経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

強みはものづくりとITのクロス 優れた人材を創出し生産性を向上 正木慎二 パーソルクロステクノロジー

パーソルクロステクノロジー 社長 まさき しんじ 正木慎二

自動車・電気・建設機械の設計・開発・実験のものづくり領域からIT・DX領域まで多様な技術エンジニアが所属するパーソルクロステクノロジー。「エンジニアのより良い“はたらく機会”の創出」と「人と組織の生産性向上」をミッションに事業成長を実現していく。(雑誌『経済界』2025年5月号「注目企業」特集より)

パーソルクロステクノロジー 社長 まさき しんじ 正木慎二
パーソルクロステクノロジー 社長 まさき しんじ 正木慎二

豊富な人材で技術課題を解決。今後は請負に注力

技術領域を横断したテクノロジー活用のニーズと、多様な働き方を求めるエンジニアの増加を受け、2023年にパーソルグループ企業3社が合併し同社は誕生した。

「この2年間はいわば準備期間としての投資フェーズでしたが、設立3年目となる今年は本格的な成長・収益化フェーズに入りました。人材派遣ビジネスをベースにしつつもソリューションビジネスへのシフトを戦略に定めています」と正木慎二社長は話す。

同社の沿革を見ると、商用車メーカーの技術子会社をはじめ、多様なバックグラウンドを持つ企業が集まったことで、「技術のクロス」が可能となった。自動車やロボットなどものづくり領域のエンジニア、生成AIやシステム開発などIT領域のエンジニアが集い、技術の融合が進んでいる。エンジニアのレベルに磨きがかかり、コンサルティングなどの上流工程への領域拡大と従来の強みである設計・開発につなげ、End to Endでの支援体制も整えているのが強みだ。

具体的な事例としては、「空飛ぶクルマ」「物流ドローン」の開発・製造を手掛けるSkyDrive社とのスポンサー契約や、久留米工業大学インテリジェントモビリティ研究所とLe DESIGNと共同開発した小型自動運転モビリティ「PARTNER MOBILITY ONE」など、話題の製品を手掛けている。

「派遣よりも請負の比率が高いのも他社との差別化につながっている」と正木社長。例えば自動車事業で、シミュレーションによる設計・開発を行った後、車両実験(フィジカル・バーチャル)や評価まで行うことができるのは、高い技術力に裏付けられている。

「当社ならお客さまの技術課題も人材不足も解決できるので、派遣ではなく一緒にビジネスをしましょうという商談が増えてきました。30年までに請負の比率を70%にして収益をアップし、エンジニアの賃金にも還元していきます」

エンジニアの教育と生産性向上市場に着目

同社は現在、技術派遣業界で競合から優位に立つための2つのミッションを掲げている。「エンジニアのより良い“はたらく機会”の創出」と「人と組織の生産性向上」だ。

前者の実現に向けては、エンジニアの育成強化を重視している。事業創出・社会実装などのビジネススキルと技術スキルの両方を学べる環境を用意し、技術スキルとともにマーケティング力や提案力を身に付けることで、エンジニアとしての価値を高めることが狙いだ。

名古屋と大阪のオフィスには実践型研修設備を有するラボも開設している。専用機器を使用することで創造的思考や問題解決の機会を提供するのが目的だ。部門間や個人間でのコラボレーションとコミュニケーションを促進し、偶発的な「クロス」を誘発する環境になっている。

一方、2つ目のミッションである「人と組織の生産性向上」では、多様な技術の「クロス」により、業界とともに生産性向上を目指していく。

「エンジニアの人材派遣市場は 約2兆円ですが、新たに生産性向上市場が生まれると考えています。特にSI、AI 、IoT、自動化、電動化関連市場を注視し、2つのミッションを実現していきます」

シニアのエンジニア派遣にも力を入れ始めている。定年後の再雇用が終わった65~75歳を主たるターゲットとし、就業日は柔軟に設定。週3~4日だけ働くイメージだ。

「特に名古屋は機械系のエンジニアが、大阪は電気系のエンジニアが多く活躍しています。シニアの方は即戦力ですから、熱心にお誘いしています」

正木社長はシニアに限らず、障がいがある人や外国籍の人も「パーソルを通して働いて良かった」と言ってもらえる世界を目指している。

「グループビジョンの『はたらいて、笑おう。』を続けていくからこそ100年続く企業になると考えています」

年間1千人超を採用。営業利益は20%成長を目指す

2023年12月から営業開始した新名古屋オフィス。併設のラボには実践型研修設備が整う
2023年12月から営業開始した新名古屋オフィス。併設のラボには実践型研修設備が整う

同社は30年に向けて、エンジニアリング領域を成長基盤として強化しつつ、IT・DXソリューションを中心とした事業拡大による成長を目標としている。年間1千人超のエンジニア採用を計画し、インフレの時代に合わせた待遇改善も約束する。

「エンジニア数は現在約1万2千人ですが、30年までに1万8千人を目指します。物価高プラス1%の昇給を実現し、エンジニアの“はたらくWell‐being”創造に貢献していきます」

財務指標では、営業利益率12%、売上高の年平均成長率(CAGR)は10%を維持し、営業利益額のCAGRは20%実現を目指す。

「給料を上げ続けられる会社だけが生き残ることができます。そのためにも技術のクロスによる生産性向上は大きなテーマになります」 

会社概要
設立 1979年10月
資本金 4億9,500万円
本社 東京都新宿区
従業員数 1万2,231人(2024年7月1日時点)
事業内容 自動車・航空宇宙関連機器・家電・ロボットなどの設計・開発・実験における請負・派遣サービス、ITシステムやアプリケーションのシステム開発・インフラ設計・運用における派遣・準委任・フリーランスサービス、AIやDXを活用したIoT、モビリティサービスの導入支援などのテクノロジーソリューション事業
https://persol-xtech.co.jp/