経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

対話を通して変化に適応し地域への貢献度をさらに高める 酒寄正太 北海道コカ・コーラボトリング

北海道コカ・コーラボトリング 酒寄正太

飲料事業を全道に展開し、社会貢献活動やサステナビリティ活動に取り組む北海道コカ・コーラボトリングは2024年3月、酒寄正太氏が社長に就任した。強固なビジネスモデルと組織力を強みに、北海道への貢献と新たな価値提供に向け、今後も歩みを進めていく。(雑誌『経済界』2025年4月号地方特集「たぎりたつ北海道」より)

北海道コカ・コーラボトリング 酒寄正太
北海道コカ・コーラボトリング 酒寄正太 さかより・しょうた

世の中の変化を敏感に捉えあらゆる活動に反映していく

 1963年の会社設立以来、清涼飲料の製造・販売を主軸に、事業を展開してきた北海道コカ・コーラボトリング。

 同社は2020年より、未来に向けた自社のあるべき姿として、「2030VISION」を掲げている。このビジョンで同社は、ブランド力と地域密着力による新たな価値やサービスの提供と、グループ全体の総合力を基盤とした新事業領域の創出で、北海道の発展に貢献し、持続的成長のための 「サステナビリティ経営」を実現することを目指している。

 昨年、社長に就任した酒寄氏は、「飲料事業は変わらない品質で商品を提供することが正とされます。しかし、原料費の高騰やデジタル化、人材の流動化など社会が変化する中で、当社の動きは変わらないままでいいのか。この先の未来に向けては、どう変わっていくべきかを社員一人一人が考えることが大切です。日々の活動から一つ一つ変えていけるように、中期経営計画を立てました」と語る。

 3カ年の中期経営計画においては、試行錯誤の24年を終え、今年は実験したことの実装の年と酒寄氏は位置付ける。

 「次のベクトルをどこに合わせるか、重要な判断が生まれる年になります。ですからこれまでの1月人事を前年10月に前倒しして、年始から新体制でロケットスタートを切れるようにしました」

デジタル活用で効率化し誇りを持って働ける職場に

 社員が「要」と考えているからこそ、働きやすい職場づくりに力を入れる。長く働ける仕組みづくりとして、シニア従業員の待遇を改善。家庭との両立をさらにしやすくなるよう、産休・育休の職員が欠員するチームに手当を新設した。

 「目指すのは社員一人一人が誇りを持ち、長く働ける環境です。誇りは自分のアイデアが社会に貢献している実感を得ることで生まれます。業務の効率化を推し進め、生まれたリソースを新たな事業の創出に充てていきたいと思っています」

 そのためにも鍵となるのがDXであり、社内のDX化はもちろんのこと、流通業界全体の動きにも対応を進める。

 社長就任前よりデジタル化を牽引する酒寄氏は、「コカ・コーラ公式アプリ『Coke ON』の道内ダウンロード率は本州よりも高く、そこから見ても北海道の生活者はデジタル化に好意的と言えます。自社アプリを利用した展開や、それに伴う機能の拡充を進めていくことはもちろん、取引先にも当社のデジタルチームがさまざまな企画の段階から参画し、事業を進めていければと思っています。北海道だけでなく、世界や社会の動向に向けてアンテナを張り、全社で前へ進んでいきたいと思います」と話す。

対話をすることが課題解決や新事業創出の鍵

 北海道の生活者のための事業を掲げる同社は、飲料事業のみならず、自動販売機や人材などを生かした地域貢献活動にも注力し、本業とのシナジーを生み出してきた。これらの取り組みを進める上で、酒寄氏が常に行動の基本に置いているのは「対話」だ。

 「お客さまや地域の方々と対話することで、社員のみでは見つけることができない地域の課題が分かってきます。当社は現在、全道27拠点と4万台以上の自動販売機を有します。つまりその数の分、地域と接点があるということ。世の中は拠点を集約し効率化を進めていく傾向にありますが、さまざまなアイデアをもって活用することで当社の強みとなります。さまざまな地域の方々と対話をする中で、新事業のアイデアも見つけていきたいです」

 昨年は、年始の能登半島地震で防災への意識が高まったことから、取り組みを強化した。一部自動販売機に備わる災害時に飲料を無償提供できるフリーベンド機能が、能登では活用されなかったという情報が寄せられたことから、防災協定を結ぶ全道179市町村に設置した災害対応型自動販売機をウェブ上にマッピングし情報提供を行った。他にも自動販売機のオペレーションスタッフが、メンテナンスで培った機械整備技術を生かし、エアコン事業者の人手不足の地域で、設置・修理対応を行った事例もある。

 こうした事業を進めていくと、各拠点それぞれに異なるノウハウが確立されていくことも多い。それらを全社で共有するため、情報共有プラットフォームの整備にも力を入れてきた。「特色ある活動が、その地域だけで終わってしまってはもったいない。ノウハウを共有することで、別の地域の課題解決につながったり、異なる事業のヒントにもなるはずです。今後はそこに、広報や技術部門なども加え、部門を超えた対話が生まれていけば」と語る。

 社員同士の活発な対話も呼びかける酒寄氏は、希望社員とランチミーティングを行っている。

 「普段はなかなか話せない部門の社員と話せるとても良い機会です。やはり、真実は現場に眠っているもの。現場の声から新たな発見も得られています」

 社員やステークホルダーとの対話を通じて得たことを可能性の手掛かりにして、北海道コカ・コーラボトリングは地域に根付き、成長を続けていく。 

会社概要
設立   1963年1月
資本金  29億3,515万4,000円
売上高  563億7,100万円(2023年度)
本社   北海道札幌市清田区
従業員数 236人(グループ1,195人)
事業内容 北海道を主な販売地域に飲料の製造および販売
https://www.hokkaido.ccbc.co.jp/