財務省が目論んでいたビール系飲料の酒税の一本化が来年度中は見送られる方向になった。メーカーへの配慮に加え、第3のビールなどが値上げになれば、国民の反発を受けるとの意見が政府や与党内にあった。昨年も同様に参院選を控え、先送りされたが、今年も“解散風”が吹く中、同じ流れになってしまった。
ビール系飲料にかかる酒税は、麦芽の比率などで税率が異なっている。これまでメーカーは税率の低い発泡酒や第3のビールの開発を強化し、いびつな税体系が放置されたままになっていた。一本化は毎年税制改正のテーマに挙がってはいたものの、財務省は今年こそ実行しようと準備を進めていた。近年は国内メーカーも本物志向のビール開発にシフトする動きがあり、メーカー関係者からも理解を得られるとみていたからだ。
しかし、安倍晋三首相が解散総選挙に踏み切るとの見方が広がったことで、党内では国民の反発を受ける恐れのある政策について慎重論が浮上した。
さらに、見送りの流れを決定付けたとみられるのが、10月24日、東京のホテルニューオータニで、サントリーホールディングスの佐治信忠会長と新浪剛史社長が、安倍首相や麻生太郎財務相、自民党幹部らと会合を行ったことだ。昨年も同様の会合は開かれており、今年の会合でどういうことが話されたかは明らかになっていないが、業界では、サントリーが一本化に懸念を示した、とみられている。サントリーは第3のビールのシェアが大きく、第3のビールなどの税率が上がり、売れなくなれば、設備投資などもムダになってしまうためだ。
とはいえ、新浪社長は経済財政諮問会議の民間議員を務め、規制緩和や構造改革の重要性を訴える立場にあるともいえる。それだけに財務省内からは「一本化を推進するべき立場の人が、抵抗勢力になっているのではないか」と恨み節も聞こえている。
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