「身近な存在の社長でいたい」トップ交代で新たな成長へ

熊本県屈指の住宅メーカー、シアーズホームグループＨＤで２０２５年６月、トップ交代があった。新たに就任した橋本葵社長は、従業員にとって身近な存在でありつつ、明確な中長期目標を掲げる。（雑誌『経済界』2026年1月号より）

シアーズホームグループＨＤ　橋本 葵のプロフィール

施工実績は１万棟超 25年夏、創業者が事業承継

　シアーズホームグループＨＤは、シアーズホームを母体とする熊本県の住宅メーカー。顧客ニーズに合わせた商品の価格帯を設定し、「松竹梅戦略」として、２５００万円ほどの注文住宅から１９００万～１５００万円の企画住宅・建売住宅までを手掛ける。

　福岡県、佐賀県、鹿児島県にも事業エリアを広げ、施工実績は累計で１万棟以上。特に熊本県内でのシェアは10％を超える勢いで、圧倒的な存在感を見せている。

　２０２２年には持株会社体制に移行。中核のシアーズホームのほか、ジャストホームやシアーズアセットビジネスなど10社を傘下に持つ。

　25年６月、創業者の丸本文紀氏が70歳を迎え、事業承継のため相談役に就任。後任として長女の橋本葵社長がトップに立った。

　橋本社長は12年に入社し、19年に取締役、21年に常務を経て、24年５月からシアーズホームバース社長を務めていた。現在はグループ４社の社長を兼任している。

　「従業員６００人の３００億円企業グループを率いることになりましたが、気負いはありません。貴重な機会をいただいたので、楽しみながら挑戦していきます」と橋本社長は語る。

　自身については「従業員にとって身近な存在でいたい」とし、日頃から従業員とのコミュニケーションを密にしている。業務に関する内容だけではなく、何気ない話題から誕生日のお祝いのメールまで、積極的に働きかけている。ホールディングスの社長就任を機にグループ従業員全員との面談も実施し、個人と業務への理解を深めている。

２期連続で増収増益 29年に年商４００億円へ

　シアーズホームグループＨＤは連結業績が好調で、24年４月期は売上高が前期比８・６％増の２８４億８千万円、経常利益は83・８％増の19億７千万円。25年４月期も売上高が同８・６％増の３０９億３５００万円、経常利益が20・６％増の23億７５００万円と、２期連続で増収増益となった。

　牽引役は前述の「松竹梅戦略」に基づく豊富な商品のラインナップ。建売住宅の「アイパッソの家」や企画型省コスト住宅の「ホッとハウス」、メインである注文住宅も、自社商品だけでなく、ＦＣ加盟の「桧家住宅」なども展開している。中でも24年秋から福岡エリアで販売している高性能住宅「育ｈｕｇ：（ハグ）２・０」は、断熱等性能等級７（ＨＥＡＴ20Ｇ３グレード）と世界水準を誇り、「エアコン１台で過ごせる家」として注目されている。

　このほか、熊本よりも単価が高い福岡で売上高が伸びているのも奏功している。

　今後は事業エリアを北九州や佐賀県武雄市に広げ、鹿児島の姶良あいら市への進出も視野に入れる。創業40年を迎える29年には、グループ売上高４００億円、経常利益40億円のトリプルフォーを目指す。

人材育成をさらに強化 働きやすさも追求

　中長期の目標を達成するため、橋本社長が重視するのが人材育成だ。エリア拡大を計画しているため、マネージャー職のポストも増える見込みであり、それに伴って特にマネージャー職の育成に力を入れていく。

　橋本社長の人材育成方針は「その人を肯定し、強みを見つけ、それを生かす」。その人の特色を見極め、生かせる環境に置くことが成長を促す。また、従業員が主体的に研修会や勉強会を実施していることも育成の一助となっている。特に、営業社員は営業力の高い社員が講師となり知識や技術を共有している。グループラインを利用し、適時アドバイスや激励が飛び交う。

　「こうした社風は個々人の営業力を強化するとともに、従業員の団結力、チーム力を高めていき、それが業績にもつながっていきます」と橋本社長は強調する。

　このほか、働きやすい環境づくりにも心を配る。橋本社長は３人の子どもを育てる母親でもある。このため、子育て中の従業員のサポートにも力が入る。

　「子どもに関して急な事態が起きたら、子ども優先で職場を離れるよう促している。その際、周りの従業員はいつでも代わりに業務を引き受けられるよう準備している」と橋本社長。同社では、男性の育休取得も増えている。

　身近な存在の橋本社長と、働きやすい職場で団結した従業員が、さらなる成長を目指していく。