災害復興を支援するボランティア団体のバス移動をめぐり、国土交通省が対応に苦慮している。団体が費用を集めてバスでボランティアを運ぶと、利益がなくても法令に抵触する恐れがあるためだ。対応次第では政府がボランティア活動に水を差す結果にもなりかねず、柔軟な運用を求める声が高まっている。
旅行業法では、参加者から費用を集めて移動手段を提供するとツアーを募集したとみなされ、その主催者は旅行業登録をする必要がある。ボランティアをバス運送するNPOなどが法に抵触しないためには、主催団体が旅行業登録するか、旅行業者にバスツアーを委託するしかない。
事業者以外が有償旅客運送を行う「白バス」を禁じる道路運送法に触れる可能性もある。実際に活動場所からバスで帰ってきた複数のボランティア団体が、警察から事情聴取を受けるなどの事例が表面化。観光庁は5月、旅行業法を厳格に運用するよう都道府県に促す通達を出した。
手弁当で参加するボランティアにとって、NPOなどが主催するバス運送は貴重な移動手段だ。通達に従って業者にツアーを委託すれば費用が高額になり、若者のボランティア機運に水を差しかねない。熊本地震からの復旧・復興が進む中、国交省の対応には「杓子定規」との批判も上がっている。
一方、1月に多くの死者を出した軽井沢ツアーバス事故を経験した国交省や観光庁は「安全確保のためにも法令順守は必要」との立場を崩せない。不当に安い運賃設定がバス事故の遠因となっているケースも後を絶たず、安全に対して経済合理性をどこまで優先させるか線引きは難しい。
ただ熊本地震からの復旧・復興に当たる国交省も、ボランティア活動の重要性は百も承知だ。石井啓一国交相は会見で「ボランティア活動を支援する観点から、どんな方法があるか周知を図りたい」と改善策の検討を示唆した。
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