日本と欧州連合(EU)は1月20日、ベルギーのブリュッセルで開いていた経済連携協定(EPA)の首席交渉官会合を大きな進展なく終了した。自動車や農産品の関税をめぐる協議が難航したからだ。3月以降は欧州主要国で国政選挙が相次ぐ上、英国のEU離脱交渉も本格化し、大きな政治決断が難しくなる。残り少ない時間で妥結に持ち込めなければ、交渉「漂流」の恐れも強まる。
関係者によると、会合では物品関税や政府調達など7分野について集中的に協議したが、溝は埋まらなかった。引き続き事務レベル協議を継続するが、首席交渉官会合の次回日程は未定とのこと。
最大の課題は豚肉や乳製品など農産品の関税自由化だ。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉では、農業で特に影響が大きい重要5分野でもコメは米国と豪州産に新たな輸入枠を設定、牛・豚肉も関税を引き下げて合意にこぎ着けた。
EUはTPP以上の譲歩を日本から引き出そうとしており、豚肉やチーズ、パスタ、ワインなど農産品や加工食品の関税撤廃・削減を主張している。
EU側は「合意へ非常に近づいている」(ペトリチオーネ首席交渉官)と自信をみせており、農産品の関税開放と引き換えに日本が交渉で最重要視するEUの乗用車関税(10%)撤廃を受け入れる構えを示す。
しかし国内の反発は激しく、TPP承認案の国会審議が昨年末に終わったばかりで、さらなる自由化には抵抗感が強いのも実情だ。経済官庁幹部は「国内で受け入れられるラインがどこなのか慎重に見極めている」と話している。
3月のオランダ議会選挙、4、5月のフランス大統領選挙など春先以降は欧州で国政選挙が相次ぎ重要な政治判断が難しくなる。自由貿易に抵抗する保護主義勢力が台頭する中、日EU双方は合意を急ぐが、2月までに決着できないと長期漂流が現実味を帯びる。
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