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中小企業向けOA機器で独自色 自社ブランドで手厚いサポート 内藤芳郎 ワイズ

ワイズ 社長 ないとう よしろう 内藤芳郎

中小企業向けにOA機器のOEM生産から販売・リースまでを幅広く手掛けるワイズ。自社ブランドの「STEALTHONE」(ステルスワン)をはじめ、自ら機器の仕様や設計を担っている誇りが大手メーカーや商社とは一線を画した技術力と信用力を生み出している。(雑誌『経済界』2025年5月号「注目企業」特集より)

ワイズ 社長 ないとう よしろう 内藤芳郎
ワイズ 社長 ないとう よしろう 内藤芳郎

ターゲットは「社員規模30人」大手にできない追加実装も

ワイズの設立は1995年。内藤社長は勤務先の大手商社でOA機器販売の事業責任者を任されていたが、営業方針を巡って社内で摩擦が生じ、仲間14人と独立を果たした。

「今、考えると若気の至り(笑)。もっと中小企業向けにOA機器を広く提供したかったのですが会社と折り合いが付きませんでした。営業はそれほど心配していませんでしたが、販売・工事・メンテナンスなど各部門が充実していないと大手に対抗できないので設立から半年後には工事会社を立ち上げまし
た」

同年は「ウィンドウズ95」発売もあってインターネット時代が幕を開け、OA機器にも追い風が吹いた。

「ウィンドウズ95の発売によって通信ネットワーク時代が来ると確信していました。当社のメインターゲットは設立時から現在まで中小企業一筋、社員規模は30人前後です。それくらいの小規模オフィスには情報システム部のような管理部門も当然ありませんので、われわれのような専門アドバイザーが必要です。OA機器は決して安価なものではなく、専門知識がないと適切なスペックと価格が分かり難いものです。もともとネットワーク機器は大手メーカーが大企業向けに構築することを想定したものなので高価なことは否めませんが、少しずつダウンサイジングして中小企業でも購入しやすい金額で提供することがわれわれの使命であると考えています」

ワイズはOEMメーカーとして設計から製造まで自社ブランドのOA機器を取り扱っているのが強み。生産は韓国や台湾など海外の工場で行っている。

「大手メーカーは簡単に仕様や設計を変更してはくれませんが、われわれには可能です。販売店は全国に800社ほどあり、『こういう機能は追加できないものか』とユーザーさんの声が届きます。その中で本当に必要とされている機能はどんどん実装していきます。大手にはできない隙間を埋めるような仕事です」

ライセンス更新をパッケージ化。ユーザーからの声を解決に導く

ワイズの代表ブランド「STEALTHONE」のシリーズの中でも高い評価を受けている機器の一つが「セキュリティハブ」と呼ばれる「M220」だ。不正通信のみを自動ブロックし、サイバー攻撃を拡散させない機能を持たせた。拠点に1台設置すれば万が一、マルウェアに感染しても通常通信はそのままに攻撃性があるトラフィックのみを検知し、それらをシャットアウトする。

「セキュリティハブのメーカーはわれわれを含めて2社しかありません。中小企業は大手とはネットワークの組み方も違うので、ハブにはより高度なセキュリティレベルが求められています。一方でセキュリティコストは『保険』なのでアタックが全くないと性能を疑われてしまうこともあります。逆にサイバー攻撃された経験がある企業はとても用心深くなったり、予算に応じて最適なセキュリティ提案をしていますが、意識の違いが難しいところです」

サーバーを置いて、クラウド上に保管する仕組みも求められたため、自前のクラウド基盤もOEMで構築している。

「中小企業が一番使っているクラウド環境はドロップボックスとグーグルドライブですが、一定の容量を超えると有料になります。ならばわれわれが接続できる環境にしようと堅牢なデータセンターと協業して構築しました」

機器の性能以外にもユーザーからはさまざまな声が寄せられる。ソフトのライセンス更新もその一つ。

「OA機器は通常5年リースで、中のソフトにはライセンス更新が必要ですがこれはユーザーには煩雑な作業でした。更新アラートが届いてもウイルス感染と間違えて閉じてしまうこともあります。このため、リース期間中はライセンス更新も含めたパッケージサービスとしました。ライセンス更新を忘れることなく使えるのでとても喜ばれました」

このほか、パソコンやスマートフォンの購入まで同社には中小企業からありとあらゆる相談が寄せられる。

「売りたいものを売るだけでは商売は成り立ちません。期待されているのは『いかに正確な情報を的確に提供できるか』。営業部門はそれらに応えることで信用を高めていきます。たとえ他社製品でも、求められれば販売することもあります」

DX化の波もあって足元の事業環境は好調に推移しており、今年度の売上高は前年比で約10%増の50億円を超える見込みだ。

「成長率は10%以上を維持しないといけません。拠点・採用も増やし、来春には従業員数も200人近くになります。『営業なら体育会系』といった画一的な人材は求めていません。いろいろなタイプの人間が集まってこそ、相乗効果が生まれ、多様なアイデアが出ます」

30年にわたりOA機器で中小企業を支えてきたワイズ。サービスを拡充し、さらなる飛躍を目指す。

「中小企業の喫緊の課題は人手不足です。従業員を募集しても零細企業に就職を希望する人は少なく、後継者もいません。これに対応するためには外国人人材の積極的な採用が必要で将来的には人材紹介業にも乗り出したい。中小企業が弱っていけばわれわれも同じく衰退します」

国内企業の大部分を占める中小企業の発展は日本の成長に直結する。ワイズの挑戦はこれからだ。 

会社概要
設立 1995年4月
資本金 5,000万円
売上高 45億円 
本社 東京都千代田区
従業員数 約153人
事業内容 OA機器販売・ネットワーク機器のOEMメーカー
https://ys-net.ne.jp/