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組織力の高さを最大限に生かし北海道から全国の需要に応える 諏訪原大作 スリーエス

スリーエス 諏訪原大作

官公庁向けシステムを中心に、北海道内外の多業種のシステム開発の実績を持つスリーエス。アイ・エス・ビーグループ内の連携に加えて独自の取り組みを強め、売上高は年々増加。「北海道ナンバーワンのIT企業」という目標達成に向け、さらなる飛躍を目指す。(雑誌『経済界』2025年4月号地方特集「たぎりたつ北海道」より)

スリーエス 諏訪原大作
スリーエス 諏訪原大作 すわはら・だいさく

全国からの受注増で着実な成長を実現

 スリーエスは2024年、売り上げ27億3千万円を達成し、7年連続の増収・増益を実現。26年の売り上げ30億円達成を目標に設定した3カ年中期経営計画の初年度は順調な滑り出しとなった。

 好調の理由は、主力分野である官公庁向けシステムの安定的な成長だ。主に首都圏の自治体から仕事を受注してきた同社だが、全国で自治体システム標準化が本格化する中、昨年は九州の企業と協力関係を結び、九州の自治体標準化業務も受注することができた。

 諏訪原社長は「リモートで業務対応できる時代、本州や九州の仕事を北海道で行うこともますます増えていくと見込んでいます。自治体から直接依頼を受けて行う業務、メーカー傘下での業務、どちらも増えていくと考えています」と語る。

 「自治体関連業務では、得意とする福祉分野のシステム開発を中心にメーカー等、大手企業があまり取り扱わない規模の業務に勝機を見いだしています。お客さまと直接やり取りを重ね、ノウハウを積み上げて『自治体システムならスリーエス』と認識してもらえるようにしたいです。

 また、今期はISBグループ連携による自治体標準化対応も行う予定です。ISBの得意とする保険システム『介護保険システム、後期高齢者システム、国民健康保険システム等』と当社の得意とする福祉システムを自治体標準化向けに体制強化を図り、全国自治体向けに受注拡大を図っていく予定です」

5年後の目標達成を見据え時代のニーズを敏感に捉える

 DX化で需要が高まる金融分野への展開も行った。外国送金に関するシステムの新フォーマットへの移行対応業務などを受注したことにより、想定以上の売り上げを増やすことができた。

 新事業への挑戦の手も緩めない。宇宙産業が加速する中、昨年秋から防衛や宇宙開発を扱うメーカーとの取り引きを開始。今年から宇宙開発分野に本格参入し、事業分野を広げる予定だ。

 「IT業界は好調と思われていますが、浮き沈みの激しい業界。そこで生き残るためには、時代に合わせて、さまざまな分野に柔軟に対応することが重要です。今後もグループやビジネスパートナーとの連携体制は崩さずに、需要のある分野に人材を充て、地道ですが着実に、成長を続けたい」

 その先には、30年の売り上げ50億円の目標を掲げる。そのための課題として諏訪原社長が挙げているのが営業面の強化だ。大幅な組織改革が必要と考え、26年に営業本部の新設を予定し、そのための組織整備に今年から取り掛かる。

 「管理本部、開発本部に、営業本部を加え、3本柱で組織を支えて30年に向けて成長を加速させていきたい」と力を込める。

人材獲得の要となる社内体制の整備にも注力

 IT業界の人材不足が顕著となっている昨今、同社は安定的な人員確保に向け、投資を行ってきた。給与については中期経営計画に定めた25年の給与改善率を上方修正し、5%アップ。さらに賞与の上乗せなども進め、東京や大手企業に匹敵する給与水準を目指しているという。

 今春には開発オフィス移転も予定している。JR札幌駅から徒歩1分の好アクセスで、面積は現開発オフィスの3倍程度の約200坪。社員が「行きたくなる」「楽しみながら働ける」ことを新開発オフィスのコンセプトとし、フリーアドレスなど社員交流が生まれる仕組みも取り入れる意向だ。

 採用においては、昨年からグループの人事と連携し、即戦力となる高専卒の人材採用を開始。今年度は1人の入社が決まった。

 「高専生向けの企業説明会への出展や学校訪問など、採用活動に本格的に力を入れています。北海道出身の方は道内就職を希望する傾向がある印象です。道内企業としての魅力をアピールし、北海道の人材を確実に確保したいと思います」

 また女性の採用拡大など、ダイバーシティの推進にも取り組んでいく。

 採用後の教育体制にも意識を向ける。新人研修はグループ会社に委託し、費用や人的コストを圧縮しつつ、入社時期の異なる社員にも対応しやすくするなど魅力を高めた。大手メーカーの外部研修への参加も積極的に推進し、DX関連など社員が新たな知識を習得するための体制も整えている。

 離職による人材減への対策にも乗り出している。離職した社員や各現場へのヒアリングを行った結果、「社内全体のコミュニケーションの場がなく、横のつながりが少ない」ことが課題として見えてきた。そこで、リモートワークの普及で減ってしまった、対面のコミュニケーションを増やしていくことを考えている。

 諏訪原社長は「新しいオフィスに移ることで出社率が上がり、社員同士の関わりがもっと増えることも期待しています。コロナ禍で縮小していた社内イベントを、少しずつ元に戻していくことも計画しています」と今後の展望を話す。

 「事業だけでなく、会社も変わっていかなければ成長できない時代」と先を見据える。強みである組織力をさらに強固にしながら、同社は掲げた高い目標の達成に向け、大きく前進していく。 

会社概要
設立   1979年4月
資本金  2,000万円
売上高  27億3,000万円(2024年)
本社   北海道札幌市東区
従業員数 151人
事業内容 ITシステム、ソフトウェア開発
https://www.sss-i.co.jp