経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

時代を拓く技術を国内外で共創 脱炭素を第一に飛躍を続ける 會澤祥弘 會澤高圧コンクリート

會澤高圧コンクリート 會澤祥弘

国内外の研究機関や企業と協働し、最先端技術を取り入れた革新的な製品を生み出してきた會澤高圧コンクリート。脱炭素の実現を第一に、コンクリートの高度化とネットワーキングに力を注ぎ、これからの時代に求められるソリューションの提供を目指す。(雑誌『経済界』2025年4月号地方特集「たぎりたつ北海道」より)

會澤高圧コンクリート 會澤祥弘
會澤高圧コンクリート 會澤祥弘 あいざわ・よしひろ

コンクリートの高度化で社会へソリューションを提供

 會澤高圧コンクリートは、「脱炭素」を第一ミッションとして、祖業のコンクリート製造に先進的な技術を掛け合わせてきた企業だ。社長の會澤祥弘氏は、この取り組みを「三段ロケット」に例える。第一段は、バクテリアの代謝機能によって、ひび割れなどの破損を自動修復するコンクリート「Basilisk」だ。コンクリートを長寿命化させ、生産・修復のコストを減らすことで脱炭素に貢献する製品で、2020年にローンチを済ませ、現在は普及を進めている。

 二段目は、マサチューセッツ工科大学(MIT)と共同開発する「ec3蓄電コンクリート」だ。コンクリートは本来絶縁体だが、製造時にできる細かい孔(細孔空隙)の中に、導電性のある炭素系微粒子「カーボンブラック」を添加することで、電気を通す電導体となる。ec3蓄電コンクリートは、セパレーターを用いて内部のイオン伝導性を確保すると、急速かつ大容量の充放電・蓄電が可能なスーパーキャパシターとなり、蓄電池のように利用することができるという。脱炭素推進の上での課題の一つが再生可能エネルギーの発電量のコントロールだ。この解決策となり得る蓄電池の開発が世界で激化する中、本製品は新たなアプローチを可能にする商品であり、再生可能エネルギーを強みとする北海道にとっての追い風にもなるだろう。

 「まだ検証段階ではありますが、日本の住宅の基礎コンクリート1軒分(約15㎥)を蓄電コンクリートにした場合、昼間に住宅用太陽光発電システムで得られた電力で夜間電力を賄えるようになるという試算があります。ZEH(ゼッチ:ネットゼロエネルギーハウス)の実現に大きく寄与できると思います」と會澤氏は話す。

 同製品にはもう一つの特徴がある。電流を流した際、カーボンブラック内の炭素原子と電子の衝撃により熱が発生し、「発熱するコンクリート」にもなるという点だ。積雪寒冷地の融雪舗装や、住宅の床・壁材としての利用が見込めるほか、電子や原子の分布を任意に変えることで、一部だけを冷たくすることもできるため、データセンターの冷却設備などにも利活用が可能だという。

 24年12月18日~25日、25年2月には札幌市と共催で、大通公園での実証実験を行った。蓄電コンクリートのパネルを置き、使用電力や効率的な融雪方法、コストパフォーマンスなどを検証するというものだ。イルミネーションやさっぽろ雪まつりの開催に合わせたことにより、多くの来場者の目に触れ、技術をPRすることができた。

 「既に国内の約40社から問い合わせが届いており、流通店舗の駐車場や、駅と大型複合施設をつなぐ道路など、さまざまな場面で実用化のための実験が始まりつつあります。これらのプロジェクトを通じ、蓄電コンクリートを軸にした、新しいプロダクトの具体的なあり方を提示していきたいと思っています」

世界とつながりイノベーションを生み出す

 24年4月には、同社主催のテックイベント「結」の中で、MITとの共同研究コンソーシアムを設立。蓄電コンクリートの社会実装に向けて、開発資金の調達・管理、ライセンスビジネスの設計管理など、国内外での仕組みを整えた。

 MITのみならず、世界の研究機関や異業種と協働することを同社は重視してきた。所属機関や分野を超えて研究者と彼らが持つ技術が結び付くことで、世の中を変えるようなイノベーションが生まれると信じるからだ。そして、そこでの同社の役割は、組み合わせた技術を使って試作するR&Dだけではないと會澤氏は語る。

 「試作で良いものが生まれれば、産業として普及させるために、量産を行う企業や、製品を事業に取り入れるために投資をしてくれる企業、製品化した後の事業を設計・デザインする組織など、より大きな結び付きが必要になります。交流の場となるプラットフォームをつくることが最も重要で、当社はそうした役割も担っていきたいと考えます。『結』というイベント名にはその思いを込めました。北海道のような地方から直接海外とつながり、挑戦していくことも可能な時代。そうした結び付きを活発化していけたらと思います」

脱炭素のブレークスルーを新たな取り組みに挑む

 同社が次に目指すのは、コンクリートという素材を使って二酸化炭素そのものを分解することだ。二酸化炭素を直接的に分解する研究は国内外でされているが、その技術を活用した製品の社会実装例はまだまだ少ない。會澤氏はこの分野にも挑みたいとしている。

 「目指すのは、いわば『光合成をするコンクリート』の開発。現在はカーボン・オフセットとして、都市で発生した二酸化炭素を森に吸収させようと、皆取り組んでいます。しかし、このコンクリートが実用化すれば、都市の道路や建物が森のように二酸化炭素を吸収分解してくれます。活用する技術の基盤は固まりつつあり、研究機関などと協働して開発を進めています」

 イノベーションの牽引役として探究と挑戦を続ける會澤高圧コンクリート。今後も、ブレークスルーを生む技術開発で新たな価値を提示していく。 

会社概要
創業   1935年4月
資本金  6,390万円
売上高  232億円(単体)
本社   北海道苫小牧市
従業員数 650人
事業内容 コンクリート製品の製造・開発・販売
https://www.aizawa-group.co.jp