純国産セキュリティ製品を開発するパスロジ。法人向け多要素認証ソリューション「PassLogic」は企業や行政・教育機関などが導入。累計発行ライセンス数は114万以上に達する。コンシューマー向け認証サービス「4Login」は、アニメや音楽業界とのコラボも推進中だ。(雑誌『経済界』2025年5月号「注目企業」特集より)

長年にわたり支持される、純国産セキュリティ開発企業
今年25周年を迎えるパスロジは「マトリックス方式を利用した知識認証によるワンタイムパスワード」という独自技術で「PassLogic(パスロジック)」を販売する。顧客に長く支持されてきた理由は、「セキュリティを100%に近づけつつ、ユーザー負担を下げる」という点も大きい。
「使い勝手がよくないと浸透しないので、ユーザビリティは徹底してブラッシュアップしてきました。空気のようにそこにあり、ユーザーになじむサービスです。気軽に使えて、安全なセキュリティを研究・開発してきました」と小川社長は話す。
同社は現在120件超の特許技術を持つが、技術を特許化するまでのプロセスにも強みがある。高度な暗号化のシステムの中には、開発当時は脚光を浴びなかった技術も多い。そのような過去の知見に新たな角度から光を当て、同社独自の技術として進化させている。それらを市場のニーズに当てはめ、適切なソリューションとして提案しているという。
創業当初は特許ライセンスのみのファブレス企業を目指していたが、2006年に社名をセキュアプロバイダからパスロジへと変更し、自社開発を推進する方針へ転換した。
「当社は自社開発よりも研究開発に主眼を置いていました。営業力のある大手企業と協同することで、自社技術の早急な展開を目論んでいたのです。しかし、ライセンス交渉の煩雑さ、顧客との距離により異なるニーズ把握の難しさに直面しました。当社の技術をより世の中に広めるためには、自社開発が適切と判断し現在に至ります」
18年には東京証券取引所のTOKYO PRO Marketに上場。20年には「PassLogic」の累計発行ライセンス数が100万を突破し、業務を拡大していった。

新製品「4Login」と財団設立で新しい社会を
次なる25年に向けて新製品の開発にも力を入れる。中でも注力しているのがコンシューマー向けの「4Login(フォーログイン)」だ。セキュリティ・認証・証明などのインフラとしての側面と、コレクションやNFTなどのソーシャル的な楽しみという側面を併せ持ち、流行中の「推し活」にも使えるという。
「『推し』というジャンルでは、コレクション、イベント、ランキングなどが重要なファクターになりますが、『デジタルバッジ』を発行することで、推し関連サイトを横断的にユーザーが楽しめる仕組みを自由・安全・安価でつくることができます」
推し活を楽しむ方法は多岐にわたるため、ユーザーやサイト側が、より面白い使い方を考え出し、盛り上がっていくことを期待している。
「今まではセキュリティやIT業界とのお付き合いがメインでしたが、アニメや音楽業界とのコラボレーションができるのも強みになっていくと考えています」
さらに今年は、小川社長個人の社会貢献事業としてICT平和財団を設立する。これはパスロジの活動とは一線を画し、情報社会の安全で健全なコミュニケーションを推進する環境を構築していく。昨今はSNSの発言で炎上するケースが増え、実名での発言にリスクを感じる人が多い。そこで匿名かつ本人が特定できるインフラIDシステムを開発し、責任を持ち発言しやすい社会をつくっていくのが財団設立の目的だ。
「匿名性には悪用のリスクも存在し、サイバー犯罪やオンラインハラスメント、デマの拡散などが懸念されます。そこで匿名でありながら身分や資格を証明できる、トラブル発生時に本人が特定できるシステムやサービスを開発・提供していきます。翻訳やAIアシスタント付きの討論システムも提供します」
公共性が高いシステムのため、運用は会社ではなく財団法人で進めることにした。開発はパスロジや他のIT企業に委任し、スポンサーも募る。拠点は茨城・鹿島神宮隣接地で、地元の文化・芸術的側面も活用し、財団の広報活動を強化していく。
セキュリティで社会に貢献し1千年継続できる企業へ
小川社長は「陳腐化せず将来も利用される技術」により、1千年続く企業の社内体制の整備も進めてきた。
「時代の変化に自動的に追随する仕組み、属人化しない業務のあり方、社長に依存しない体制を重視しています。技術やサービスは変化のスピードが早く、型通りに教えることが難しい。社員には自発的行動とセルフマネジメントが求められますが、当社はそれができる社員が揃っています」
同社の強みは高い技術力と製品力にある。サービスの展開を加速するべく人員も増員している。
「今年は4Loginでコンシューマー向けにブレイクしていきます。パートナー企業のアイデアをお借りしながら新しいトレンドを生み出し、社会的にインパクトを与え、成功の輪を広げていきます」
会社概要 設立 2000年2月 資本金 1億円 本社 東京都千代田区 従業員数 52人(アルバイト含む・2024年12月31日時点) 事業内容 セキュリティソフトウェア開発販売 https://www.passlogy.com/ |