辺に人がいないか、システムに異常がないか等を監視カメラで自動検出するシステムを開発した。
「アート社では相模原の研修センターで課題を体験し、トヨタでは元町工場でラインに導入する仕様をすり合わせた」と語るように、三現主義を徹底し現場でのヒアリングや体験から課題を抽出することで、顧客企業が欲するソリューションを創り上げている。
現在、同社のサービスが求められる背景として、少子高齢社会では高い給与を支払う大企業に人材が集中し、中小企業は人手が集まりづらいという状況がある。しかし、大企業に集まる人材が必ずしも優秀とは限らず、人手に頼らなくとも高い品質を担保するために、特に製造業における省人化や自動化が不可欠となりつつあるのだ。
「現在は日本がかつて経験したことのない自動化の局面に立たされています。でもだからこそビジネスチャンスがある。AI開発力×三現主義×生成AIという弊社の3つの強みを生かし、そこから世界の最適化を目指します。工場のデジタル化から始め、将来はスマートシティにまで広げたい。AIを核としたシステムの社会実装を実現します」