経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

偶然の出会いを引き起こす「場所」で人を育てる仕掛け

「発想」が出会う場

人が育つには、その先生となるべき「人」がいる。1冊の本が人生に大きな影響を与えた場合でも、本の中にはその著者の知や情熱が詰まっており、それが次に伝わったことを考えれば、やはり人は人が育てていくものだといえる。

しかし、そのためには、人と人が、どんな形であれ出会わなければならない。これは意図してできるものではない。

ところが、こうした出会いを仕掛ける工夫を行っている場所がある。正確には出会いが起こる偶然性を上げる取り組みで、社食やカフェ、休憩スペースなど誰もが立ち寄る公共スペースで行っている。

“偶然”を仕掛けイノベーションを起こすサントリー ワールド リサーチセンター

“偶然”を仕掛けイノベーションを起こすサントリー ワールド リサーチセンター

キャリアの世界でも同じような考え方がある。スタンフォード大学のクランボルツ教授が提唱する「計画された偶然性(プランドハプンスタンス)理論」がそれで、個人のキャリアは、予想もしなかった偶然によって決定されることから、計画的に自らその偶然を自らつくり出すような行動だ。この考え方をコミュニケーションの行いやすい場所で行えば、出会いの偶然性を高められるというのだ。

例えば、サントリーグループ4社の研究施設が1カ所に集約されたサントリー ワールド リサーチセンター(京都府)には、多目的エリアがある。このスペースは吹き抜けになっていて、書棚もあり、休憩やちょっとした打ち合わせに使われている。またその一角ではオープンなセミナーを行うなど、偶然、新たな知や情報に出合う仕掛けがされている。

また、伊藤忠商事が2018年度に新設する独身寮も、階段の踊り場に人が集まるような仕掛け、人の交流を活発化させる設計がされている。こうした場所をつくることで、直接何かが生まれることはないが、土壌づくりを行わなければ新たな出会いも起こり得ない。人を育てること、人を成長させることは人しかできないかもしれないが、実は「場所」も出会いの大きな役割を担っている。

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