北海道銀行と北陸銀行が経営統合して誕生した「ほくほくフィナンシャルグループ(以下、FG)」が20年を迎えた。FGそして北海道銀行では、地域社会・お客さまの持続可能性に着目した取り組みに注力している。その状況について北海道銀行の兼間頭取に話を聞いた。(雑誌『経済界』2025年4月号地方特集「たぎりたつ北海道」より)
北海道銀行頭取 兼間祐二のプロフィール

かねま・ゆうじ──1964年北海道生まれ。87年慶應義塾大学経済学部卒業。同年北海道銀行入行。経営企画部長などを経て、2021年6月にほくほくフィナンシャルグループ副社長兼北海道銀行頭取に就任。
始まったGX・半導体関連のサプライチェーンづくり
── 昨年の北海道経済の状況をどう受け止めていますか。北海道と札幌市が「GX金融・資産運用特区」「国家戦略特別区域」に選定されましたね。
兼間 2024年の道内経済は、今春の試作ライン始動開始に向けた半導体メーカーのラピダス社の設備投資が牽引役になりました。半導体同様にクリーンエネルギーへのニーズが高いデータセンターなどの建設も見受けられました。そして、インバウンドを含む観光入込客数も国際線定期便数の回復とともに持ち直しの動きが明確になりました。円安などを起因とした物価高が引き続き家計の購買意欲を押し下げましたが、高い賃上げ率や定率減税の効果が徐々に顕在化し、個人消費は緩やかな持ち直しペースを維持できたと見ています。
昨年6月に北海道および札幌市は「GX金融・資産運用特区」および「国家戦略特別区域」に選定されました。
この選定は国内随一の再生可能エネルギーのポテンシャルを最大限に活用することを目的としています。地域の豊かな自然と調和した街並みを生かし、GX投資の潜在力を引き出すとともに、GX産業のサプライチェーン構築や雇用創出が図られます。この特区を活用し、イノベーションを生み出すスタートアップの創出・育成も進め、資産運用会社などの金融機能を呼び込む取り組みが推進されます。
FGは産学官金連携のGX・金融コンソーシアム「Team Sapporo-Hokkaido」のファンド・ファイナンスワーキンググループ長を務めており、地域経済に活力をもたらし、持続可能な成長を支える基盤づくりに貢献していかなければならないという使命感を持って行動しています。
── FG・北海道銀行ではこの成長機会に、いかなる取り組みをされているのですか。
兼間 まず「金融を通じた地域の脱炭素化」を進めるため、当行と北陸銀行で「10年間で累計1・5兆円のサステナブルファイナンス実行」の目標を掲げ、お客さまのニーズに対応しやすいサステナブルファイナンス商品の拡充や提案に取り組んでいます。
またファイナンスに限らず、GXセミナーの実施、J-クレジットの創出支援、排出量の見える化など、地域の脱炭素化に向けてソリューションメニューの拡充を図り、提供しています。
当FGでは、基幹系システムMEJARへの参加行(横浜銀行、東日本銀行、七十七銀行)および参加予定行(広島銀行)とも、「MEJARサステナビリティソリューション連携」を締結し、ソリューション力の高度化に取り組んでいます。
一昨年以来、半導体関連の進出企業に対する不動産や協力企業等の紹介、従業員確保のためのビジネスマッチングや物件紹介などを実践しています。北海道新産業創造機構などの関係団体や地元自治体等とも協力関係を構築し、資金面・情報面を通じて、半導体関連産業におけるサプライチェーンの基盤づくりや、産業集積に伴うまちづくりに向けた支援を行っています。
持続可能な社会の実現に向け協業や自社の専門性も追求
── 昨年7月、コンビニエンスストア「セイコーマート」の道内約600店舗に北海道銀行ATM(名称:道民のATM)の設置を発表しました。その狙いは。
兼間 地元の生活インフラとして親しまれているセイコーマートの店舗では、レジで税金や公共料金の払込もできます。ここに現金の払出・預入・振込ができるATMがあれば、大抵の金融サービスはセイコーマートの店舗で完結できます。すなわち、北海道という広大で人口密度が低い地域で銀行店舗が近くになくてもお客さまの利便性が確保できる方法を最優先に考えたサービス提供のあり方の一つが、「道民のATM」です。
このATMは北海道銀行と北陸銀行のみならず、提携金融機関のキャッシュカードであれば、平日午前8時45分~午後6時は利用手数料が無料となるなど、通常の当行ATMと同様の手数料体系でご利用が可能です。多くの道民の皆さまにこの利便性を共感してもらえるように取り組んでまいります。
── FG・北海道銀行は、今後どのような方向性を示していきますか。
兼間 昨年2月にほくほく札幌ビルが竣工。北海道銀行本部・本店法人営業部や、北陸銀行札幌支店、ほくほくTT証券札幌営業部などグループ各社が入居するなど、FGとして象徴的な空間が誕生しました。7月には事業承継・M&A・経営コンサルに特化したほくほくコンサルティングがFG100%子会社として営業を開始。これまで北海道と北陸の両行で培ってきたノウハウを集約するとともに外部人材も登用し、より専門性の高いサービス提供を実践する体制を構築しました。
FGの総合力強化につながる取り組みを実践してきた現在の中期経営計画「Go forward with Our Region」は本年3月で期限を迎えます。これまでの実績・プロセスの振り返りを十分にした上で、新年度から新たな現在の中期経営計画に基づき、グループ職員一人一人が同じ目線・考え方で仕事に取り組み、地域の未来に貢献できる存在でありたいと考えています。