半導体製品やモジュール部品などの評価・テスト工程において重要な役割を担うテストソケット。SDKは創業以来、優れた技術力と顧客の要望に柔軟に対応する姿勢で高い評価を得てきた。髙田昭人社長にこれまで培ってきた同社の強みと、将来の飛躍に向けた展望を聞いた。(雑誌『経済界』2025年5月号「注目企業」特集より)

テスト工程で重要な役割を果たすテストソケット
「当社は今、第2次成長期に突入しています」とSDK社長の髙田氏は力を込める。同社は2006年2月に現会長の池田修一氏が創業。半導体製品やモジュール部品などの評価・テスト工程で用いられるテストソケットを主力商品とし、顧客から高い評価を得てきた。今後は得意としてきた領域に加え、コア技術を生かせる分野にも積極的に進出する。
「テストソケット」と聞いてもあまりピンとくる向きは少ないかもしれないが、半導体製品などとテスト装置を接続するインターフェースとして用いられ、精密なテストを実施するための重要なツールだ。近年ではスマートフォン用カメラモジュールのテストで需要が高まっているほか、安全性を重視する車載用センサーのテストなど、高い精度と信頼性が求められる分野においても必須のツールとなっている。テストソケットの精度は顧客製品の品質担保はもちろん、虚報など歩留まりにも大きく影響するため、コスト削減の観点からも重要と言える。
対象となる製品の評価・テストの目的によって異なる制約条件を満たし、対象製品の正しい着座位置と安定した電気的導通部のコンタクト性をいかに確保するかが技術の肝となる。SDK製テストソケットの特徴は、顧客の高い要求水準に応えられる確かな接触技術力と長期間使用できる耐久性である。さらにピン先端にはんだなどの異物が転写することによって発生する誤測定を防ぐ技術といったノウハウが結集している。
顧客製品の開発プロセスごとにテストニーズや製品形状が異なるため一点ものや、難易度の高い要求も多いが、一つ一つの課題に真摯に向き合って解決策を導き出す。
「SDKの頭文字は創業の地、藤沢にちなみ、『Shonan Denshi Kogyo』だが、創業者の池田氏が日本電産永守会長の名言から『すぐやる(S)』『できるまでやる(D)』『必ずやる(K)』を基本精神とした。この姿勢が私たちのDNAです。どこに相談してもできないと言われて困っている、というお客さまに、こうすればできます、と回答する時はこの上ない喜びです」
長年の経験と専門知識に基づく職人技も技術力の源泉だ。池田氏は外資系バーンインソケットメーカーに技術職として勤務していた経験を持ち、顧客の課題を聞き取る中で、柔軟に要望に応えたいと感じたことが起業のきっかけとなった。現在、社内では半導体メーカーでテストソケットのユーザーだった人材が技術部長として若手設計者をリードし、良いチームの形ができている。
例えばカメラモジュールのテストではレンズとセンサーとの光軸を正確に合わせる必要がある。従来はテスト装置側で行っていた位置合わせの機能をソケット側に取り込む片寄せ機構を提案。装置側の負荷を低減、トータルコストの抑制に貢献した。
「結ぶ」をキーワードに提案領域を拡大中
23年10月にSDKは三井物産、三井住友銀行、日本政策投資銀行の3社が共同で設立した投資事業会社であるMSD企業投資が運営するファンドに株式を譲渡し、新たな経営体制を整えた。池田氏から経営のバトンを引き継いだ髙田社長は、強みである技術力をベースに、一層の成長を目指す。
プリント基板の設計や検査対象物をセッティングするステージやアクチュエータなど領域を広げた提案を行っている。
「現在は全社的に『結ぶ』をキーワードに掲げています。テストソケットで対象物とテスト装置を結ぶだけでなく、対象物とテスト装置周辺の領域を結び、全体最適化する製品開発やご提案を進めていきたい」
国内市場だけでなく海外進出にも積極的な姿勢を見せる。韓国や中国など、顧客企業の移動に合わせてすでに拠点進出しているが、最近ではベトナムやインド、タイなどへの拠点展開も検討中だ。
「顧客と地域によりニーズが違うが、お客さま満足につながることと、拠点を任せられる人材を充てることができれば積極的に進出したい」
さらにバーンインソケットの販売を開始する。ここでも「お客さまのご要望をふんだんに盛り込んだ汎用のバーンインソケットに仕上げていく」とSDKらしさを忘れない。
将来的に会社が目指す姿についてはこう話す。
「これまでは主に創業者が力を発揮して会社を成長させてきましたが、これからの第2次成長期は全社員が活躍できる場を創ることで、自由な新しいアイデアが生まれ、それを形にする企業へと進化していきたい。日本のものづくり力向上のお手伝いをしている実感ができて、仕事の領域は小さくても、なくてはならない会社で在り続けたいです」
半導体産業をはじめ、国内の製造業を取り巻く環境が日々変化する中でもベースとなるのはものづくりの力だ。SDKは技術力と柔軟性に、こだわりを持ったユーザーを徹底的にサポートしていく。

会社概要 設立 2006年2月 資本金 2,000万円 本社 神奈川県横浜市戸塚区 従業員数 60人 事業内容 半導体・モジュール部品等の検査機器用テストソケットの設計・製造 https://www.ksdk.co.jp/ |