最高の形でシーズンを終えたBリーグ
昨年秋に華々しく開幕した男子プロバスケットボールリーグのBリーグは栃木ブレックスの優勝で幕を閉じた。
レギュラーシーズンの入場者数はB1とB2を合わせて年間226万2409人。これは昨シーズンに比べて約1.4倍増だ。開幕戦は約9千人、初代王者を決めるファイナルには1万人を超える観客で埋まった(ともに会場は東京・代々木第一体育館)。
ファイナルの栃木対川崎ブレイブサンダース戦は、私も現地で取材した。観客は7対3の割合で栃木の方が多いように感じられた。
地域密着型クラブとして栃木の地にバスケクラブが誕生したのが2007年。08年には日本初のNBAプレーヤー田臥勇太が加わり、ブースターが急増した。その田臥が主将として優勝トロフィーを抱き上げた瞬間、会場のボルテージは最高潮に達した。歓喜の輪の中心に田臥はいた。
このように最高のかたちでシーズンのフィナーレを迎えたBリーグだが、真価が問われるのは2年目以降だ。
「前例を笑え!」「常識を壊せ!」「限界を超えろ!」
挑発的なスローガンを掲げてスタートを切ったBリーグ。シーズン終了と同時に異例の人事を発表した。副チェアマンに千葉ジェッツの島田慎二代表取締役が指名されたのだ。
Bリーグの生みの親である川淵三郎初代チェアマンは指名の理由を、こう説明した。
Bリーグ運営に加わる島田慎二氏とは
「Bリーグがスタートする際に、チェアマンにふさわしい人材として島田社長に目をつけていて、リーグの運営に携わってほしいとお願いしていた」
島田は異色の経歴の持ち主だ。前職は海外出張専門の旅行会社社長。その島田に経営難の千葉ジェッツから再建計画の話が舞い込んできた。それが縁でクラブ経営にかかわることになった。
今シーズンの平均観客動員数は4503人。これはBリーグトップの数字で2位の栃木に1千人以上の差をつけた。
Bリーグ創設にあたり、川淵は「5千人以上収容のホームアリーナを持つこと」を参入条件に定めた。これに対しては「ハードルが高過ぎる」と難色を示すクラブも少なくなかった。
だが、これは川淵にとっては譲れない線だった。「仮に入場者数が1500人で平均入場料金を1500円とすると、1試合の売り上げは200万円くらい。これではプロのスポーツビジネスとして成立しない」
これに島田も同調した。
「お客さんが5千人以下でいいというのなら、そもそも何をもってこの世界でやっていけるのか。ビジネスは成長しない限り退化する。選手やスタッフの給料を上げるには売り上げを伸ばすしかないんです」
球団経営とリーグ運営の二足のワラジを履く。「まだまだBリーグには顧客重視の視点が足りない」。スゴ腕のリーダーを得てBリーグにはさらなる飛躍の予感が漂う。
(にのみや・せいじゅん)1960年愛媛県生まれ。スポーツ紙、流通紙記者を経て、スポーツジャーナリストとして独立。『勝者の思考法』『スポーツ名勝負物語』『天才たちのプロ野球』『プロ野球の職人たち』『プロ野球「衝撃の昭和史」』など著書多数。HP「スポーツコミュニケーションズ」が連日更新中。最新刊は『広島カープ最強のベストナイン』。
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