「仕事ではファッションが大事」と言えば、大事なのは中身だと反論されるかもしれない。だが、「仕事では印象(インプレッション)が大事」と言い換えれば、おそらく異論は少ないだろう。「ファッションとは、その人の内面、在り方を表すもの」と考えれば、そのプライオリティは高まるはずだ。本シリーズでは、20年間で2万人以上のファッションをコーディネートしてきた、ファッションスタイリストジャパン(FSJ)の西岡慎也氏が、ファッションとの向き合い方、具体的なテクニックなどを、ビジネスパーソンに向けて伝授する。
ファッションの設計は家を建てるぐらい念入りに
経営者の方々の多くは時間に追われていることでしょう。それはとても理解しているのですが、こと服に関しては、時間がないのを理由にあまり考えずに購入している方ほど失敗しています。
ファッションは、「所詮カッコつけるためのもの」と思われがちです。
ただ、たとえ店構えや商品がしっかりしていても、社長さんの身だしなみに「めんどくさい」という雰囲気が漂っていると、ビジネスにマイナスの影響があるという事実を直視してください。
できれば最初に服を選ぶときは、家を建てるくらいの気持ちで、最低でも2時間くらいはじっくり検討していただきたいのです。
外見とは関係ない部分で仕事の実績を上げてきた方ほどプライドがあるので、ファッションを軽視しがちです。確かにカッコだけの経営者もいるのは事実ですが、ご自身を会社の商品と捉えて、服を今一度見直してみてはいかがでしょうか。
外見に投資することの効果は、外部に対してだけではありません。私がコーディネートを手掛けた経営者のお客様の中には、ご自身がカッコ良くなることで従業員の服に対する意識が変わり、仕事に対するモチベーションが上がったと報告をいただいた例もあります。
また、今はあらゆる業種で人材確保が厳しくなっている時代でもあります。採用面接で応募者に与えるイメージが、服一つで変わってしまうこともあるのです。
経営者のコーディネートは業種も意識
私が経営者の方をコーディネートする際は、その方の業種も意識します。
たとえば製造業なら、しっかりとしたスーツスタイルを基軸に、派手さではなく正統派の要素を重視して設計していきます。ネクタイやシャツについても、あまり価格が高いものは取り入れません。
IT業界であれば、ジャケパンスタイルなど多少自由度を上げる方向に向かいます。こうして基盤を作って、そこからTPOに合わせてバリュエーションを増やしていくやり方です。
男性は一般的に不器用で、財布1つでもなかなか変えられないものです。でも、このように段階を経ていくことで、無理なく自然にファッションを変えていくことができるのです。
ただ、意識してファッションを変えようとしているさ中に、周囲から不本意な評価受けてしまい、一気に服が嫌いになってしまうといった事例もあります。
そんな場合の対処法については、次回お話させていただきます。
西岡慎也のワンポイントアドバイス
ファッションの影響は、ご自身が想像するよりかなり大きい場合があります。特に男性の社長さんが失敗する典型的な例が、ビジネスより女性に走ってしまうこと。素敵になるのは大変結構なことですが、それで失敗した方もいらっしゃるので十分気を付けてください(笑)。
(にしおか・しんや)1979年生まれ。茨城県土浦市出身。21歳で米輸入会社ワイルドウエストジャパンに就職し、約4千人のファンを獲得。2001年、セレクトショップ「WITH PREASURE」を独立開業。従来のアパレルの販売方法ではなく、コンサルティングを中心としたコーディネートの手法を確立する。10年にファッションスタイリストジャパンを設立し、多くの著名人、エグゼクティブの顧客を獲得し、現在に至る。
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